聖女を探して~異世界人の伊勢参り~

ムササビ

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5.ヤジールの決意

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ヤジールはソファーから立ち上がると、床に座り土下座をする。

「二人には本当に申し訳ないことをした。もちろん、マリコにもだ。
謝って済むことではないことは分かっている。」

キタロスも渋々といった様子で、ヤジールの後に続き、頭を下げる。

「私は決めた。」

ヤジールは顔を上げると、私たちの顔をまっすぐに見据えた。

「聖力を辿り、このままマリコを探す。
そして、君たちの元へ返そうと思う。
もちろん、ヒカルのことも連れて行かない。」

「え! それではセントラムが不安定になってしまいます!
マリコ様がいなくなって三日で、すでに様々な異常が発生しているというのに。」

キタロスが思わず声を上げている。

「分かっている。分かっているが、もうこの家族をバラバラにするわけにもいかない。
それは、私の正義が許さない。我々の世界のことは、我々が解決すべきなのだ。」

ヤジールの決意の固さに、キタロスはオロオロするも、それ以上異論を唱えることはできないようだった。

「それは……。願ってもないことです。
マリコさんがいなくなってから、警察もろくに探してはくれなかった。
それに、マリコさんがこちらに帰ってきたとしても、この家にはたどり着けないと思います。
あれから、何度か引っ越しをしているので……。」

お母さんがいなくなってから、お父さんは一人で私を育てるために、まず仕事を辞めた。
当時いた大きな会社は、シングルファーザーに優しくなかったからだ。
幸い二人で数年生活できるほどの貯金があったので、手当を利用しつつ、貯金を切り崩しながら次の会社への就職を決めた。
しかし、その会社が数年で倒産し、当時の社長の紹介で再就職したのが、今の会社だ。
その間、京都から大阪、そして東京へ引っ越しを繰り返している。

「そうか……。元々、我々がしでかしたことだ。ぜひ、マリコを探させてくれ。
では、さっそくだが、この世界の地図はあるか?」

ヤジールがやる気に満ちた目でお父さんに尋ねる。
私はというと、もしかするとお母さんに会えるかもしれないという、期待と安心感で、急に眠たくなってきてしまった。

「地図は用意します。でも、ひとまず飯にしませんか?」

私がうとうとしているのに気づいて、お父さんがそう提案してくれた。
そういえば、お腹もすいている。
おやつに買った唐揚げ串を全部食べなかったせいだ。

「夕飯はもうほとんど出来ているから、ひとまずヒカルは着替えてきなさい。
お二人も、僕の洋服をお貸しするので、よければ着替えてください。」

お父さんは二人を自分の部屋へ連れて行く。
私は自分の部屋に行く前に洗面所に寄って石鹸で手を洗い、ついでに顔も洗う。
眠気が少しだけ和らぎ、あいつらに聞かなくてはいけないことを頭の中で整理し始めた。
異世界人だということを完全に信用したわけではないのだ。
お母さんの話も本当だとは限らない。
だけど、もしかしたら本当かもしれないという気持ちもある。
まだ頭の中はぐちゃぐちゃだけど、もしお母さんに会えたら、と思うとやっぱりドキドキする。
廊下を歩き、階段を上って自分の部屋へ行く。
着替えてから、その高揚した気分を何とか鎮めようと大きく深呼吸をして、リビングへと向かった。
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