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一日目(参)
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……ん、……君、……後野君!」
「んえ!?」
聞こえた声に、意識が浮上し、ガバリと飛び起きると、
「おっと!」
ぶつかりそうになった水蝹さんが慌ててのけぞった。
「す、すみません!」
「いや、大丈夫だよ。それより気分はどう?」
そうやら俺はまた畳の上で気を失っていたらしい。
ここに来た時と同じ状況に、まだぼんやりするを起こしながら、
「……あまりよくは……」
と、なんとか答える。
「……そうだよね。こんな訳の分からない状況で、三笑さんもあんなことに……」
水蝹さんの言葉に、先ほどの黒焦げになった三笑さんのことを思い出して、無意識に手を強く握った。
そしてふと周りを見ると先ほどとは部屋が違う事、この部屋には俺と水蝹さんしかいないことに気が付いた。
「こ、ここは……」
「また違う部屋みたいだね。もしかしたらだけど男女で部屋分けてあるのかも。」
そう言って水蝹さんは部屋を見渡し
「障子も襖も開かない密室。一応トイレとシャワー室あっちにあったよ。ここに来る直前に持ってた荷物はスマホ以外はここにあるみたい。」
と、俺が起きる前に調べてくれたのか分かっている事を教えてくれた。
「すごい……ですね、冷静で……なんか、俺まだ、混乱してて……」
「僕は君より早く目が覚めたから……もちろん、僕だって何でこんなことにって気持ちもあるけれど、なんというかあまりにも現実味がなくて、逆にって感じ?」
夢見心地っていうとよくないのかもだけど、と眉尻を下げた水蝹さん。
でも、現実味がない、というのは俺にもわかる。
「本当に、ここはあの世でもこの世でもない場所で……あの古里は殺された本人である古里なんでしょうか?」
「どうなんだろうね。」
突拍子もない、非現実的で、それこそフィクション小説みたいな話だ。
でも否定するには情報もなければ、目の前で起きたことが不可解すぎる。
「少なくとも三笑さんの殺され方は常識的にありえない。あんな短時間で人間を炭になるほど焼くのもそうだし、いきなり上から降ってきたのもわけわかんないよね。」
そう水蝹さんは顎に指を添えて告げた言葉に俺も頷き同意を示す。
そう、一番否定しきれないのは三笑さんの殺され方。
何かトリックを用いたとしても、悲鳴が聞こえて僅か数秒で部屋に移動させるなんて可能なんだろうか?
しかも炭になるまで燃やしてから。
「ああ、もう、頭ん中ごちゃごちゃしてる……」
と、手のひらで顔を覆う。
元々俺はそんなに頭がよくなければ要領もよくない。
おかげで人手不足なんて言われる現代ですら、就活に散々苦労した人間だ。
そんなだめ人間の俺が推理小説に出てくる探偵みたいにスパッと真実にたどり着けるわけがない。
「……もし、明日の投票で誰か選ばれたら、その人も三笑さんみたいに殺されるんでしょうか?」
そうこぼれた疑問に「どう、なんだろう……」と水蝹さんは少し歯切れ悪く言葉を続けた。
「選択肢は懺悔か死の二択、みたいに言ってたし、選ばれた人が本当に犯人で、罪を認めたら解放されるのかも……」
水蝹さんの推察に、確かにと思う反面、あれだけの事をしている古里がそう簡単に解放するだろうか、という疑問も残る。
たださらに残る疑問は
「どうして全員まとめて殺さないんでしょうか?」
そう、もしここに呼ばれた人たちの中に本当に古里を殺した犯人がいるのなら、まとめて殺してしまえば復讐は確実に成し遂げられるはず。
「何か……他に狙いがある?」
そう俺がぽつりと落とした言葉に
「もしくは制約がある、とか?こう、古里がこの空間を維持するために一回一人しか殺せない……みたいな?」
と、水蝹さんが人差し指を立てて告げたその仮説に俺は僅かに目を見開く。
「あ、そうか……本当にここが非現実的な空間だとしたらそういうフィクション的な条件もあるかもしれないのか……」
未だに信じられないが本当にここがあの世でもこの世でもない空間なら、俺たちの持つ常識は通じないということだ。
(あ~~~こんなことなら、デスゲーム系とか人狼系の話もっと読んでおくんだった~~~!)
