『ブラックボックス』

うどん

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〜最終章〜

172.『幹部会当日』

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幹部会当日の朝。
便利屋カモミールは幹部会襲撃の準備をしていた。


しお「ついに今日…やるんだね。」


みつ「あぁ。ハナさんを助け出そう。」


みつれはナイフの手入れをしていた。


今回の襲撃には以前『防衛大臣親族誘拐事件』に配属された特殊部隊も使われる手筈になっている。
みつれ達にとってこれ以上頼もしい味方はいない。


みつ「もう少しでリンとカエデが来る。来たら作戦の最終確認だ。」

しおんとよつばは頷いた。


しばらくするとリンとカエデが事務所に到着した。


リン「おはよう。全員揃ってるね。」

みつ「あぁ。はじめよう。」


全員でテーブルを囲み、幹部会襲撃作戦の最終確認を始めた。


しお「父さんが言うには幹部会は18時に行われる。それまでに工場の周りを特殊部隊で囲みます。……出来ますか?リンさん?」


リン「大丈夫だよ。」


特殊部隊の手配は整っていた。


しお「よし。一応工場周辺の防犯カメラは僕がジャックして特殊部隊が映らないように細工します。工場内は多分父さんが見てるから手出しできない。だからカメラの死角から潜入して行くしかない。」


