悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

文字の大きさ
103 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

103.アレクサンデル王の最期とユニカ

しおりを挟む
王宮内にある国王の執務室に通されたリーリウムとヴィオラは、すべてを国王に話し、ユニカ様の日記を見せた。
日記を一読した王は、机の引き出しからもう1冊の日記を取り出す。

「実は、アレクサンデル王の晩年の日記に気になる記述がある。」

そう言うと、アレクサンデル王の日記をヴィオラとリーリウムに読ませた。


『私の命はもう長くはもたないだろう。
体中が痛み、もう動くこともままならない。
心配なのはユニカだ。
毎日顔を見せてくれていたのに、この一カ月は音沙汰がない。
治療にやってくるマリアに聞いても、離宮で元気に過ごしているとしか教えてくれない。
本当に彼女は元気なのだろうか……。』

『ユニカに会いたい。もう彼女には会えないのだろうか。』

『彼女が私を見舞いに来ないはずがない。何が起こっている?』

『ユニカが心配だ。私の死後、彼女はどうなってしまうのだろう。』

『最後にひと目、ユニカに会いたかった。』


そこで日記は終わっていた。
アレクサンデル王の字は震え、時々書き損じている。
彼が高齢で病気だったことを如実に現わしている日記だが、最期までユニカ様の身を案じていたことが分かる。

「ユニカ様は、どうしてアレクサンデル王の最期の時を共に過ごさなかったのでしょうか?」

アレクサンデル王の切実な叫びに、リーリウムは心を痛めていた。

「私にもそれは分からない。
二人はアレクサンデル王の死後、ユニカ様がどうお過ごしになって、いつ亡くなったか知っているか?」

「離宮で静かに余生をお過ごしになったとしか……。
本人の遺言で、亡くなったことも国民には知らされず、密葬されたと本で読みました。」

「実は、王国の記録でもユニカ様がいつ亡くなられたのか分かっていないのだ。
もしかすると、ユニカ様はアレクサンデル王が存命中から何らかの事件に巻き込まれていたのかもしれない。」

「ユニカ様が晩年にお過ごしになっていた離宮は、今どうなっているのですか?」

ヴィオラが尋ねると、国王は小さく首を振る。

「今はもうない。
老朽化していたところを地震にやられてしまって、今は瓦礫の山になっている。
それにもう一人、所在不明になっている人物がいる。」

「どなたですか?」

「マリア様だ。」

「マリア様は神殿にいらっしゃるのではないのですか?」

リーリウムとヴィオラはギョッとして国王を見つめる。
異世界から来た聖女マリアは召喚されてから年をとらず、重傷や重篤な病気にかからない限りは永遠の命があると言われている。
儀式の際にも姿を現すことはないが、神殿の最深部で今も生きていると、国民たちの間では信じられていた。

「うむ。アレクサンデル王の死後、神殿からユニカ様の離宮へ住居を移したらしい。
実はその後のマリア様の記録も残っていない。
神殿でもマリア様の行方をさがしたのだが、見つからなかったそうだ。
民衆が混乱するといけないからと、その事実をこの五百年もの間隠し続けている。」

「そんなことが……。」

リーリウムは絶句するしかなかった。
信じていたことが、次々と覆されていく。

「このことは、王室と二大公爵家の当主にしか知らされないので、内密に。」

「「はい、陛下。」」

リーリウムとヴィオラは神妙な顔で、声を揃えて国王に約束をする。

「私はてっきり、ユニカ様とマリア様は同じ事件に巻き込まれて自由が無くなり、人知れず亡くなってしまわれたのだと思っていたが……。」

国王はしばらく思案しながら、ユニカ様の日記をパラパラと読み返している。

「ユニカ様の日記を見る限り、そうではないらしい。
今はユニカ様のご指示通り、そのリナという女に事情を聞くのが良いのではないかと思う。
リーリウム、体調が思わしくないところ悪いが、ヴィオラ嬢とヘンリクスと共にその役割を担ってくれないか?
相手が闇の魔法使いならば、光の魔法使いであるリーリウムが適任であろう。」

「かしこまりました、陛下。」

まだ自分が光の魔法使いという自覚がないリーリウムは、とまどう気持ちを抑えて国王の指示に従うことにした。
そうした理由から、リーリウムは急きょ舞踏会へ参加することになったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...