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〜最終章〜
183.『親衛隊』
しおりを挟む埠頭で響き渡る銃声。
みつれとリカが繰り広げる銃撃戦の音。
そしてもう1つ……
少し離れた場所でも、銃声が聞こえる。
しお「父さん!血がッ!!」
しおんはユウゼンの肩から血が出てるのに気がついた。
ユウ「・・・大丈夫だ。それより……どうしたものか……」
コンテナの影に身を隠す2人。
しおんはまだ状況が理解出来ていなかった。
しお「どういうこと!?さっきのはいったい!?」
ユウ「・・・ヤツらが来たんだ。『リカの武装親衛隊』だ……」
ユウゼンは恐る恐るに言った。
しお「武装……親衛隊………」
初めて聞く情報にしおんは驚いた。
ユウゼンは続けて言った。
ユウ「武装親衛隊は少数精鋭部隊だ。そして銃等の使用を許可されている。緊急事態の時に駆り出されるリカの『犬』達だ。」
しお「・・・その親衛隊が、父さんを始末しに来たってこと?」
ユウ「いや、おそらくそれだけでは無いだろう……。他になにか起きただろうな。……さっき通ったバイク、あれはみつれのバイクだな?」
ユウゼンはバイクの持ち主をしおんに聞いた。
しお「そうだよ。ということはみつれさんもここに来てる。」
しおんはそう答えるとユウゼンは確信したように言う。
ユウ「なら、リカもここに来てる。」
しお「ッ!?…リカが………この埠頭に!?」
ユウ「それなら親衛隊が来たのもだいたい説明がつく。」
しお「・・・なるほど。」
ユウ「俺が知る限りでは、親衛隊の数は6人。…リーダーの『アザミ』は今海外にいるはずだ…。つまり5人…ここに来ている。」
しおんは撃たれないように警戒しながらまわりをみる。
しかし人影は見当たらない。
ユウ「・・・俺が前に出てヤツらを引きつける。お前は……」
しお「逃げないよ。」
ユウゼンが言い切る前にしおんが断言した。
しお「みんな戦ってる。僕だけ逃げるわけにはいかない。それにこれはチャンスだ。」
ユウ「チャンス?」
しお「組織を潰すチャンスだよ。リカがここに来てるんだ……逃すわけにはいかないし逃げてる場合じゃない。」
ユウゼンはふっと笑う。
ユウ「お前はやっぱり母さん似だな………しおん、お前にこれをやる。」
ユウゼンはネックレスと少し変わったボールペンをしおんに渡した。
しお「・・・これは?」
ユウ「そのボールペンはUSBだ。その中に俺の知る限りの組織の機密情報が入っている。それをお前に託す。それとそのネックレスは…」
その瞬間、カランカランと何かが投げ込まれた。
それは音をあげ、煙を吹き出した。
ユウ「ッ!?催涙ガスだ!!クソっ!着いて来いしおん!!」
ユウゼンとしおんはその場を離れることを余儀なくされた。
しかし、そうすれば格好の的。
コンテナクレーンの上で張っていた武装親衛隊のスナイパーが2人の姿をとらえ、照準を合わせる。
「とらえた。狙撃する。」
スナイパーがユウゼンの頭に照準を合わせ、撃ち抜こうとトリガーをひこうとしたその時。
よつ「おい。」
声の方へ振り返るスナイパー。
そこにはよつばがいた。
よつ「さよなら。」
よつばはスナイパーをコンテナクレーンから蹴落とした。
よつ「ここなら何処にいるかわかると思ってたんだけど……まさかスナイパーがいるとはな。………さっきの奴…サツじゃねぇよな……」
よつばは蹴落としたスナイパーが実は警察だったんじゃないかと少し頭をよぎった。
よつ「・・・まぁ、どっちでもいいか。」
よつばは埠頭一面を見渡した。
よつ「・・・いた!あそこだ!……ん?周りに4人いる……組織のヤツらか。」
よつばはコンテナクレーンの階段を軽々と降りていく。
そして先ほど蹴り落としたスナイパーの懐から武器を奪う。
よつ「うぇ……さすがにあの高さから落ちたらぐちゃぐちゃになるよなぁ……」
あまりの悲惨さに手を合わせる。
すると手早く武器を入手するよつば。
よつばは銃を構えて走り出した。
知らぬ間にスナイパーからの狙撃を回避したしおんとユウゼンは地上にいる武装親衛隊から身を隠しながら移動した。
しかし距離を離すでもなく、一定の距離で親衛隊はそこにいた。
しお「・・・場所はバレてる。けど攻撃されない……なんでだ?」
しおんはあたりを警戒しながら考えた。
するとユウゼンは口を開く。
