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6.お父さんとヒカルの決意
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リビングには、すでに着替え終わった二人が座っていた。
お父さんの洋服は少し小さいらしく、二人ともジーパンの裾から足首がむき出しになっている。
ヤジールに至っては、筋肉が盛り上がりすぎてトレーナーがピチピチになってしまっていた。
お父さんはというと、急きょ増えた人数のために、追加の献立を用意している様だった。
私はダイニングチェアの背もたれに引っかけていたエプロンを着けて、キッチンへ向かう。
「手伝うよ。」
同じくエプロン姿のお父さんが「ありがとう」と、いつも通りの笑顔を見せてくれた。
以前友だちが遊びに来た時、私とお父さんがエプロンをしている姿を見て、えらく驚いていた。
曰く、その子のウチではお母さんもエプロンを着けないし、他の友だちの家でもエプロンを着けているお母さんはほとんど見たことがないのだそうだ。
料理をする際にはエプロンを着けるものだと思っていたので、私にはそっちの方が驚きだった。
お父さんにその話をすると、料理の時にエプロンを必ずしなくちゃいけないと言っていたのはお母さんだったそうだ。
料理中の粉や油はねなどから、お気に入りの洋服がダメになるのを防いでくれるというのが、理由だったらしい。
お母さんはすごくおしゃれな人で、流行を追いかけるというよりも、お気に入りの洋服を大切に長く愛用するタイプの人。
お父さんにそう聞いてから、私もやたらと洋服をおねだりするのを止めたのだった。
そんなことを思い出しながら、お皿を並べたり、ごはんを盛り付けたりとお手伝いをしていると、ヤジールがキッチンに入ってきた。
「我々に手伝えることはあるか?」
大きな体を少し小さくして、申し訳なさそうにしている。
最初の尊大な態度はどこにいってしまったのだろう。
そもそも、何でいきなり考えが変わったのか、お母さんに家族がいたことくらい最初から分かっていたはずなのに……。
私がイライラしていると、お父さんが「結構ですよ」とやんわり断って、リビングへとヤジールを追いやってくれた。
「ヒカル、今、理解しがたいことが起こっていて、正直お父さんも混乱している。
でも、もし、お母さんの居場所を彼らが知っているなら、それに賭けたいと思っている。
だけど、もしかすると危険な目にあうかもしれない。
スマホを片時も手放してはいけないよ。」
お父さんが、こっそりと耳打ちをする。
そうだ、お父さんだって半信半疑なのだ。
私はエプロンの下に手を入れ、オーバーサイズのパーカーのポケットに入れたスマホの感触を確かめ、お父さんの顔を見て大きく頷いた。
お父さんも同じく、スマホが入っているエプロンのポケットをポンポンと叩いて見せてくれる。
そうだ、ひとまず冷静になって、彼らを利用してやろう。
何かあれば、スマホで警察に連絡すればいいのだから。
お父さんの洋服は少し小さいらしく、二人ともジーパンの裾から足首がむき出しになっている。
ヤジールに至っては、筋肉が盛り上がりすぎてトレーナーがピチピチになってしまっていた。
お父さんはというと、急きょ増えた人数のために、追加の献立を用意している様だった。
私はダイニングチェアの背もたれに引っかけていたエプロンを着けて、キッチンへ向かう。
「手伝うよ。」
同じくエプロン姿のお父さんが「ありがとう」と、いつも通りの笑顔を見せてくれた。
以前友だちが遊びに来た時、私とお父さんがエプロンをしている姿を見て、えらく驚いていた。
曰く、その子のウチではお母さんもエプロンを着けないし、他の友だちの家でもエプロンを着けているお母さんはほとんど見たことがないのだそうだ。
料理をする際にはエプロンを着けるものだと思っていたので、私にはそっちの方が驚きだった。
お父さんにその話をすると、料理の時にエプロンを必ずしなくちゃいけないと言っていたのはお母さんだったそうだ。
料理中の粉や油はねなどから、お気に入りの洋服がダメになるのを防いでくれるというのが、理由だったらしい。
お母さんはすごくおしゃれな人で、流行を追いかけるというよりも、お気に入りの洋服を大切に長く愛用するタイプの人。
お父さんにそう聞いてから、私もやたらと洋服をおねだりするのを止めたのだった。
そんなことを思い出しながら、お皿を並べたり、ごはんを盛り付けたりとお手伝いをしていると、ヤジールがキッチンに入ってきた。
「我々に手伝えることはあるか?」
大きな体を少し小さくして、申し訳なさそうにしている。
最初の尊大な態度はどこにいってしまったのだろう。
そもそも、何でいきなり考えが変わったのか、お母さんに家族がいたことくらい最初から分かっていたはずなのに……。
私がイライラしていると、お父さんが「結構ですよ」とやんわり断って、リビングへとヤジールを追いやってくれた。
「ヒカル、今、理解しがたいことが起こっていて、正直お父さんも混乱している。
でも、もし、お母さんの居場所を彼らが知っているなら、それに賭けたいと思っている。
だけど、もしかすると危険な目にあうかもしれない。
スマホを片時も手放してはいけないよ。」
お父さんが、こっそりと耳打ちをする。
そうだ、お父さんだって半信半疑なのだ。
私はエプロンの下に手を入れ、オーバーサイズのパーカーのポケットに入れたスマホの感触を確かめ、お父さんの顔を見て大きく頷いた。
お父さんも同じく、スマホが入っているエプロンのポケットをポンポンと叩いて見せてくれる。
そうだ、ひとまず冷静になって、彼らを利用してやろう。
何かあれば、スマホで警察に連絡すればいいのだから。
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