58 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
58.鑑定の結果
しおりを挟む
「本当に微量なのですが、ほら、ここ!
ここに令嬢のくちびるの跡がかすかに残っているのがわかりますか?」
じっと目を凝らしてみると、確かにうっすらとくちびるらしき模様が見える。
「おそらく、殿下にこの恋文を書いて封をした後、おまじないがてら封筒にキスをしたのだと思われます。」
「こ、恋文……。」
ヘンリクスはぞわぞわと鳥肌が立つ。
アイリはもはや、ヘンリクスにとっておぞましい存在でしかなかったのだ。
「え、いや、くちびるの跡を残すくらいですので、おそらく恋文ではないかと思ったのですが……。
まあ、とにかく、このくちびるの跡からほんの微かに魔力を検知しました。」
「それで、どのような類の魔力なのかわかるか?」
ヘンリクスは自分や、ずっとその手紙を懐にいれていたディナルドに何か影響が出るのか心配になった。
「はい、魔法石での鑑定によると、おそらく“チャーム”ではないかと思われます。
魔法が盛んだった時代でも、めずらしい部類に入る魔法の一種で、人を惑わせる効果があります。
それに、正体不明の別の魔力も混ざっているようでした。
殿下もディナルド君も、特に変な感じはしませんか?
たとえば、この手紙の令嬢のことが妙に気になったり、彼女のことを考えると高揚したりといったことなのですが……。」
「全然ないな。むしろ嫌悪感しかない。」
「俺もです。」
ヘンリクスとディナルドは、一瞬も考えずに教授へ返答する。
「あれー? そうですか。おかしいなぁ……。
高貴な方はそういった耐性が生まれつきあるのかな?」
教授は心底残念そうに、ヘンリクスたちを見つめる。
「じゃあ、そんなに高貴でもない僕だったら、魅了されてしまうのかな?
今度その令嬢に会ってみようか?」
マシューがわくわくとした雰囲気で妙な事を言い出した。
「いやいや、それはさすがに危険だから……。
もうちょっと研究を進めてから、どうしても試してみたかったら会ってみたらいいんじゃないかな。
それに、チャーム以外にも何か別の魔力も働いているような感じもするし、その正体も突き止めなければいけない。
そんなわけで、殿下、この手紙をもうしばらく預かってもよろしいでしょうか?」
マギア教授は、希望に満ちた目でヘンリクスにお願いをする。
「別にそれは構わんが、教授は大丈夫なのか?
これから学園改革の話もしたいのだが、あの女の魔法にやられてしまっては困る。」
「それは大丈夫です!」
ヘンリクスの言葉を聞くと、マギア教授は首からぶら下げたネックレスを見せてくれた。
大きなターコイズのような石がはめ込まれた、古いネックレスだった。
「このネックレスは、あらゆる精神攻撃や状態異常の魔法をブロックしてくれる強力な魔道具なのです。
我が家の家宝でこれ一個しかないので、身を守るすべをもたないマシュー君は念のためにもう研究には参加しないでくださいね。」
「はーい。わかりました。
何かわかったら、絶対に僕にも教えてくださいね。」
子どもっぽい態度のマシューは、妖精や白銀の君などの面影が一切見られない。
その様子を見て、ヘンリクスは安堵する。
それこそ、リーリウムがマシューの美しさに魅了されてしまうのではないかと気が気でなかったからだ。
「それで、研究の過程で封筒を開けることになると思うのですが……。
手紙の内容を勝手に読むわけにはいかないので、後日また研究室に来ていただけますか?」
「わかった。それで、学園改革の話なのだが……。」
「いえ、ちょっと待ってください。
今はこの研究が最優先です。思いのほか危険な手紙のようなので……。
学園改革の方は、マシュー君や他の先生方と先に始めちゃってください。
マシュー君、どうすべきか分かっていますよね?」
「はい、先生。」
ヘンリクスは、本題である学園改革について話せないとは思ってもみなかったので、困惑した。
「殿下、僕たちは今まで何もしてこなかったわけではありません。
もちろん、離脱した先生もいらっしゃいますが、マギア教授を中心にここに残っている皆で出来る限りの準備はしていたのです。」
マシューが珍しくきちんと説明をする。
「それに、ああなってしまっては、マギア教授は研究以外のことは考えられなくなってしまうので……。
だから先生は頑固者だって言ったでしょう?」
教授はすでに部屋の奥で何やら書物を読みながら、ブツブツと独り言をとなえていた。
「なるほど、確かに。」
マシューの言葉にヘンリクスも思わず笑みがこぼれる。
「お忙しいとは思いますが、明日以降は僕らの秘密会議に出席してくださいね。
決して今の学園長たちには見つからないように!」
「そうか。承知した。」
ヘンリクスは、力強い味方を得たような安心感を抱いた。
最初に抱いていたマシューへの嫉妬心が、いつの間にかどこかへ行ってしまったようだった。
ここに令嬢のくちびるの跡がかすかに残っているのがわかりますか?」
じっと目を凝らしてみると、確かにうっすらとくちびるらしき模様が見える。
「おそらく、殿下にこの恋文を書いて封をした後、おまじないがてら封筒にキスをしたのだと思われます。」
「こ、恋文……。」
ヘンリクスはぞわぞわと鳥肌が立つ。
アイリはもはや、ヘンリクスにとっておぞましい存在でしかなかったのだ。
「え、いや、くちびるの跡を残すくらいですので、おそらく恋文ではないかと思ったのですが……。
まあ、とにかく、このくちびるの跡からほんの微かに魔力を検知しました。」
「それで、どのような類の魔力なのかわかるか?」
ヘンリクスは自分や、ずっとその手紙を懐にいれていたディナルドに何か影響が出るのか心配になった。
「はい、魔法石での鑑定によると、おそらく“チャーム”ではないかと思われます。
魔法が盛んだった時代でも、めずらしい部類に入る魔法の一種で、人を惑わせる効果があります。
それに、正体不明の別の魔力も混ざっているようでした。
殿下もディナルド君も、特に変な感じはしませんか?