ユウ「わからない。なにかの合図を待ってるのか……。」
しお「・・・こっちから仕掛けよう。二手に分かれて親衛隊を分裂させよう。それならまだどうにかなる。」
ユウ「いいだろう。……気をつけろよ。」
武装している部隊を丸腰の2人が相手にするには分裂させるのが得策だと思った。
しおんとユウゼンはお互い反対の方向に足を動かした。
すると親衛隊も分かれて2人の後を追う。
しお「((ついてきてるな……よし。))」
しかし分裂出来たものの、相手は武装された2人。
いくら2人に減ったからといっても丸腰では圧倒的に不利。
しお「((・・・これを使うしかないか……))」
しおんは慎重に移動する。
少し移動した後、しおんはスマホを取り出した。
しお「((これぐらいなら……今だ。))」
しおんはスマホの画面をタップする。
すると少し遠くから着信音が鳴り響く。
音の正体は、しおんが組織の構成員から奪ったスマホだった。
親衛隊の1人が着信音に気付き、分かれて音の方へむかった。
しお「((よし、これで1人……戻って来る前に素早く仕留めないと。))」
ここまではしおんの計算通り。
しかし、問題はここから。
武装している人間をどう制圧出来るか、、、
今までの敵とはわけが違う。
ナイフだとか鉄パイプだとか、それが可愛く思える。
そう、今の敵が持ってるのは『銃』。
それも拳銃とかではなく、アサルトライフルだ。
おまけに防弾チョッキも着用している。
制圧に失敗すれば確実に死ぬ。
今まで感じた事ない恐怖心がしおんを襲う。
しお「・・・だ、ダメだ……ビビるな…。そんな時間は無いぞしおん。」
なんとか自分を鼓舞し、仕掛けようと動く。
なんとか裏をかけれるように、自分のスマホを今居る場所に置いた。
しお「((30秒後にアラームがなるようセットした。奴が気付いて隙をつく。……これしかない。))」
スマホから少し離れる。
アラームが鳴ってからが勝負。
しおんは生唾を飲み込んだ。
ピピピピーーー♫
仕掛けたアラームが大音量で鳴った。
それに気付いた相手は銃口を音の鳴る方に向ける。
警戒しつつ近づいてくる。
バッ!っとコンテナ裏を確認したが、有るのはスマホのみだ。
「・・・??」
しお「((今だ!!!))」
アラームを大音量で流したのには理由がある。
1つは相手にハッキリ聴こえるようにするため。
もう1つは、しおんの移動の音をかき消すためだった。
背後を取り、首を狙って落としにかかろうとするしおん。
「ッ!?クソっ!!!」
必死に抵抗されるが、決して離さない。
離したら死ぬ。
しおんは力を振り絞った。
敵は脱力していき、膝から崩れ落ちた。
しお「はぁ……はぁ……はぁ……」
息を荒らげながら少し下がるしおん。
まだ敵は残っている。
戻って来る前に移動しないと……。
その瞬間、倒れたはずの親衛隊が起き上がった。
しお「なッ!?」
驚くしおん。
起き上がった親衛隊は銃口をしおんに向けた。
「なかなかやるじゃねぇか……けど所詮はガキよ……」
トリガーを引こうとしたその瞬間、頭から血が吹き出して再び倒れた。
しお「ッ!?……どういうこと?」
混乱していると、足音と声が聞こえた。
よつ「・・・ったく、詰めが甘いんだよ。助けに来たぞ。」
不敵な笑みでよつばが姿を現した。
しお「よつばさん!!無事だったんだね!」
よつ「カエデちゃんは埠頭から逃がした。アンタを捜すのに苦労したよ。」
しお「その銃……どこで?」
しおんはよつばの持ってる銃が気になった。
よつ「アンタを見つける為にあのコンテナクレーンに登ったんだよ。そしたらスナイパーが居たからそいつから盗った。」
よつばは続けて言った。
よつ「……アンタの親父さんは?」
しお「二手に分かれたんだ。多分大丈夫だと思う……。」
しかし、いくら屈強なユウゼンと言えども武装した相手に無傷で済むか危うかった。
しお「父さんを捜す。まだ父さんとは話すことがあるんだ。」
よつ「・・・わかった。」
よつばは倒れている親衛隊から銃を拝借し、それをしおんに渡した。
よつ「んっ。持っときな。」
しお「・・・ありがとう。」
本当は持ち歩きたくないが、ここはもう戦場。
四の五の言ってられない。
しおんは銃を強く握った。
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