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〜最終章〜
188.『幕引き』
しおりを挟むリンに手錠を付けられて身動きが取れなくなってしまったハナはなんとか手錠を壊そうと必死だった。
ハナ「くそ!!早くシロサキ様のところに行かないと!!!」
両手首には手錠をはめられ、全く身動きがとれない。
しかし、ハナはふとあることを思い出した。
それはハナがシロサキに捕まり、監禁されている時のことだった。
ハナ「((・・・あれ?……なんだ…これ……))」
クスリのせいで失っていた記憶。
偶然にも今の拘束されている状態と監禁時の状態が同じだった。
ハナは思い出していく。
シロサキにされた屈辱的拷問。
クスリを投与されて………
ハナ「あ………頭痛い………」
ハナは記憶の渦に迷い込む。
『これからは私がお前の全てを管理する。食事から排泄まで全部だ。お前はもう人間じゃない』
シロサキの言葉と光景が脳裏に流れてくる。
記憶の中で、シロサキはクスリを取り出した。
ハナ「((あぁ……あのクスリだ……これでシロ…サキ……さまに………))」
『アンタみたいなヤツは嫌いだ。------』
リンが発していたと思っていた記憶。
『死んでちょうだい。』
ハナ「((ち、ちが………これ………))」
記憶の中で混乱するハナ。
記憶のパズルをひとつひとつ埋めていく。
自分が思っていたパズルのピースが真実のピースに次々と変わっていく。
ハナ「((・・・・・・・・・))」
ハナ「・・・い、いかなきゃ………」
一方、リンはシロサキに右のアキレス腱を切られ、身動きが取れなくなっていた。
リンはシロサキの殴打を受け続けていた。
シロ「おい!どうした!?さっきの威勢はどうしたよクソ刑事ぃ!!」
シロサキは笑いながら殴打を続ける。
リンは必死にガードするしかなかった。
シロサキはリンに馬乗りになり、リンの髪を掴んだ。
シロ「お前とは色々あったよなぁ。けどこれで終わりだよ。ここで私がお前を殺すからなぁ!!」
シロサキはリンの頭を地面に叩きつけた。
リン「がッ!!!」
リンの頭から血が流れる。
リン「((あ………まずい………視界が………))」
シロサキが二重にみえて視界がかすむ。
リンは脳震盪を起こしていた。
虚空を見つめているリンを見て嘲笑うシロサキ。
シロ「なにボケてんだまだ死ぬな。起きろ!」
シロサキはナイフをリンの肩に刺した。
リン「ッ!?」
リンの悲痛の叫びが響き渡る。
その声をきいてシロサキは手を叩いて笑った。
シロ「いい声で鳴くじゃん。最高だよ!」
少しずつ意識が遠のくリン。
ぐったりしてるリンを見下ろしているシロサキ。
するとシロサキはある物が落ちているのに気がついた。
ニヤリと笑うと、シロサキは落ちている物を拾いに行った。
それは銃だった。
シロ「お前が弾き飛ばした銃だよ。こんなところにあったとはね。」
シロサキはリンに銃を見せつける。
シロ「事ある毎に弾詰りを起こしたからねぇ。私には銃は向いてないらしい。銃を使うのはもうこれっきりにしよう。」
シロサキはゆっくりとリンに銃口をむけた。
シロ「お前を最後に銃は卒業しよう。いい記念だ、最高の卒業証書だよ。」
リン「・・・」
リンは目を閉じた。
・・・なにかがきこえる。
誰かがなにか叫んでいる。
・・・人の名前?
