『よつばのクローバー』

うどん

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9.『書き込み』

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羽曇組 組長の容態を組長の孫娘である犬木みずきに説明する組専属医師 月下カオリ。

意識不明ではあるものの、命に別状はない。
しかし、このまま意識不明が長く続くと脳に後遺症が出る可能性があると細かく説明をした。

「・・・ですので、そこは覚悟してください。」
「・・・わかりました。」
みずきはカオリの説明を全て聞いた。

「で、おじいちゃんを襲った犯人は?」
「それは今調査中や。サツも調べとるけど、なぁーんも出てけぇへんのが現状や。サツはヤクザ同士の抗争やぁ睨んで、他の組にガサ入れしとるみたいやけど、多分ハズレやろ。」

壁にもたれかかって腕を組みながらみずきの質問を返すジン。

「どういうこと?」

「組長さんの身体に刺し傷は無かった。撃たれたあとも無い。ヤクザ同士の抗争なら道具を使うことが多い。ジンさんなんかこの間撃たれましたもんね。」

ジンを見てくすくすと笑うカオリ。
ジンは咳払いをして話を続けた。

「まぁ、先生の言うとる通りオヤジには打撲痕しか無かった。ヤクザやったら道具使ったほうが早いからなぁ。俺が襲撃するんやったら弾ぁぶち込んだほうが早いからそうするわ。せやからオヤジはヤクザもんにやられたわけやないと思っとる。」

「じゃあ、誰が・・・」

「それを今調べとるとこです。それに一つ重要な手掛かりがある。これはサツは知らん情報なんやけど、オヤジが着とった服に靴の跡があった。」

ジンはスマホを取り出してみずきに画面を見せた。

「多分殴る蹴るした時についたんやろ。よぉ見てください。ほれコレぇ。足跡付いとるやろ?」

ジンは写真を拡大してみずきにわかりやすいように見せた。

「あぁ、これだね。はっきり残ってるね。」

「せや。んでこの足跡のサイズ測ったら二十三cmやったわ。男にしては随分ちぃさい。おそらく女や。」

ジンは犯人の一人は女と断定した。

「今、若いもんに調べさせとる。サツより先に捜し出さなぁあかん。」

「でもこれだけで見つけられるの?他に情報は?」

「・・・これはホンマなんか知らんけど・・・」

ジンはスマホを操作して別の画面を見せた。

「ネットの掲示板?ってやつに書き込みがあったのを若いもんが見つけたんや。『暴力団の組長を粛清してやったww』てやつ・・・コレや。」

ジンは画面をスクロールしていき、情報になりうる掲示板のスレを開く。

「ちょっと見せて。・・・なにこれ胸くそ悪い。」

そのスレの書き込みには『おじいちゃんヤクザを葬ったw』や『ヤクザは時代遅れ』など好き放題書かれていた。
中には羽曇組 組長 犬木ゴロウの特徴などが書き込まれていた。

祖父をオモチャのように扱う数々の書き込みにスマホを持つ右手に力が入る。

ミシッという音が聞こえた瞬間、ジンは慌てだした。

「ちょ、お嬢!俺のスマホ壊さんとってやぁ!」

みずきはハッとして力を緩めた。
みずきはそのままスクロールして書き込みを見ていく。
すると気になる書き込みが見つかった。

「・・・ん?『俺たちの時代』・・・俺たち?」

「その書き込みが本当だとしたら、犯人は集団ってことになりますね。」

「せや。どっかの半グレグループのクソガキ達や思うわ。今そっち方面で捜させとる。けどこの辺のガキ共はそんな命知らずみたいなことせん思うけどな。」

みずきはジンにスマホを返して部屋を出ようとした。

「待ちぃなお嬢。どこ行くんや?」

ジンは慌ててみずきを呼び止める。

「犯人を捜しに行くんだよ。おじいちゃんにこんなことした落とし前は必ずつける。」

みずきはそういうとドアを開けた。
すると足元にはよつばが土下座していた。

よつばはみずきが出てくるまでずっと土下座していたようだ。

「・・・どけ。」
みずきはよつばにそう言うとよつばはみずきが通れるように少し横にずれた。

みずきは颯爽とその場を去っていった。

「やはり組長さんの血筋ですね。雰囲気が犬木ゴロウさんにソックリです。・・・一人で行かせて大丈夫なのですか?」

カオリはジンにたずねた。

「護衛を一人付けとる。多分大丈夫やろう。・・・にしても、完全に忘れてたわぁー。」

ジンは額に手を当てた。
みずきとよつばの関係を完全に忘れていたからだ。

「すみませんでした。連れてくるべきでは無かったですね。」

カオリはジンに頭を下げる。

「いや、俺のミスや。お嬢と姉ちゃんの因縁を完全に忘れてたからな。」

カオリは土下座したままのよつばを見つめる。

「今日はこれで失礼します。また明日、伺います。」

「おぉ、そうしてくれたら助かるわ。命に別状無いって分かっただけでも一安心や。」

ジンはカオリに現金の入った封筒を手渡そうとするが、カオリをそれを拒んだ。

「今日は受け取れません。うちのよつばがお嬢さんに無礼を働きましたから。」

「いやいやそんなわけにはイカン。俺が忘れとったからこうなったんや。先生の責任やあらへん。これは俺からの詫びや思て・・・な?」

「・・・では。」

カオリは渋々封筒を受け取った。

「帰りますよ。頭を上げなさい。」

よつばは頭を上げ、立ち上がる。
ジンに深くお辞儀をし、カオリの後をついて行こうとするとジンがよつばを呼び止める。

「姉ちゃん・・・次無いで?次また同じことなったら、先生にケジメとってもらうで。飼い犬の粗相は飼い主の責任やからなぁ。」

サングラス越しでも感じる鋭い目。
よつばを身をこわばらせる。

「しっかり躾しておきますよ。ジンさん。」
カオリはジンにそう言ってよつばを連れて本家をあとにした。


「・・・ふぅ。」
ジンはひと息ついてスマホを取り出した。


「あッ!!画面ヒビいっとるがな!!嘘やろ~・・・」

ジンはヒビのはいったスマホを見てがく然とした。
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