処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ

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円舞曲の終焉

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血の霧が舞う王都の中央広場。
夜に染まりかけた空の下、紅き外套が優雅にひるがえる。

《紅血の処刑者》グラン=バロック。
吸血鬼であり舞踏家、そして殺戮の演出家たる彼は、今まさに“終幕”の舞を踊っていた。

「おやおや……まだ立つのかい?」

紅のドレスのようなマントを翻しながら、彼はふたりを見下ろす。

セリーヌ・ミルフォード――白銀の髪を靡かせる大魔術師。
ソフィア・アルバート――俊弓を携えた、元・王国一の狙撃手。

「……あなたの“終わり”を見てからゆっくり座るわ」

セリーヌが静かに呟き、杖先から魔力を揺らす。
ソフィアは既に弓を構え、標的を“心臓”に定めていた。

「次は、外さない」

「怖いなあ。けれど……相手が強ければこそ、踊りは美しい」

グランは血の霧をまとい、空へと跳ぶ。
その身から放たれた血の鎖が、再びふたりを絡め取ろうと唸りを上げる。

「《反魔結界:八重の鏡》!」

セリーヌが瞬時に魔法障壁を展開。
鎖は八枚の鏡にぶつかり、軌道を弾かれる。

「さすがだねえ……じゃあ、これはどう?」

グランの分身たち――血の幻影――が舞い踊るように出現し、四方八方から襲いかかってくる。

「ソフィア!」

「わかってる!」

風の精霊がソフィアの矢に宿る。

「《裂風の神矢(テンペスト・スルー)》!」

風の奔流と共に放たれた矢は、幻影を薙ぎ払う。
その隙を逃さず、セリーヌが詠唱を完成させた。

「《星断ちの火環(セレスティアル・インフェルノ)》ッ!!」

空が燃える。
星すら焼き尽くす白金の炎が、広場全体を呑み込んだ。

「……っ!」

グラン=バロックは霧となって炎を避けるが、完全ではない。
右腕が焼かれ、皮膚が黒焦げになって裂ける。

「……これは痛い、痛いなあ……でも、それもまた“快楽”だ」

傷を舐めるように微笑み、彼は再び姿を現す。
今度は血を吸った鎖を“鞭”とし、セリーヌへと襲いかかる。

「セリーヌッ!」

「いいえ――この距離、この魔力、私にとっては“好機”!」

セリーヌが詠唱を終える。

「《重力封絶(グラヴィティ・ロック)》!」

空間そのものが沈み、グランの動きが重く鈍る。
次の瞬間、ソフィアの弓が、真紅の矢を番える。

「これが終幕よ……」

「……そうか。ならば――見届けよう、君たちの“終曲”を」

グランが両手を広げ、胸元を開いた。

「踊り手は、舞台の上で死ぬべきだ。華やかに、そして……美しく」

矢が放たれる。

セリーヌの魔力が矢を貫通し、風の精霊が速度を与える。
それはまるで、夜空を裂く一条の流星。

――そして、グラン=バロックの心臓を貫いた。

「……っ……ふふ……素晴らしい、よ」

血が、薔薇のように広がる。

「あなたたちの“協奏曲”、実に見事だった……」

グランはゆっくりと地に膝をつき、微笑んだまま、霧散していく。

「さようなら――美しき戦士たちよ」

その身体が消え、赤黒の霧となり、風に溶けた。

残された広場に、静寂が戻る。

ソフィアは息を整え、セリーヌは杖を収めた。
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