それはリンの名前だった。
リン「((この声ッ!ハナちゃんッ!!?))」
リンはハッと目を見開いた。
シロ「死ねぇ!!!」
シロサキは銃の引き金を引き、弾が発射された。
リンの視界が急に暗くなった。
リン「((な……なに?……急に暗く…………けど、あたたかい………))」
あたたかい感覚。
それは発熱した弾が身体に入ったからではない。
それは日常で感じることの出来る人の体温だった。
ハナ「リ……リン先輩………」
リンは気がついた。
視界が暗くなったのは、ハナが銃弾から身を呈してリンを守ったからだった。
リン「ハナ……ちゃん………?」
ハナ「無事ですかぁ?……リン先輩。」
関西なまりのある喋り方。
間違いなく、リンの知っているハナだ。
ハナ「先輩……すみませんでした……」
そう言ってハナはぐったりと脱力した。
リン「い、いや………嫌ァァァ!!ハナちゃん!!ハナちゃん!!!!」
リンはハナの身体を揺すった。
しかしハナは息をしていなかった。
シロサキはぼう然としていた。
シロ「ハ……ハナ?……な、なんで?」
シロ「((ま、まさか……記憶が戻ったのか!?))」
リンはハナを抱きながらシロサキを睨む。
リン「殺す………殺す殺す殺す……殺すッ!!!」
リンはこれまでに無い殺意をシロサキに向ける。
シロ「ッ!………死に損ないに私は殺せないよ!!死ねぇ!」
シロサキは再び銃口をリンに向け、引き金を引こうとする。
するとシロサキの持つ銃は何者かに弾き飛ばされた。
シロ「グッ!!?」
コンテナの影から人影が数人現れた。
リン「・・・『SAT』!?な……なんで?」
それは特殊部隊『SAT』だった。
「両手をあげろ!」
SATの隊員はシロサキに警告する。
シロサキは観念したのかスっと両手を上げた。
突然のSATの登場にあ然とするリン。
すると後ろから声を掛けられる。
「あなたがリン刑事ですね?」
特殊部隊とは違い、スーツを着用した男性。
リン「あ……あなたは?」
ヤナ「私は警察庁外事情報部外事課のヤナギといいます。あなた達がテロ組織と対峙してると通報があり、駆けつけました。」
リン「けい……さつちょう………」
男の名前はヤナギ。
警察庁外事情報部外事課の刑事だった。
リン「い……いま……特殊部隊は……つかえない……はずじゃあ………」
ヤナ「通報の内容がかなり信憑性が高く、通報の仕方も普通では無かった。警察庁、内閣総理大臣、防衛大臣のセキュリティプログラムにハッキングして通報が入った。しかも同時にです。並のハッカーではないでしょうね。そのおかげで上の命令で特殊部隊の一部をこちらに使うことが出来ました。」
するとヤナギに無線がはいる。
ヤナ「・・・了解。そのまま搬送してください。」
ヤナギは無線の内容をリンに知らせる。
ヤナ「私の部下からの報告です。あなたのご友人達はこちらで保護しました。安心してください。あなたも病院へ搬送します。」
ヤナギはリンを搬送するように部下に指示を送る。
リン「((・・・終わったよ……ハナちゃん……))」
ハナを抱きしめたままぼう然とするリン。
ヤナギの部下達が搬送するためにリンに近づく。
「彼女は本当に残念です。」
ヤナギの部下にそう言われ、リンはハッとした。
リン「・・・ハ……ハナちゃん……は……私を庇って………」
こと切れそうな声で話すリン。
第三者に言われて現実を突きつけられる。
ハナは死んだ。
リンを庇って死んだ。
シロサキが撃った弾で死んだ。
それは揺るぎない現実であり事実だった。
リンの視界にシロサキが映る。
するとシロサキはニヤリと笑って見せた。
リン「ッ!!!」
リンは咄嗟にヤナギの部下の懐から銃を奪い、シロサキに銃口を向ける。
まわりの特殊部隊がそれに気付き、リンに銃口を向ける。
リン「コイツ……コイツだけはッ!!!」
現場に緊張が張りつめる。
するとヤナギがリンに話しかける。
ヤナ「気持ちは分かります。ただ……あなたの後輩はそれを望んでるでしょうか?」
リン「・・・・・」
ヤナ「そうでは無いはずです。それでもというなら引き金を引けばいい。シロサキはここで死ぬか、刑務所で死ぬか……それだけの違いだ。」
リンは少し考えた後、ゆっくり銃を下ろした。
ヤナ「・・・賢明な判断です。ハナさんもそれを望んでいるでしょう。」
シロサキは連行される。
そのあいだもリンはずっとシロサキを見つめていた。
シロサキは最後にリンに一言言い放った。
シロ「また会おう。」
リン「・・・」
リンは返事をしなかった。
リンは病院に搬送された。
戦場となった埠頭は再び静かさを取り戻した。
『BB』との戦いは幕を閉じた。
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