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(前書き)
いつもより短いです。すみません。
****
暴風の中、悲鳴が聞こえた気がした。しかし、それすらも風の轟音にかき消される。
再び風の濁流へと身を投げ出した僕は何とか飛ばされながらも足の止血を試みるも
(……思ったよりいってるな……)
右足は膝上5cm程まで持っていかれていた。
破いたシャツを足の断面に巻き、ベルトで絞める。本来ならば傷口を焼きたいが風に飛ばされながらではこれが限界だ。
暴風は勢いを増しこのままでは城壁が崩れるの時間の問題だろう。
そうなればナテュール様にも再び危険が及ぶ。
正直、他の王侯貴族がどうなろうが本当に、全く、非常にどうでもいいが、ナテュール様にこれ以上の傷をつけることがあってはならない。
痛みに滲む脂汗を目に入らないように甲で拭い、頬を軽く叩いた。
(しっかりしろ、ロイ!痛みなんて慣れたものだろう!片足がなくたって主の役に立つことこそ、従者の成すべきこと……!)
まずはこの暴風を巻き起こすあの魔法具を何とか停止させなければ。
僕の血で発動している以上、僕が止められるか?
いや、風の刃が僕に届いている時点で僕は魔法具の使用者にはなっていない。間違いなく発動者、使用者として認識されているのは条件を付与したエドワーズ公爵夫人だ。
公爵夫人を殺す?
いや、仮にそれで止まらなかった時、止められる手段の可能性を自ら潰したことになる。
(考えろ考えろ……!)
僕自身の血は魔法具の発動に使える。それを何とか活用して新しい条件を付与すれば……
(でも何て条件を付与すればこの暴風は止まる……!?)
恐らく暴風自体は魔法具の効能だ。
対象を切り刻むまで止まらないの言っていたが、それはルーカス様たちを守るためのブラフなのか。それなら単純に除外する条件のみしか付与できないのか。
はたまた何か上手い条件を付与してルーカス様達だけを対象外にできたのか。
疑問点が、不確定要素が多すぎる。
焦れば焦るだけ体温が下がっていく。
だめだ。このままだともうすぐ動けなくなってしまう!
(早く……早く何か打開策を……!)
グルグルと風に巻き上げられた体と同じように思考も渦を巻く。その時だった。
「ロイ!!!! 」
「ナテュール様!?」
抉られた壁の穴から顔を出したナテュール様が「これを使え!!」と1つの木箱を投げたのは。
「それは!」
風の刃に飲まれた木箱があっという間にただの木片と化す。
そしてその中から飛び出した赤い光沢に、公爵夫人の高笑いがピタリと止まった。
そう、ナテュール様が投げた物は、ルーカス様の一族が受け継いできた世界を滅ぼすこともできるあの古の魔法具であるイヤリングだ。
「何故貴様がそれを持っている!!」
それを視認した瞬間まるで悲鳴のような怒鳴り声を上げた公爵夫人。しかし、それよりも
「貴様ァ!!今ナテュール様のことを『貴様』と呼びやがったなぁ!?貴様の方が貴様で十分だわ貴様ァッ!!!」
ナテュール様に貴様など何たる狼藉!!万死!!!
「今それどころじゃないだろ!?それに言ってることめちゃくちゃだぞ!!!」
「申し訳ございません!!」
そうだ、ナテュール様に託されたイヤリングを危うく掴み損ねるところだった。
慌ててイヤリングを掴み取り、風の刃を避けながら片足で壁を蹴り暴風の中を移動する。
(巻き上げられた木々や瓦礫が増えていている。これ以上増えたら避けきれないな。)
小さな礫でも当たれば皮膚が裂けるほどの暴風だ。瓦礫が当たれば大怪我は免れないだろう。
(早く『条件』に『状況』を付与しなければ……!)
この状況で最も安全で迅速な、魔法具を無効化する状況の指定を!
(……そうだ、これなら……!!)
全身が痛みに悲鳴を訴える中、僕は古の魔法具を掲げた。
「『ナテュール様の半径5km圏内』では『古の魔法具は発動しない』!!」
「結局ナテュール様かよ!!」
「当然だろうが!!!」
いつもより短いです。すみません。
****
暴風の中、悲鳴が聞こえた気がした。しかし、それすらも風の轟音にかき消される。
再び風の濁流へと身を投げ出した僕は何とか飛ばされながらも足の止血を試みるも
(……思ったよりいってるな……)
右足は膝上5cm程まで持っていかれていた。
破いたシャツを足の断面に巻き、ベルトで絞める。本来ならば傷口を焼きたいが風に飛ばされながらではこれが限界だ。
暴風は勢いを増しこのままでは城壁が崩れるの時間の問題だろう。
そうなればナテュール様にも再び危険が及ぶ。
正直、他の王侯貴族がどうなろうが本当に、全く、非常にどうでもいいが、ナテュール様にこれ以上の傷をつけることがあってはならない。
痛みに滲む脂汗を目に入らないように甲で拭い、頬を軽く叩いた。
(しっかりしろ、ロイ!痛みなんて慣れたものだろう!片足がなくたって主の役に立つことこそ、従者の成すべきこと……!)
まずはこの暴風を巻き起こすあの魔法具を何とか停止させなければ。
僕の血で発動している以上、僕が止められるか?
いや、風の刃が僕に届いている時点で僕は魔法具の使用者にはなっていない。間違いなく発動者、使用者として認識されているのは条件を付与したエドワーズ公爵夫人だ。
公爵夫人を殺す?
いや、仮にそれで止まらなかった時、止められる手段の可能性を自ら潰したことになる。
(考えろ考えろ……!)
僕自身の血は魔法具の発動に使える。それを何とか活用して新しい条件を付与すれば……
(でも何て条件を付与すればこの暴風は止まる……!?)
恐らく暴風自体は魔法具の効能だ。
対象を切り刻むまで止まらないの言っていたが、それはルーカス様たちを守るためのブラフなのか。それなら単純に除外する条件のみしか付与できないのか。
はたまた何か上手い条件を付与してルーカス様達だけを対象外にできたのか。
疑問点が、不確定要素が多すぎる。
焦れば焦るだけ体温が下がっていく。
だめだ。このままだともうすぐ動けなくなってしまう!
(早く……早く何か打開策を……!)
グルグルと風に巻き上げられた体と同じように思考も渦を巻く。その時だった。
「ロイ!!!! 」
「ナテュール様!?」
抉られた壁の穴から顔を出したナテュール様が「これを使え!!」と1つの木箱を投げたのは。
「それは!」
風の刃に飲まれた木箱があっという間にただの木片と化す。
そしてその中から飛び出した赤い光沢に、公爵夫人の高笑いがピタリと止まった。
そう、ナテュール様が投げた物は、ルーカス様の一族が受け継いできた世界を滅ぼすこともできるあの古の魔法具であるイヤリングだ。
「何故貴様がそれを持っている!!」
それを視認した瞬間まるで悲鳴のような怒鳴り声を上げた公爵夫人。しかし、それよりも
「貴様ァ!!今ナテュール様のことを『貴様』と呼びやがったなぁ!?貴様の方が貴様で十分だわ貴様ァッ!!!」
ナテュール様に貴様など何たる狼藉!!万死!!!
「今それどころじゃないだろ!?それに言ってることめちゃくちゃだぞ!!!」
「申し訳ございません!!」
そうだ、ナテュール様に託されたイヤリングを危うく掴み損ねるところだった。
慌ててイヤリングを掴み取り、風の刃を避けながら片足で壁を蹴り暴風の中を移動する。
(巻き上げられた木々や瓦礫が増えていている。これ以上増えたら避けきれないな。)
小さな礫でも当たれば皮膚が裂けるほどの暴風だ。瓦礫が当たれば大怪我は免れないだろう。
(早く『条件』に『状況』を付与しなければ……!)
この状況で最も安全で迅速な、魔法具を無効化する状況の指定を!
(……そうだ、これなら……!!)
全身が痛みに悲鳴を訴える中、僕は古の魔法具を掲げた。
「『ナテュール様の半径5km圏内』では『古の魔法具は発動しない』!!」
「結局ナテュール様かよ!!」
「当然だろうが!!!」
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