聖女を探して~異世界人の伊勢参り~

ムササビ

文字の大きさ
8 / 12

7.セントラム人について

しおりを挟む
「急きょ作れるものがナポリタンしかなくて……。」

お父さんはそう言いながら、豚のしょうが焼きと山盛りのナポリタンを皆に取り分ける。

「いいよ。お父さんのナポリタンは十分おいしいし、それに相手は誘拐犯なんだから。
急にしおらしく反省してますって言われても、納得いかないよ。」

私はちょっと不貞腐れたように話す。

「そのことに関しては、セントラムと私たちについてもう少し説明しなくてはいけない。」

ヤジールが静かに話し始める。

「セントラムは至上神サマム様を中心にした、小さな世界だ。
そこに住む人々は、人間のように女から生まれるのではなく、急に発生する。」

「発生?」

人の誕生にふさわしくない言葉に、私は疑問を抱いた。

「うむ。その言葉の通りだ。
私たちには、人間のような男女という性別はない。
セントラム人はすべてサマム様が作り出した存在なのだ。
赤ん坊がセントラム内に急に発生するのが、われわれの誕生の仕方だ。
その発生した場所によって、その子の一生が決まる。
そして、誰に拾われたかも重要だ。
私はサマム様の神殿内に発生したので、その時点で聖騎士か上位神官になることが決まっていた。
赤ん坊の私を拾ったのが聖騎士長だったため、神殿の中で聖騎士として育てられたのだ。」

ヤジールは、自分の生い立ちを話してくれた。
人間には理解できない誕生の仕方だ。

「私は神殿の外で発生した。
神殿の外で発生した場合は、その身に宿った聖力が少ない。
そのまま消失してしまうか、路上生活者になることが多い。
だが、私は幸運にもヤジール様に拾っていただいた。
それに神殿外で発生したわりには聖力も多かったので、神官見習いとなり、将来は下位神官にもなれる。」

キタロスも、自分の生い立ちを話す。

「じゃあ、キタロスの育ての親がヤジールということ?」

「いや、子どもを育てるときは神殿にいる全員で育てる。
発生した赤ん坊を一番に発見した人物は、こちらで言うところの後見人のようなものだな。」

「生活費を出したりするってこと?」

「そうではない。
そもそも、私たちの世界には金銭というものがないのだ。
先ほども言ったように、発生した赤ん坊は誰に発見されるかで、運命が左右される。
私はキタロスを発見し、路上から神殿内に引き入れた。
もし、私ではなく、例えば路上生活者がキタロスを発見していたら、彼は今ここにはいない。
同じようにその日暮らしの路上生活者になるか、そのまま消失してしまっていただろう。
つまり、そういうことだ。」

「親ガチャみたいなものか……。」

“親ガチャ”の意味がわからないヤジールとキタロスは、きょとんとした顔をしていたが、深掘りはしなかった。
私がなんとなくでも理解したことに、満足したようだった。

「私たちには家族という概念がないのだ。
子どもはサマム様の手によって発生するし、寿命もサマム様のご意志によって急に訪れる。
死ぬのではなく、消失するのだ。
周りの人々からも、その人物に関する記憶が消失してしまうから、悲しさもない。
だから、言い訳にしかならないが、マリコを召喚した時に“残された家族”というものを誰も重視しなかった。
マリコもずっと泣いていたが、すぐに家族のことなど忘れるだろうと思っていたのだ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※基本週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...