チェスがしたいだけなのに!

奏穏朔良

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24(代田刑事視点)

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里田との繋がりはわからなかったが、芝崎汪という生徒を調べて分かったのは『異端』である、ということだ。

成績は常に1位。むしろ入学試験から1位以外をとったことがないらしい。

あとは周りを惹きつけるカリスマ性。
あの少年の雰囲気に呑まれれば最後、絶対王者に君臨する彼に逆らう気持ちなど湧いてこない、と教師に言わしめるそれは『異端』以外の何物でもなかった。

光悦とした表情で『王様』と呼び、彼を讃える大人達は正直言って不気味だった。

(……まあ、教師達の話じゃ時折里田から話しかけることはあっても常に一緒という訳でもないらしいし、関係性としては知り合いとかそんなもんか?)

人物像から言えば、彼がシヴァ様だとしても驚かない。
だが、幹部候補である里田との関わりが薄い以上、安易にそうだと決めつけることも出来ない。
まあ、表面上そう見せているという可能性もあるが。

(それに、あれだけの規模の組織を17のガキが纏めているってのはやっぱり無理がある気がするな……)

仮に、里田の不良グループと青龍が全てメンバーだったとして、それだけで100人近くはいるだろう。それだけの人間を、ましてや荒くれ者ばかりの集団を10代の子供が纏められるだろうか。

(……はー、考えすぎて頭がパンクしそうだ。)

凝り固まったこめかみをグリグリ押して、1度思考をリセットする。
上手く点と点が繋がる感覚がしない。1本の線になるにはまだ点が足りなすぎる。

(……ひとまず、業者が1日中いるのは不自然だ。一旦、署に帰って外から調べてみるか。)

里田という人間の人物像がわかっただけでも収穫はある。
最後の教室を見終わった俺は、出来れば里田達の集まる拠点も確認しておきたいな、と思いつつ、くるりと踵を返した。

学校側に協力の礼を述べてから、校舎から出れば、ムワリとした暑さが身体を撫でる。

「……そろそろ本格的に夏が来るな。」

校舎内はちょうどいい温度で空調が効いていたので余計に外の空気が暑く感じた。

厚ぼったい作業着の袖をまくりながら、校門へと続く道を歩いていれば、

「あ、野々本君~!」

なんて、自分の横を1人の少年が通り過ぎて行った。
手を振って、親しい友人にかけるようなその声色の先には、

(……は?野々本春?)

俺たち警察がマークしている野々本春がそこにいた。

(おいおいおい、誰だあのガキは!?)

全くのノーマークの人物がいきなり重要人物と会話しているその状況に、頭が痛くなってくる。
ちらりと見えたネクタイの色は1年生の学年カラーだ。里田は3年生。芝崎汪は2年生だったため、1年生の存在はそれほど気にしていなかった。

(クッソ、今から戻って調べるか?いや、業者に扮している以上目立たないことが優先だ。下手にバレる訳にもいかない。)

ひとまず、野々本と話す少年の顔を覚え、署でデータベースと照合するしかない。

普通の業者を装い、何事もないかの様に彼らの横を通り過ぎようとたその時、

「気にしないで下さい。俺は貴方の部下なんですから。」

(……は?)

野々本は今、なんて言ったか。

平静を装いなんとか足を動かすも、頭の中は混乱し、呼吸が乱れるのがわかった。

まさか、まさか、まさか!

(あいつがシヴァ……!?)

ちらりと見た限り、芝崎汪のようなカリスマ性も、里田のようなリーダー性もない、これと言った特徴もない少年。
人混みに紛れてしまえば簡単に通行人bになってしまうような、そんな人物。

(その全身に被った平凡、いつか剥いでやる……!)

例えシヴァでなくとも、あの野々本が上司と呼ぶその人物。
そして、ここで野々本達青龍の里田達との繋がりの主張に矛盾が生じた。

(面白くなってきたじゃねーか!)

思わず口角が上がる。ここに来て浮かび上がってきた明確な人物。
ダミーの機材を持ち直しながら、俺は足早に署へと向かった。
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