たとえば、この手紙の令嬢のことが妙に気になったり、彼女のことを考えると高揚したりといったことなのですが……。」
「全然ないな。むしろ嫌悪感しかない。」
「俺もです。」
ヘンリクスとディナルドは、一瞬も考えずに教授へ返答する。
「あれー? そうですか。おかしいなぁ……。
高貴な方はそういった耐性が生まれつきあるのかな?」
教授は心底残念そうに、ヘンリクスたちを見つめる。
「じゃあ、そんなに高貴でもない僕だったら、魅了されてしまうのかな?
今度その令嬢に会ってみようか?」
マシューがわくわくとした雰囲気で妙な事を言い出した。
「いやいや、それはさすがに危険だから……。
もうちょっと研究を進めてから、どうしても試してみたかったら会ってみたらいいんじゃないかな。
それに、チャーム以外にも何か別の魔力も働いているような感じもするし、その正体も突き止めなければいけない。
そんなわけで、殿下、この手紙をもうしばらく預かってもよろしいでしょうか?」
マギア教授は、希望に満ちた目でヘンリクスにお願いをする。
「別にそれは構わんが、教授は大丈夫なのか?
これから学園改革の話もしたいのだが、あの女の魔法にやられてしまっては困る。」
「それは大丈夫です!」
ヘンリクスの言葉を聞くと、マギア教授は首からぶら下げたネックレスを見せてくれた。
大きなターコイズのような石がはめ込まれた、古いネックレスだった。
「このネックレスは、あらゆる精神攻撃や状態異常の魔法をブロックしてくれる強力な魔道具なのです。
我が家の家宝でこれ一個しかないので、身を守るすべをもたないマシュー君は念のためにもう研究には参加しないでくださいね。」
「はーい。わかりました。
何かわかったら、絶対に僕にも教えてくださいね。」
子どもっぽい態度のマシューは、妖精や白銀の君などの面影が一切見られない。
その様子を見て、ヘンリクスは安堵する。
それこそ、リーリウムがマシューの美しさに魅了されてしまうのではないかと気が気でなかったからだ。
「それで、研究の過程で封筒を開けることになると思うのですが……。
手紙の内容を勝手に読むわけにはいかないので、後日また研究室に来ていただけますか?」
「わかった。それで、学園改革の話なのだが……。」
「いえ、ちょっと待ってください。
今はこの研究が最優先です。思いのほか危険な手紙のようなので……。
学園改革の方は、マシュー君や他の先生方と先に始めちゃってください。
マシュー君、どうすべきか分かっていますよね?」
「はい、先生。」
ヘンリクスは、本題である学園改革について話せないとは思ってもみなかったので、困惑した。
「殿下、僕たちは今まで何もしてこなかったわけではありません。
もちろん、離脱した先生もいらっしゃいますが、マギア教授を中心にここに残っている皆で出来る限りの準備はしていたのです。」
マシューが珍しくきちんと説明をする。
「それに、ああなってしまっては、マギア教授は研究以外のことは考えられなくなってしまうので……。
だから先生は頑固者だって言ったでしょう?」
教授はすでに部屋の奥で何やら書物を読みながら、ブツブツと独り言をとなえていた。
「なるほど、確かに。」
マシューの言葉にヘンリクスも思わず笑みがこぼれる。
「お忙しいとは思いますが、明日以降は僕らの秘密会議に出席してくださいね。
決して今の学園長たちには見つからないように!」
「そうか。承知した。」
ヘンリクスは、力強い味方を得たような安心感を抱いた。
最初に抱いていたマシューへの嫉妬心が、いつの間にかどこかへ行ってしまったようだった。
0
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる