83 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
83.闇の魔法使い
しおりを挟む
フレエシアとマギア教授は、ディナルドの力も借りて、持って帰れるだけの資料を馬車に詰め込んだ。
残りは後日改めて取りにくることになっている。
フィールディング教授は、門の外まで出てきて三人を見送ると、馬車が見えなくなるまで通りの先を見つめ続けていた。
「ふう、ようやく肩の荷がおりたな。」
そうつぶやくと、屋敷の中へと入っていく。
「あの爺、まだ研究を続けていたなんて……。」
フィールディング教授の屋敷の玄関扉がバタンと閉まるのを、忌々しそうに見つめていた少女がいた。
「馬車を追いかけて、もう一度資料を燃やし尽くしてしまおうか。
白昼堂々と、それはさすがに目立つよね……。
学園内のことなら、あのおっさんに動いてもらうのがいいかな?」
独り言をブツブツと言いながら、深い紫色のフードを被った少女は、路地裏に消えて行った。
母親を領地に送り出した日、ヴィオラは念入りに身支度を整えて、母の代わりにリーリウムの様子をうかがいに王宮へ出かけた。
料理長が作ったフルーツケーキをかごに入れ、さらにユニカ様の日記帳を忍ばせる。
あの日、帰宅した公爵とフレエシアに、リーリウムが光の魔法使いかもしれないこと、そして闇の魔力のせいで体調が戻らないことを聞いたヴィオラは、ユニカ様の日記帳のあるページを思い出していた。
ユニカ様自身は、膨大な魔力を持つ火の魔法使いだった。
そして、聖女として召喚されたマリア様は光の魔法使いであり、植物が扱える木の魔法使いでもあった。
この二人が、唯一魔法で敵わなかった人物がいる。
ユニカ様の孫であった王子をたぶらかし、公爵家の令嬢を狂わせてしまった“ヒロイン”の男爵令嬢だ。
すでに全盛期を過ぎていたとはいえ、当時も名だたる魔法使いたちのトップに君臨していたユニカ様と、もはや神のような存在だったマリア様が二人で対峙しても歯が立たなかった理由は、そのヒロインが闇の魔法使いであったこと。
そして、体内からは強大な魔力が常にあふれ出していたという。
彼女をどうにか捕らえたユニカ様たちだが、日記にはこう書かれていた。
『ある日、彼女に“あなたは転生者か”と尋ねました。
すると、驚くことに彼女は自分が“原作者”だと言い出しました。
ユニカは悪役令嬢で、マリアがヒロインなのに、この世界は間違っていると言い張るのです。
彼女の本当の名前を訊ねると、確かに私が読んだ小説の作者と同じ名前です。
私は彼女に、自分も転生者であること、断罪されたくないから原作とは違う行動をとったことを話しました。
すると、キャラクターが自由意志を持ち、勝手に動いてしまうとストーリーが変わってしまうと泣き始めたのです。
王妃になるヒロインは聖女のマリアで、こんなおばあさんのはずがないと……。
確かに、聖女であるマリアは年を取っていません。
今も召喚された容姿のまま、成長が止まっています。
アレクサンデルも、その恩恵にあずかり、年を取らなくなるという設定がありました。
それは、原作者である彼女が、ヒロインとその相手は常に美しくなければならないという信念をもとに考えられた設定だったそうなのです。
その日から連日彼女の牢を訪れ、彼女の思い描いていた次回作の構想や、隠された設定などの話を聞きました。
そして、悪役令嬢だからといって救いのない断罪は良くなかったと、謝罪をしてくれたのです。
彼女のしたことは、到底許されることではありませんが、彼女にも苦悩があったのだと感じられました。
そんなある日、彼女の牢を訊ねると、彼女は忽然と姿を消していました。
牢の鍵はかけられ、脱獄の痕跡もない、初めからそこには誰もいなかったかのような、不思議な出来事でした。』
フレエシアが見た闇の魔法使いも、この魔法使いと同じように“ヒロイン”という立場で転生していたとしたら……。
ヴィオラは、そう想像しただけで身震いがした。
“ヒロイン”と相対する、今の“悪役令嬢”はリーリウムだ。
とにかく、今は体の弱った妹が、さらなる危機にさらされないか心配で仕方がなかった。
残りは後日改めて取りにくることになっている。
フィールディング教授は、門の外まで出てきて三人を見送ると、馬車が見えなくなるまで通りの先を見つめ続けていた。
「ふう、ようやく肩の荷がおりたな。」
そうつぶやくと、屋敷の中へと入っていく。
「あの爺、まだ研究を続けていたなんて……。」
フィールディング教授の屋敷の玄関扉がバタンと閉まるのを、忌々しそうに見つめていた少女がいた。
「馬車を追いかけて、もう一度資料を燃やし尽くしてしまおうか。
白昼堂々と、それはさすがに目立つよね……。
学園内のことなら、あのおっさんに動いてもらうのがいいかな?」
独り言をブツブツと言いながら、深い紫色のフードを被った少女は、路地裏に消えて行った。
母親を領地に送り出した日、ヴィオラは念入りに身支度を整えて、母の代わりにリーリウムの様子をうかがいに王宮へ出かけた。
料理長が作ったフルーツケーキをかごに入れ、さらにユニカ様の日記帳を忍ばせる。
あの日、帰宅した公爵とフレエシアに、リーリウムが光の魔法使いかもしれないこと、そして闇の魔力のせいで体調が戻らないことを聞いたヴィオラは、ユニカ様の日記帳のあるページを思い出していた。
ユニカ様自身は、膨大な魔力を持つ火の魔法使いだった。
そして、聖女として召喚されたマリア様は光の魔法使いであり、植物が扱える木の魔法使いでもあった。
この二人が、唯一魔法で敵わなかった人物がいる。
ユニカ様の孫であった王子をたぶらかし、公爵家の令嬢を狂わせてしまった“ヒロイン”の男爵令嬢だ。
すでに全盛期を過ぎていたとはいえ、当時も名だたる魔法使いたちのトップに君臨していたユニカ様と、もはや神のような存在だったマリア様が二人で対峙しても歯が立たなかった理由は、そのヒロインが闇の魔法使いであったこと。
そして、体内からは強大な魔力が常にあふれ出していたという。
彼女をどうにか捕らえたユニカ様たちだが、日記にはこう書かれていた。
『ある日、彼女に“あなたは転生者か”と尋ねました。
すると、驚くことに彼女は自分が“原作者”だと言い出しました。
ユニカは悪役令嬢で、マリアがヒロインなのに、この世界は間違っていると言い張るのです。
彼女の本当の名前を訊ねると、確かに私が読んだ小説の作者と同じ名前です。
私は彼女に、自分も転生者であること、断罪されたくないから原作とは違う行動をとったことを話しました。
すると、キャラクターが自由意志を持ち、勝手に動いてしまうとストーリーが変わってしまうと泣き始めたのです。
王妃になるヒロインは聖女のマリアで、こんなおばあさんのはずがないと……。
確かに、聖女であるマリアは年を取っていません。
今も召喚された容姿のまま、成長が止まっています。
アレクサンデルも、その恩恵にあずかり、年を取らなくなるという設定がありました。
それは、原作者である彼女が、ヒロインとその相手は常に美しくなければならないという信念をもとに考えられた設定だったそうなのです。
その日から連日彼女の牢を訪れ、彼女の思い描いていた次回作の構想や、隠された設定などの話を聞きました。
そして、悪役令嬢だからといって救いのない断罪は良くなかったと、謝罪をしてくれたのです。
彼女のしたことは、到底許されることではありませんが、彼女にも苦悩があったのだと感じられました。
そんなある日、彼女の牢を訊ねると、彼女は忽然と姿を消していました。
牢の鍵はかけられ、脱獄の痕跡もない、初めからそこには誰もいなかったかのような、不思議な出来事でした。』
フレエシアが見た闇の魔法使いも、この魔法使いと同じように“ヒロイン”という立場で転生していたとしたら……。
ヴィオラは、そう想像しただけで身震いがした。
“ヒロイン”と相対する、今の“悪役令嬢”はリーリウムだ。
とにかく、今は体の弱った妹が、さらなる危機にさらされないか心配で仕方がなかった。
0
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる