69 / 138
模倣の刃
しおりを挟む
崩れた瓦礫を背に、ユージン・ファルクナーは立っていた。
その胸には、黒金色に輝く魔道具──《偽勇者の心核(ファルス・コア)》が埋め込まれている。勇者レオンの「精神波動」を模倣して作られた魔道具であり、使用者に一時的にレオンと同じような力を与える。
鼓動のたびにそれは熱を帯び、彼の内側から何かを塗り替えようとしていた。
「……やっぱり、すごいな……この力……」
ユージンの声は震えていた。恐れではない。覚悟と、そしてほんの僅かな後悔が混じった揺らぎ。
目の前の男――勇者レオン。
かつては英雄として讃えられたその姿は、いまや復讐の化身として世に恐れられる存在だった。
「……何をそのような道具で取り繕う?」
レオンの瞳は冷えきっていた。だが、その奥に一瞬、僅かな戸惑いが宿る。
(……俺と似た気配……?)
ユージンが一歩踏み込む。
その動きは、誰が見ても――まるでかつての勇者レオンを彷彿とさせる鋭さだった。
「はっ……!」
光を帯びた剣撃が閃く。模倣された《勇者剣技・迅雷》。
レオンの防御をかすめ、漆黒の外套を切り裂いた。
「……真似事で、俺に届くとでも?」
「俺は……お前を殺したいだけだ!」
叫びと共に繰り出された剣閃に、今度はレオンが後退を余儀なくされる。
瓦礫の影から、その様子を見つめる一人の女がいた。
漆黒の翼と金の瞳。堕天使・ルシフェル。
彼女は、唇の端をわずかに吊り上げた。
「ふふ……ようやく、魔道具が動き始めたわね。さあ、ユージン。どこまで自分を保てるかしら?」
彼女の言葉は風に溶け、誰にも届かない。
だが次の瞬間。
ユージンの動きが、僅かに鈍った。
――視界が揺れる。
――意識の底で、“誰かの声”が囁く。
(……英雄よ。お前こそが、この世界の希望……)
(否、お前の存在は秩序を乱す!)
「う、うあっ……!」
ユージンの膝がわずかに沈む。
「やめろ……!俺は……勇者じゃない……!」
それを見て、レオンは再び構えた。
一瞬の隙。だが、その手にためらいが混じる。
「……その力に、呑まれたくなければ――今すぐ引け。」
「……引かない。お前を殺すまで、俺は引かない……!」
ふたたび剣が交錯する。火花が散る。
その胸には、黒金色に輝く魔道具──《偽勇者の心核(ファルス・コア)》が埋め込まれている。勇者レオンの「精神波動」を模倣して作られた魔道具であり、使用者に一時的にレオンと同じような力を与える。
鼓動のたびにそれは熱を帯び、彼の内側から何かを塗り替えようとしていた。
「……やっぱり、すごいな……この力……」
ユージンの声は震えていた。恐れではない。覚悟と、そしてほんの僅かな後悔が混じった揺らぎ。
目の前の男――勇者レオン。
かつては英雄として讃えられたその姿は、いまや復讐の化身として世に恐れられる存在だった。
「……何をそのような道具で取り繕う?」
レオンの瞳は冷えきっていた。だが、その奥に一瞬、僅かな戸惑いが宿る。
(……俺と似た気配……?)
ユージンが一歩踏み込む。
その動きは、誰が見ても――まるでかつての勇者レオンを彷彿とさせる鋭さだった。
「はっ……!」
光を帯びた剣撃が閃く。模倣された《勇者剣技・迅雷》。
レオンの防御をかすめ、漆黒の外套を切り裂いた。
「……真似事で、俺に届くとでも?」
「俺は……お前を殺したいだけだ!」
叫びと共に繰り出された剣閃に、今度はレオンが後退を余儀なくされる。
瓦礫の影から、その様子を見つめる一人の女がいた。
漆黒の翼と金の瞳。堕天使・ルシフェル。
彼女は、唇の端をわずかに吊り上げた。
「ふふ……ようやく、魔道具が動き始めたわね。さあ、ユージン。どこまで自分を保てるかしら?」
彼女の言葉は風に溶け、誰にも届かない。
だが次の瞬間。
ユージンの動きが、僅かに鈍った。
――視界が揺れる。
――意識の底で、“誰かの声”が囁く。
(……英雄よ。お前こそが、この世界の希望……)
(否、お前の存在は秩序を乱す!)
「う、うあっ……!」
ユージンの膝がわずかに沈む。
「やめろ……!俺は……勇者じゃない……!」
それを見て、レオンは再び構えた。
一瞬の隙。だが、その手にためらいが混じる。
「……その力に、呑まれたくなければ――今すぐ引け。」
「……引かない。お前を殺すまで、俺は引かない……!」
ふたたび剣が交錯する。火花が散る。
2
あなたにおすすめの小説
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる