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第四章 ヴィルヘルミーナ、海へ!
4-13.さらわれたステラ その7
しおりを挟む私たちは、アインス商会でヤスミンの作ったクラッカーボールを手に入れた。
その際、ヤスミンから、簡単に説明を受ける。
「よく聞いてください。このクラッカーボールですが、絶対に空気に触れないようにしてください。革袋の中の空気は、しっかり抜いてください。そうしないと、黒色火薬が爆発します。
一つ爆発すると、次々に爆発することもありますので、くれぐれも注意してください」
そんなこと出来るのか?
やるしかないということか……
「兎に角、急ぎましょう!」
「そうね」
「分かった」
と、クラッカーボールを調達し、催眠術にかかった住民の元へと、アインス商会で借りた馬車で、私たちは向かった。
その頃、ケーニヒスベルク城では、千人はいようかという白魔術師と化した住人に包囲されていた。
無論、城が千人程度の非武装の民間人に落とされることは無いのだが、警備するものが少ない上、自国の領民に手を出したくないという伯父上さまの配慮もあった。
すると、城門や城壁を登ろうとしている者が出始めた。
「後に続け!」と。
しかし、さらに警備兵を困らせたのは、先日まで、城仕えをしていた、そして自分立ちの団長の娘が先陣を切っているということだ。
「おい、あれステラさんだよな。どうしてしまったんだ」
「やはり、ヴィルヘルミーナ嬢への恨みが爆発したんだよ」
「しかし、そんなことをしたら、打ち首だぞ」
すると、城門を超えて城の中に、一人侵入してきた。
「取り押さえろ」
ヴァッテンバッハ副団長は城に残って、指揮をしていたのだが、「馬に乗っていても、ランスが使えない。殺すわけにはいかない。木刀であっても頭を強打するわけには……人数が少ない上、制約が多すぎる」
***
私たちが、城門の到着すると千人以上の住民が叫んでいた。
「魔女のヴィルヘルミーナに鉄槌を!」
「異端裁判だ」
と言う具合にだ。
「多すぎる。クラッカーボールが60個から100個程度あっても……」と愚痴ってしまったが、60個?
そうだ!
「ヤスミン、小銃か大筒があったはず」
「はい、馬車にどちらもあります」
「では、大筒を出して」
「どーするのミーナちゃん」
「このクラッカーボールの入った袋を大筒で撃って、空中で爆発させるの」
「煙で何も見えないわね」
「咳き込んで、元に戻れば良し、止まったところを蹴れば良し」
「やってみましょう」
なので、私が高く、クラッカーボールの入った袋を天高く投げ、ヤスミンが射撃する。
クラッカーボールの数もここまでになると、“バーーン”でなく、“ドカーーーン”だった。
爆風が皆を覆った!
そして、催眠状態の者は、煙に覆われて、酸欠状態に陥ってしまった。
私は、口をハンカチなどで覆い、住人の尻を蹴っていた頃、エマリーは、「あ、あ、危ないわぁ。誰も、頭が吹っ飛ばなくて良かったけど。頭がもげたら冗談では済まされないわ」と呟いていた。
「ヤスミン! もう一袋、お願い!」
そろそろ、煙の効果が無くなってきたのだ。
"ドカーーーン"と言う音と共に、爆風と煙が広がった。
うつろな住人たちは、これを吸い込み咳き込んでいる。
しかし、城の中に入り込んだ者もいる。
城内に追撃しようと思うが、エマリーとヤスミンが躊躇している。
「私たちは城の部外者なので、逆に逮捕されるのでは?」と。
私と共にいると良いのだけれど、離れてしまうと、誤解を招くことになりかねない。
それに、まだ、催眠術が解けたかどうか不明の者もいるので、城門前を二人に任せることにして、私は、城の中に入った者を追うことにした。
おそらくステラも城に入ったのだろう。ここにいないということは。
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