リン「昨日の晩に少年が送ってくれたやつだよね。部隊には既に通達してるよ。」


しお「ありがとうございます。…後は配置につき次第、組織を制圧……て感じです。」


みつ「今回も前回同様、かなり危険だ。カエデは特殊部隊のオペレーター達と居てそこで私たちに指示をくれ。そこなら安全だ。」


カエ「・・・わかりました。」

カエデの表情に緊張がはりつく。


しお「カエデちゃんには僕が突撃前に工場内のカメラをハッキングしてその映像を見ててもらう。……カエデちゃんなら大丈夫だよ。」


カエデはこくりと頷く。


みつ「しおんはよつばさんと行動。私はリンと行動する。これは全員分のインカムだ。」


みつれはテーブルに人数分のインカムを出した。
各自インカムを手にする。


しお「ほかになにか質問は?」


リン「大丈夫だよ。」


カエデもよつばもみつれも頷く。


しお「おっけー。…必ずハナさんを助け出そう。」


すると事務所のドアからトンッと音がした。


それに気付いたのはドア側にいたカエデだけだった。


カエ「??なんでしょう?」


カエデはドアを開けて確認した。

するとダンボールがひとつ置いてあった。


カエ「置き配かな?」

カエデはそのダンボールを手に取り事務所へ戻る。



カエ「ダンボールがありましたけど誰かのお届け物ですか?」


カエデは全員に聞いた。


みつ「いや、私は頼んでいない。しおんか?」


しお「僕も頼んで無いよ?よつばさん?」


よつ「そんなわけ無いでしょ。」


全員身に覚えが無かった。


カエデは窓側の棚の上にダンボールを置いた。

しかし、置いた瞬間カチッと音がした。


その音に気付いたみつれは嫌な予感がした。


みつ「それから離れろ!!!」


一瞬の出来事だった。

みつれはカエデを引っ張り、ダンボールを蹴り上げた。

みつ「みんな伏せろ!!!」

みつれは咄嗟にカエデを抱きかかえ床に伏せた。


窓ガラスを割りながら事務所から飛び出たダンボールが大きな音をあげて爆発した。


事務所は半壊。
だがなんとか全員無事だった。



みつ「・・・大丈夫か?」


カエ「は、はい…」


みつれはカエデの安否を確認した。

カエデはみつれの腕の中でぶるぶると震えていた。

みつ「よかった……」

カエデの頭を撫でるみつれ。


リン「みっちゃん!!カエデちゃん!!」


リンが2人の元へ駆け寄る。


リン「大丈夫!?怪我は!?」


みつ「大丈夫だ。お前も大丈夫そうだな。…しおんとよつばさんは?」


リン「2人とも無事だよ。……やられたね。」




リンもみつれも誰の仕業か察しがついていた。


みつ「こんなこと出来るのはヤツしかいない。………シロサキだ。」


すると事務所の中に男が3人入ってきた。
すぐに察知したみつれとリンはカエデを抱えて身を隠した。


「いたか?」

「流石にくたばっただろう。いいんじゃねぇか?」


「死体の顔を撮れって言われてんだ。ちゃんと探せ。」


「爆発で顔すら残ってねぇんじゃねぇの?」



男達はみつれ達をさがしていた。


みつ「間違いない…ヤツらだな。」


リン「どうする?相手は3人…」


みつ「制圧する。……しおん、よつばさん、入ってきたヤツらを制圧する。」


みつれはインカムでしおんとよつばに指示を送る。


しお「おっけー。相手は武器を持ってるから気をつけて。」


みつ「リンはカエデを頼む。」


男達がしおんとよつばの方へ近づいていく。


みつれは音を立てず立ち上がり、ナイフを1人の男の背中に投げた。


「ぐぅ!?」


ナイフは男の背中に突き刺さり倒れた。


異変に気づいた他の男2人は倒れた男のほうに振り返る。


その瞬間しおんとよつばが物陰から飛び出し、男達を制圧した。


「ぐっ!!テメーら!!」


床に押さえつけられた男がみつれを睨む。


みつ「お前ら、組織の人間だな。」


「くそ!離せ!!」


男は抵抗したがよつばが強く押さえつけた。


よつ「大人しくしろボケが。」


みつ「質問に答えろ。命まではとらない。………誰の指示だ?」


「ぐっ!……ひょ、標的がお前らだけと思うなよッ!」


みつ「なに?」


みつれは妙な胸騒ぎがした。


『標的はお前らだけじゃない』


じゃあ他に誰を?



するとリンのスマホに着信が入る。
それはリンの部下からだった。

リンは電話に出る。


リン「今取り込み中だから後で……」


いいきる寸前、電話越しから爆発音が聞こえた。


リン「ッ!?なに!?どうしたの!?」


爆発音がした後、電話は切れた。


リン「・・・」


みつ「どうしたリン?」


リン「部下からだったんだけど、電話の向こうで爆発音が………まさか!?」


リンは悟った。

警察署も爆破されていると。



「へっ、気付いたみたいだな。そうだよ、爆破はココだけじゃない!」


男は高らかに言い放った。


みつ「爆破したのはココと警察署か。」


「それだけじゃねぇ!!刑務所もだ!!今頃爆破で生き残った犯罪者が逃げ回ってるだろうよ!!」


ことは想像以上に最悪な展開になっていた。


よつ「くっ……コイツら………」


リン「みっちゃん……」


みつ「あぁ……これは逮捕どころでは無いな。しばらく眠ってもらう。」


「あ?……ぐぉッ!」

みつれがよつばにアイコンタクトをし、よつばが男の顔を力いっぱい殴って気絶させた。


みつ「コイツらはここで縛っておこう。……それより……」


リン「うん…。かなりまずい……。刑務所が爆破されて犯罪者が逃げ回ってるなら相当ヤバい。」


収監されている犯罪者が街に放たれ、警察署も爆破されていて機能しないとなっては市民は大パニックを起こす。


リン「もしかしたら特殊部隊は動かせないかもしれない。警察署も爆破されてるし……」


みつ「・・・リン、お前は先に警察の仕事をしてくれ。しおんはよつばさんと安全な場所でユウゼンとコンタクトをとってみてくれ。私はカエデを家に送る。」


みつれは全員に指示をおくる。
だがカエデだけ納得していなかった。


カエ「ま、待ってください!私も一緒に……」



みつ「ダメだ!!」


カエデが言い切る前にみつれは言った。


みつ「あまりにも危険過ぎる。さっきの爆発みただろ。特殊部隊を動かせない以上、お前の安全は保証出来ない。わかるだろ?」


カエ「それでも一緒にいます!!私が持ち出した作戦です!最後までやらせてください!!」


カエデは折れなかった。
自分が持ち出した作戦に責任を感じているカエデは自分だけフェードアウトされることを嫌った。


みつ「・・・」


みつれもカエデの気持ちは重々分かっている。
みつれは悩んだ。


みつ「・・・わかった。じゃあお前にはスイの隠れ家で私達に指示をくれ。それでいいか?」



カエ「ありがとうございます!」



カエデは深く頭を下げた。


リン「じゃあ私は一度署に戻るよ。また連絡する!」


そういうとリンは何処かに電話を掛けながら事務所を出た。



しお「僕たちも行こう。もしかしたら組織のヤツらがまたここに来るかも。」


みつ「そうだな、行こう。」


便利屋メンバーは半壊した事務所をあとにした。。。


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