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4.あの日2
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「そうか、そうだな。マリコにはこちらの生活があったのだ。
私は何故、それを考えなかったのか……。」
ブツブツと独り言を言うキタロスを、心配そうに見つめるヤジール。
この人たちは本当に何を言っているんだろう?
お母さんが失踪した時、私はまだ四歳だった。
だけど、あの日のことは今もくっきりと覚えている。
何時になってもお母さんが迎えに来なくて、ものすごく寂しくて不安だった。
お友だちが皆帰ってしまって、最後の一人になってしまった時、ついに私は泣き出してしまった。
優しくて美人で大好きだったマヤ先生に抱っこしてもらって、背中をとんとんとしてもらっているうちに、いつの間にか眠ってしまった。
起きると、お父さんにおんぶされて帰宅しているところだった。
コンビニに寄り、お弁当を二つ購入して、今度は手を繋いで並んで歩いた。
その瞬間から私とお父さんは二人きりの家族になったのだ。
「いろいろと確かめさせていただきたい。」
お父さんは全員が動揺をしている中で、気丈にも冷静な口調でヤジールとキタロスに話しかけた。
「まず前提として、“召喚”とか“聖女”というのは、私たちの世界の常識ではありえないことです。
今のところ、あなた方が話している内容が、まったく理解できないのですが、その辺りの説明をしてくれませんか?
それから、マリコさんについても教えてください。」
お父さんの問いかけに、ヤジールは姿勢正しくソファーに座り直す。
「私たちの世界は“セントラム”と言います。
セントラムはこの世の中心にあり、その他の世界と“ゲート”を通じて繋がることが可能な、特別な世界です。
私はそのセントラムの聖騎士で、至上神サマム様にお仕えしています。
セントラムは、さまざまな世界と繋がれる一方で、その他の世界に引っ張られやすいという弱点もあり、セントラムの存在を安定させるために“聖女”が必要とされています。
聖女はサマム様によって、セントラムの存在を最も危ういものにしている世界から選ばれます。
十年前に選ばれたのがマリコで、今回マリコが失踪してしまったため彼女を連れ戻すか、同じ性質の聖力を持つヒカルが次の聖女が見つかるまでの繋ぎとして召喚するかのどちらか、という神託が下ったのです。」
「なんとまあ、自分勝手な……。」
思わず口から本音が飛び出す。
自分たちが住む特別な世界とやらを救うために、その他の世界から女性を攫っているのだ。
私たちからお母さんを奪い、今度はお父さんから娘まで取り上げようとしていたなどと、よくも話せたものだ。
ヤジールは何かを言おうとしたキタロスを制して、話しを続ける。
「あの日、マリコはずっと泣いていて……。
子どもを迎えに行く途中だったと言っていた。
数日、錯乱したり泣いたりしていたのだが、徐々に落ち着きを見せるようになった。
それから聖女としての修行をはじめ、ずっと我々の世界の安定を守ってくれていた。
時々、ヒカルの話を聞かせてくれたこともあった。」
「あちらでのマリコさんの生活は過酷だったのですか?」
お父さんが、心配そうに尋ねる。
「マリコは大切な聖女だ。
衣食住はもちろん、何不自由ない生活をしてもらっていた。
修行も厳しいことは何もない。
もともと彼女の持っていた聖力の使い方を学んでいただけだ。
ただ、彼女が笑っているところは一度も見たことがない。
今思えば、当然だが……。」
お父さんの瞳から大きな涙が、ぽたぽたとこぼれ落ちる。
「マリコさんは元々、よく笑う人です。
一人で、どんなにか寂しかったか……。」
私もつられて泣いてしまった。
二人で抱き合って大号泣をする。
こんなに泣いたのは、初めてだった。
「お母さんに、会いたい!」
ひとしきり泣いたあと、あの日からずっと思い続けていた気持ちを思いっきり二人にぶつけた。
私は何故、それを考えなかったのか……。」
ブツブツと独り言を言うキタロスを、心配そうに見つめるヤジール。
この人たちは本当に何を言っているんだろう?
お母さんが失踪した時、私はまだ四歳だった。
だけど、あの日のことは今もくっきりと覚えている。
何時になってもお母さんが迎えに来なくて、ものすごく寂しくて不安だった。
お友だちが皆帰ってしまって、最後の一人になってしまった時、ついに私は泣き出してしまった。
優しくて美人で大好きだったマヤ先生に抱っこしてもらって、背中をとんとんとしてもらっているうちに、いつの間にか眠ってしまった。
起きると、お父さんにおんぶされて帰宅しているところだった。
コンビニに寄り、お弁当を二つ購入して、今度は手を繋いで並んで歩いた。
その瞬間から私とお父さんは二人きりの家族になったのだ。
「いろいろと確かめさせていただきたい。」
お父さんは全員が動揺をしている中で、気丈にも冷静な口調でヤジールとキタロスに話しかけた。
「まず前提として、“召喚”とか“聖女”というのは、私たちの世界の常識ではありえないことです。
今のところ、あなた方が話している内容が、まったく理解できないのですが、その辺りの説明をしてくれませんか?
それから、マリコさんについても教えてください。」
お父さんの問いかけに、ヤジールは姿勢正しくソファーに座り直す。
「私たちの世界は“セントラム”と言います。
セントラムはこの世の中心にあり、その他の世界と“ゲート”を通じて繋がることが可能な、特別な世界です。
私はそのセントラムの聖騎士で、至上神サマム様にお仕えしています。
セントラムは、さまざまな世界と繋がれる一方で、その他の世界に引っ張られやすいという弱点もあり、セントラムの存在を安定させるために“聖女”が必要とされています。
聖女はサマム様によって、セントラムの存在を最も危ういものにしている世界から選ばれます。
十年前に選ばれたのがマリコで、今回マリコが失踪してしまったため彼女を連れ戻すか、同じ性質の聖力を持つヒカルが次の聖女が見つかるまでの繋ぎとして召喚するかのどちらか、という神託が下ったのです。」
「なんとまあ、自分勝手な……。」
思わず口から本音が飛び出す。
自分たちが住む特別な世界とやらを救うために、その他の世界から女性を攫っているのだ。
私たちからお母さんを奪い、今度はお父さんから娘まで取り上げようとしていたなどと、よくも話せたものだ。
ヤジールは何かを言おうとしたキタロスを制して、話しを続ける。
「あの日、マリコはずっと泣いていて……。
子どもを迎えに行く途中だったと言っていた。
数日、錯乱したり泣いたりしていたのだが、徐々に落ち着きを見せるようになった。
それから聖女としての修行をはじめ、ずっと我々の世界の安定を守ってくれていた。
時々、ヒカルの話を聞かせてくれたこともあった。」
「あちらでのマリコさんの生活は過酷だったのですか?」
お父さんが、心配そうに尋ねる。
「マリコは大切な聖女だ。
衣食住はもちろん、何不自由ない生活をしてもらっていた。
修行も厳しいことは何もない。
もともと彼女の持っていた聖力の使い方を学んでいただけだ。
ただ、彼女が笑っているところは一度も見たことがない。
今思えば、当然だが……。」
お父さんの瞳から大きな涙が、ぽたぽたとこぼれ落ちる。
「マリコさんは元々、よく笑う人です。
一人で、どんなにか寂しかったか……。」
私もつられて泣いてしまった。
二人で抱き合って大号泣をする。
こんなに泣いたのは、初めてだった。
「お母さんに、会いたい!」
ひとしきり泣いたあと、あの日からずっと思い続けていた気持ちを思いっきり二人にぶつけた。
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