聖女を探して~異世界人の伊勢参り~

ムササビ

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8.分かり合えない?

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「セントラム人って想像力がないの?」

思わず声を上げてしまったが、よくよく考えると、私もセントラム人の気持ちなんて分からない。
生まれるとか死ぬとかじゃなくて、発生するとか消失するとか、もはやその仕組みすらも良く分からないのだ。
お母さんは、お互いに分かり合えないこの人たちと十年間も過ごしてきたのか……。
私だったら、頭がおかしくなりそうだ。

「君たちが言う想像力というものはないかもしれない。
自分が分かっていることだけ、事実だけを認識しているのがセントラム人だ。
しかし、私たちは自分たちが置かれた環境に染まりやすいという特性も持っている。
だから、地球でヒカルたちと接触しただけで、マリコの悲しみの正体に気づけたし、自分たちが大きな間違いを犯してしまったということも分かったのだ。」

ヤジールがくやしさをにじませながら、自分の考えが急に変わった理由を述べた。
さっき会ったばかりの私たちに、自分の民族(?)のことを丁寧に教えてくれている。
それだけ、ヤジールが後悔しているということなのだろう。
私もいつの間にか、ヤジールの話を信じ始めていた。
隣に座っているお父さんも、夕飯を食べるのをやめて真剣にヤジールの話を聞いている。

「それで考えがすぐに変わったのね。
でも、キタロスは終始納得いってない様子だったよ?」

今まさに口の中にしょうが焼きを入れようとしていたキタロスは、急に話を振られて肉をお皿に戻した。
そして、涼し気な綺麗な顔で静かに話し始めた。

「ヤジール様ほど責任を感じていないのは事実だな。
私はマリコ様が泣いておられたところを見ていなかった。
子どもだったからな。
大人になって私がヤジール様と共に行動をするようになったころには、マリコ様も粛々と聖女のお仕事をされていた。
その分、ヤジール様のように、お前たちの感情に飲み込まれにくいのかもしれん。
ただ、お前の怒りを全く理解できないわけではない。
申し訳ないと思う気持ちもある。
しかし、聖女がいなくなることでセントラムがどうなってしまうのか、それも心配している。」

キタロスなりに、相反する感情で揺れ動いている様だった。
感情的ではないキタロスを見るのは初めてで、私は真剣に彼の話を聞いていた。

「しかし、我々をゲートから引きずり出すとは! 
お前の前代未聞すぎる野蛮な行動には憤りを感じてはいるけどな。」

キタロスが余計なひと言を付け足す。

「はぁ!? 普通攫われそうになったら抵抗するでしょうよ!?」

私がキレると、お父さんが「まあまあ」となだめてくれる。
私が落ち着くのを待って、ヤジールがキタロスの言葉を補足し始めた。

「キタロスの言い方は良くないが、この状態は本当に前代未聞なのだ。
私たちが外の世界に行く事はめったにない。
ましてや、ゲートから引っ張り出されるというのは、初めての現象だったから私も驚いた。」

前代未聞の抵抗力を発揮した自分を自分で褒めてあげたい! 
そこで抵抗しなかったら、私もセントラムに捕らわれてしまっていたということなのだから。
そして、私が抵抗できたのには理由がある。
路地で姿を消したお母さんはおそらく誰かに連れ去れたのだろうと思ったお父さんが、私に自衛できるように様々な習い事をさせてくれたのだ。
合気道や剣道、テコンドーに、水泳、器械体操まで!
今は柔道部に所属している。
残念なことにどれもこれもこれといった成績は残せていないが、筋力と体力、身体の使い方なんかは身についたのだ。
身長が152cmほどで他の中学生よりも小さめだし、洋服を着ていると華奢に見えるみたいだけど、腹筋は割れているし、体中ムキムキな細マッチョなのは、ちょっとした自慢。

「お父さん、いろいろと習っておいて正解だったね。」

私がそう言ってにっこりと笑うと、お父さんも愉快そうに笑って頭を撫でてくれた。
お父さんはいつまでも私を子ども扱いするから少し恥ずかしいけど、全然嫌じゃない。
私は立派なファザコンに育ってしまったようだ。
ニコニコと笑い合う私たちをヤジールとキタロスは不思議そうに見つめている。
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