犯人探し

奏穏朔良

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二日目

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気づけば、また昨日の和室に集められていた。

「もう何なのよぉ……!」

再び訪れた恐怖の時間に犴田かんださんが蹲るようにして頭を抱えている。

「逃げたら殺される……投票で選ばれても殺される……どうしろっていうのよ……」

と、ため息をついた川獺かわそさんも昨日より覇気がない。
それはそうだろう。この訳の分からない状況が続いていることもそうだし、何より昨日、1人殺されたのだから。

「さあ、今日はちゃんと犯人が分かるといいですね!」

昨日と同じ、頭から血を被ったまま笑う古里。
このままいけば今日も誰かが死ぬ。

「どうにか投票を誤魔化せないかな……」

と小声で呟くと水蝹みおうさんが「人数が偶数なら、同率で誤魔化せたかもしれないけれど……」と、顔を歪めた。

そう、三笑みわらさんが亡くなり、今この場にいるのは俺、水蝹さん、犴田さん、川獺さん、飛倉とびくらさんの五人だ。

(あ、でもそれなら……)

誰かに入れようとすれば奇数が故同率にできないが、これなら、と水蝹さんの耳元へ口を寄せる。

「全員が自分に入れれば全員同率で、助かるんじゃないですか?」

そう、誰かに入れようとしてだめなら誰にも入れなければいい。
俺の策に水蝹さんもわずかに目を見開き、「確かに、それなら……」と口を開いたところで

「聞こえてますよ~そこのお二人。」

と古里の声が飛び込んできて肩がはねた。

「ちなみに同率なら同率の人全員殺します。同率の人が二人だろうが三人だろうが殺します。」
「え……」

あまりにも淡々とした宣告だった。そしてあまりに無慈悲だった。
じゃあ俺たちは本当に、今日、殺される人を選ばなければいけないのだろうか。

それしか道はないのだろうか。
空腹を訴える胃が、ただただ痛い。

「じゃあどうしたら殺されないのよ!」

そう叫んだのは川獺さんだった。
長い髪を振り乱して「こっちは死にたくないのよ!」と更に声を荒げる。

しかし、そんな彼女に向けられた古里の視線は冷ややかで、はあ、と一つ息を零すと

「犯人を見つければいいんですよ。言ったじゃありませんか。ボクを殺した犯人を探してもらうって。」

ただ淡々と、そう告げた。

(……ああ、本当に古里は死んだのか。)

その時、ただ漠然とそう思った。
だって、少なくとも中学の時の古里は、人の命をこんなに軽く扱うやつじゃなかった。

誰かに、寄り添ってあげられる側の人間だった。

それが、今は淡々と命を無下に扱うナニカになり果てている。

「じゃあ誰が犯人なのよ!?名乗り出なさいよ!!」

川獺さんの声が更に大きくなり、犴田さんの肩が跳ねた。
それに、グリンと音が付きそうな程の勢いで反応し、そちらを向いた川獺さんが「あんたが犯人!?」と犴田さんに飛びつこうとしたので、慌てて水蝹さんと一緒に止めに入る。

飛倉さんが「落ち着きましょう?ね?」と声をかけて背をさするも

「落ち着けるわけないでしょ!!何でよ、何でこんなことに巻き込まれなきゃいけないのよぉ!!」

と、とうとうその場に崩れるようにして座り込み、泣き始めてしまった。

「川獺さん……かなりメンタルに来てるね……」
「その、昨日夜勤明けだったみたいで何も食べていなかったらしく……置いてあった食事も怪しすぎて食べないようにしたので相当お腹も空いてますし、ストレスも相まって余計に不安定で……」

水蝹さんの言葉に飛倉さんが背をさすりながら答えると「二日食事なしの状態じゃ結構きついよね……」と水蝹さんが痛ましそうに顔を歪める。

「どなたか食料を持っている方は?」

と、問えば飛倉さんは力なく首を振った。
どうやら女性陣には食料を持っている人がいなかったらしい。

(あの部屋の荷物が持ち出せれば渡すことが出来るのに……)

とはいえ俺も水蝹さんの持っていた食料を分けていただいている立場のなのであまり勝手な事は言えないが。

今日だって気づけば意識が薄れ覚めた時にはもうこの部屋だった。
当然持っているものはなく、この身一つ。

(結局、早く解決するには古里を殺した犯人を見つけるしかないのか……!)

古里の方を見れば、ニコリと笑い、首を傾ける。
川獺さんの叫びですら、古里は大して興味が無いようだった。

「……話し合いをしようか。このままじゃ、全員死ぬだけだ。」

水蝹さんの言葉に、全員の口元が引き結ばれる。
川獺さんも、すんすんと鼻をすすりながら

「あたしじゃないわ……だって、全然関わりなかったし、古里君が亡くなってたことだって、こんなことになって初めて知ったんだし……」

と言葉を紡ぐ。
それに俺も

「実は俺も古里が亡くなっていたなんて知らなくて……」

と告白すればなんと飛倉さんまで「二人も!?私も知らなかったのよ!」と反応した。
すると今度は犴田さんがそろりと手を上げて

「じ、実はわたしも……」

と、言うではないか!
更には「え、みんなそうなの?僕も知らなかったんだけど。」と水蝹さんまで目を丸くしている。

(ど、どういうことだ!?)

誰れも知らないなら犯人はいないってことじゃないのか?
いや、そもそも殺した本人が「いつ亡くなったか知ってるよー」なんて言わないか。
命のかかっているこの場でそんなこと言えば投票されるとわかっているのだから。

(そうなると真っ先に開示した川獺さんは白……?取り乱し方も本当に理不尽に巻き込まれたことに混乱しているようだったし……)

でも、他の三人にだって特段怪しい点はない。

犴田さんは塾が一緒とは言えクラスも学年も違うし、飛倉さんに至っては関わりがあったのは小学生の時。
そうなると小学校の時のスイミングスクールが一緒だっただけの水蝹さんだって、犯人と言うには余りのも関係が遠すぎる。

「……ん?」

ふいに感じた違和感に、思わず言葉を零すと水蝹さんが「どうしたの?」とこちらを見やった。

「あ、いえ、少し気になったというか……別に犯人が分かったとかじゃないんですけど……」

そんな俺の言葉に「今は少しでも意見が欲しいし、話してみたらどうだい?」と水蝹さんに促され、全員の目線も俺に向けられる。

じっと見られるその居心地の悪い視線に気まずさを感じながらも、

「全然、犯人なのかな、とか、怪しいなとか、そういう話じゃないですよ!?」

と、両手を振って前置きをした上で、俺は犴田さんの方へと体を向けた。

「犴田さんは塾が一緒だったんだよね?でも学年も離れているしクラスも別。学校も違う……そんな先輩の名前を、フルネームで覚えているものなのかなって、思って……」

そう、俺の感じた違和感は関係性が遠すぎるのに、何故、古里 怪狸の名を明かされてすぐに誰とわかったのだろう、と言う事。
もしかしたら隠しているエピソードがあるのではないか、と勘ぐってしまったのだ。ただの考えすぎかもしれないが。

しかし、俺の言葉に犴田さんはサッとその顔から血の気を引かせた。

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