なんて今更思っても仕方のないことだけれど。
「あとさ、後野君に1つ提案なんだけど。」
「え?提案……ですか?」
「そ。」
そう言って水蝹さんの指をさした先。そこには小さな机と
「……え、料理?」
そう、既に冷めているようだが、ご飯とみそ汁。そして焼き魚にサラダにお茶。定食のようにバランスの取れた料理が並んでいた。
「俺が起きた時にはなかったのに、いつの間にかあったんだよね。」
「……変な空間のわりに謎に親切ですね?」
俺の言葉に水蝹さんが何とも言えないような、少し渋い顔をして「あのさ、」と口を開いた。
「黄泉竈食って知ってる?」
「え?よもつへぐい?」
聞きなれない言葉にそれを繰り返すと、そ、と水蝹さん短く肯定する。
「あの世の物を食べると戻ってこれないってやつ。」
「へ……?」
初めて聞く話と言えど、この訳の分からない空間じゃ無視できない話だ。
あの世ではないと古里は言っていたけれど、ここから出られなくなっても困る。
「だからそこで提案なんだけど、その、これ食べるのやめておいた方がいいんじゃないかなぁーって。」
そう眉尻を下げた水蝹さんの言葉に「確かにやめておいた方がいいかもしれないですね。」と頷き同意を示す。
毒が入っていないとも限らないし。
「もったいないけれどちょっと危険な気がしますもんね……ただ」
ちょうど、タイミングを計ったように俺の腹がぐうぅと音を鳴らした。
「このままだと餓死が先か殺されるのが先かって感じしますけど……どうやって食糧確保します?」
そう、食べないことには賛成なのだが、問題なのは食料の確保だ。
俺の鞄には眠気覚ましのガムくらいしか入っていない。
それに「そのさ、これは俺が持ってた荷物だから大丈夫だと思うんだけど。」と、水蝹さんは自分の荷物であろうリュックをごそごそ漁り、次から次へと菓子パンの入った袋を取り出し、並べ始めた。
「わ、菓子パンばっかりじゃないですか!?」
ずらりと並んだ色々なメーカー、色々な味の菓子パンは全部で九個。
どれも美味しそうだが、物価高の影響でひと昔前よりこじんまりしているパンたちに少ししょっぱい気持ちになった。
「これ僕の朝と昼と夜のおやつなんだけど。」
「おやつの回数多くないですか?」
昼食のつもりで買ったにしては多いな、と思ったけれどまさかの一日三回おやつ。
ぱっと見細身なのに水蝹さんは結構食べる人らしい。
「数日ならもつと思うからさ。好きなの選んで。」
「あ、ありがとうございます……!」
申し訳なさを感じつつ、1つ選ばせてもらい、袋を開ける。
「まだ誰がどうとかわかんないけどさ。とにかく、今はここから生きて帰れるのを目指そう。」
そう言って水蝹さんも菓子パンを一つ開けた。
確かに、今の時点で誰が古里を殺したのかはわからない。もしかしたら目の前にいる水蝹さんが犯人かもしれない。
それでもとにかく今は生き残るしかない。
「はい!」
と俺は大きく返事をし、菓子パンに齧り付いた。
「んえ!?」
聞こえた声に、意識が浮上し、ガバリと飛び起きると、
「おっと!」
ぶつかりそうになった水蝹さんが慌ててのけぞった。
「す、すみません!」
「いや、大丈夫だよ。それより気分はどう?」
そうやら俺はまた畳の上で気を失っていたらしい。
ここに来た時と同じ状況に、まだぼんやりするを起こしながら、
「……あまりよくは……」
と、なんとか答える。
「……そうだよね。こんな訳の分からない状況で、三笑さんもあんなことに……」
水蝹さんの言葉に、先ほどの黒焦げになった三笑さんのことを思い出して、無意識に手を強く握った。
そしてふと周りを見ると先ほどとは部屋が違う事、この部屋には俺と水蝹さんしかいないことに気が付いた。
「こ、ここは……」
「また違う部屋みたいだね。もしかしたらだけど男女で部屋分けてあるのかも。」
そう言って水蝹さんは部屋を見渡し
「障子も襖も開かない密室。一応トイレとシャワー室あっちにあったよ。ここに来る直前に持ってた荷物はスマホ以外はここにあるみたい。」
と、俺が起きる前に調べてくれたのか分かっている事を教えてくれた。
「すごい……ですね、冷静で……なんか、俺まだ、混乱してて……」
「僕は君より早く目が覚めたから……もちろん、僕だって何でこんなことにって気持ちもあるけれど、なんというかあまりにも現実味がなくて、逆にって感じ?」
夢見心地っていうとよくないのかもだけど、と眉尻を下げた水蝹さん。
でも、現実味がない、というのは俺にもわかる。
「本当に、ここはあの世でもこの世でもない場所で……あの古里は殺された本人である古里なんでしょうか?」
「どうなんだろうね。」
突拍子もない、非現実的で、それこそフィクション小説みたいな話だ。
でも否定するには情報もなければ、目の前で起きたことが不可解すぎる。
「少なくとも三笑さんの殺され方は常識的にありえない。あんな短時間で人間を炭になるほど焼くのもそうだし、いきなり上から降ってきたのもわけわかんないよね。」
そう水蝹さんは顎に指を添えて告げた言葉に俺も頷き同意を示す。
そう、一番否定しきれないのは三笑さんの殺され方。
何かトリックを用いたとしても、悲鳴が聞こえて僅か数秒で部屋に移動させるなんて可能なんだろうか?
しかも炭になるまで燃やしてから。
「ああ、もう、頭ん中ごちゃごちゃしてる……」
と、手のひらで顔を覆う。
元々俺はそんなに頭がよくなければ要領もよくない。
おかげで人手不足なんて言われる現代ですら、就活に散々苦労した人間だ。
そんなだめ人間の俺が推理小説に出てくる探偵みたいにスパッと真実にたどり着けるわけがない。
「……もし、明日の投票で誰か選ばれたら、その人も三笑さんみたいに殺されるんでしょうか?」
そうこぼれた疑問に「どう、なんだろう……」と水蝹さんは少し歯切れ悪く言葉を続けた。
「選択肢は懺悔か死の二択、みたいに言ってたし、選ばれた人が本当に犯人で、罪を認めたら解放されるのかも……」
水蝹さんの推察に、確かにと思う反面、あれだけの事をしている古里がそう簡単に解放するだろうか、という疑問も残る。
たださらに残る疑問は
「どうして全員まとめて殺さないんでしょうか?」
そう、もしここに呼ばれた人たちの中に本当に古里を殺した犯人がいるのなら、まとめて殺してしまえば復讐は確実に成し遂げられるはず。
「何か……他に狙いがある?」
そう俺がぽつりと落とした言葉に
「もしくは制約がある、とか?こう、古里がこの空間を維持するために一回一人しか殺せない……みたいな?」
と、水蝹さんが人差し指を立てて告げたその仮説に俺は僅かに目を見開く。
「あ、そうか……本当にここが非現実的な空間だとしたらそういうフィクション的な条件もあるかもしれないのか……」
未だに信じられないが本当にここがあの世でもこの世でもない空間なら、俺たちの持つ常識は通じないということだ。
(あ~~~こんなことなら、デスゲーム系とか人狼系の話もっと読んでおくんだった~~~!)
なんて今更思っても仕方のないことだけれど。
「あとさ、後野君に1つ提案なんだけど。」
「え?提案……ですか?」
「そ。」
そう言って水蝹さんの指をさした先。そこには小さな机と
「……え、料理?」
そう、既に冷めているようだが、ご飯とみそ汁。そして焼き魚にサラダにお茶。定食のようにバランスの取れた料理が並んでいた。
「俺が起きた時にはなかったのに、いつの間にかあったんだよね。」
「……変な空間のわりに謎に親切ですね?」
俺の言葉に水蝹さんが何とも言えないような、少し渋い顔をして「あのさ、」と口を開いた。
「黄泉竈食って知ってる?」
「え?よもつへぐい?」
聞きなれない言葉にそれを繰り返すと、そ、と水蝹さん短く肯定する。
「あの世の物を食べると戻ってこれないってやつ。」
「へ……?」
初めて聞く話と言えど、この訳の分からない空間じゃ無視できない話だ。
あの世ではないと古里は言っていたけれど、ここから出られなくなっても困る。
「だからそこで提案なんだけど、その、これ食べるのやめておいた方がいいんじゃないかなぁーって。」
そう眉尻を下げた水蝹さんの言葉に「確かにやめておいた方がいいかもしれないですね。」と頷き同意を示す。
毒が入っていないとも限らないし。
「もったいないけれどちょっと危険な気がしますもんね……ただ」
ちょうど、タイミングを計ったように俺の腹がぐうぅと音を鳴らした。
「このままだと餓死が先か殺されるのが先かって感じしますけど……どうやって食糧確保します?」
そう、食べないことには賛成なのだが、問題なのは食料の確保だ。
俺の鞄には眠気覚ましのガムくらいしか入っていない。
それに「そのさ、これは俺が持ってた荷物だから大丈夫だと思うんだけど。」と、水蝹さんは自分の荷物であろうリュックをごそごそ漁り、次から次へと菓子パンの入った袋を取り出し、並べ始めた。
「わ、菓子パンばっかりじゃないですか!?」
ずらりと並んだ色々なメーカー、色々な味の菓子パンは全部で九個。
どれも美味しそうだが、物価高の影響でひと昔前よりこじんまりしているパンたちに少ししょっぱい気持ちになった。
「これ僕の朝と昼と夜のおやつなんだけど。」
「おやつの回数多くないですか?」
昼食のつもりで買ったにしては多いな、と思ったけれどまさかの一日三回おやつ。
ぱっと見細身なのに水蝹さんは結構食べる人らしい。
「数日ならもつと思うからさ。好きなの選んで。」
「あ、ありがとうございます……!」
申し訳なさを感じつつ、1つ選ばせてもらい、袋を開ける。
「まだ誰がどうとかわかんないけどさ。とにかく、今はここから生きて帰れるのを目指そう。」
そう言って水蝹さんも菓子パンを一つ開けた。
確かに、今の時点で誰が古里を殺したのかはわからない。もしかしたら目の前にいる水蝹さんが犯人かもしれない。
それでもとにかく今は生き残るしかない。
「はい!」
と俺は大きく返事をし、菓子パンに齧り付いた。
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