ゲストロニオ - Gestronio:美しすぎる兵士たちと欲望まみれの宇宙戦線

coldwarrior12

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崩壊の前の静けさ

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アルケン号は静かに地球へと向かっていた。
ゲストロニオ消滅から4日――クルーはほとんど口を閉ざしたままだった。爆弾のことも、その後の静寂についても。タイズでさえ冗談を言わない。何かが、変わっていた。

ロンドンの高層マンション。レオナルド・チェッコリは通信室の端末を睨みつけ、歯を食いしばる。
“また繋がらない……”
赤ダイヤルを押す。応答なし。
また押す。応答なし。
怒りに任せて机を両拳で叩く。

「ロンド!宇宙のロバ野郎!しっかりしろ、応答しろっ!」

シーンと静まり返る中、レオナルドが呟く。
「……もう一回……」
ビープ音、反応ゼロ。
彼は顔を揉み、毒づく。
「凍れる壁野郎をこの手でぶっ殺してやる……」

そこへケイトリン・テレサが現れる。
オーバーサイズの白シャツとミスマッチなモコモコ靴下姿。紫リップはまだ残る。手にはブラックコーヒー。

「まだ無視されてるのね?」
「あったかみのない“ghosting”ってやつだ」
レオナルドは唸る。
彼女が笑いを噛み殺しながら付け加える。
「生きてないかもよ」
彼は背後からつんのめる。
「冗談、やめてくれ……」

船内――ダイニングルーム近く。
キンバリーはピンクのフーディと靴下でくつろぎながら、片手にポップコーンのボウル、もう片手でデータパッドを操作していた。

スティーブンはまっすぐ近づき、まるでロボットのように涼しい声で言った。
「食べるもの…ありますか?」

キンバリーはイヤホンを外して瞬きする。
「えっと…ポップコーンで良ければ?」
彼は黙って一粒取って噛む。目を見開く。

(心の声: *これは、神々しい…クリスピーなる奇跡…*)

無言でボウルを抱え、部屋を出て行く。
「ちょっと…それ、私のだった…」
キンバリーはぽつり、と呟いた。

休憩室のソファにドサッと転がるスティーブン。ボウルを膝に置き、無表情でポップコーンを頬張る。

そこへ突如、レインボーの嵐が――ではなく、ラナが入ってきた。キリッとした髪まとめ、胸がゆさゆさ跳ねる白制服で。

「スティーブン!」
「また、そのソファ?!」
「はい」彼は淡々と頷き、口に一粒ポップコーンを入れる。
「あんた、本当にここで寝たの?」
「はい」
「話をしてる間は食べないで」
彼はじっと見つめ、飲み込んでから呟く。
「もう一度言ってもらえますか?理解できませんでした」

ラナが手をあげた。
スティーブンはその手を静かに掴む。
「え、何してるの?」
彼の声は低く、驚き混じりだった。

ラナは真っ赤になり、一瞬固まる。
そして――膝蹴り。
「ぎゃあっ!」

スティーブンは崩れる。
「…なんでこんなに痛いの?」
ラナは背を向けながら淡々と言う。
「次に勝手に触ったら、本気で折るから。分かった、ダーリン?」

スティーブンは呻きながらソファへ倒れ込む。
そこへタイズが入ってくる。マグカップ片手に。

「ラナに蹴られたって?また?」
「また?」スティーブンが驚き返す。
タイズはニヤリ。
「そりゃ定番だろ、兄弟。」



アンナは遠くからその様子を見つめていた。
声は出さず、眉だけがぴくり。
何かが違う、スティーブン。

彼は…笑ってない。口笛もジョークも。
ただ、無口で無表情。

(心の声:*一体、お前に何があった?*)

彼女がその思いを口にした瞬間、スティーブンはちらりと彼女を見る。
それだけでアンナは背筋が凍った。

船は夕焼けの中、大気圏を突破。
ラナは総員集合を命じた。

操縦室前に集まったチームは、みな眠そうで整列姿勢。

ロンドンは雨模様。いつもの灰色。

格納庫の扉が重たく開く。

そこに立つのは――自宅のようで、自宅ではない景色。

ロンドがうっすら口を開く。
「まずは、このまま休め。ブリーフ後だ」

ラナが前に出て切り出す。
「追加情報です。新しくフィールド司令官が一人、私の補佐に着任します」

足音が近づく。

背筋の伸びた男。
栗色の髪を縛り、頬に傷、腕に鷲のタトゥ。
フィールドベスト、手袋、落ち着いた声と存在感。

「ラッソと申します。…報告いたします」

部屋が一瞬静まり返る。

キアラは思わず爪チェックを止めて凝視する。

ラナはじっと見つめる――3秒間も。

ロンドが口を切った。
「試してもらおう。今、やれ」

床が開き、二人が向かい合う。

ラッソは動かない。

ラナが蹴り、パンチ、回し蹴り。

だが、すべてラッソがかわす。

一度の反撃もなし。

汗ばむラナ。

「なんで反撃しないの?」

ラッソは微笑むだけ。
「試してるんですよね?」
「え?」
「だったら、踊るだけで良いと…勝手に思いました」

ラナはフリーズする。
そして、迸る力を込めて最後の回し蹴り。

ラッソは受け止めて止める。
手が重なり、息が止まりそうになる。

「私に怒ってるの?今来たばかりなのに」
ラナの頬が紅潮する。

「一応“承認”です」
彼はウィンク。

その夜――
全員、24時間の休暇を与えられた。ロンド曰く「火星よりも怖い金星の前に、せめて一夜落ち着け」とのこと。

スティーブンは空になったポップコーンボウルを抱え、基地の外へと向かう。

他のメンバーは勝手に動き出す。

キアラとタイズが入口に並ぶ。

「ねぇ、ドリンクまだでしょう?」キアラが軽く肘をつく。
タイズは眉を上げて返す。
「もちろん。でも“燃える系”は勘弁な」
「約束しないわ」キアラ笑う。

キンバリーは寝巻に着替えてベッドに丸くなっていた。
ガラスに映る彼女の影が揺れる。
「何が彼を変えたの…?」彼女が囁く。

アンナはベランダ前に立ち、腕を組む。
声はない。思考だけが嵐のように渦巻く。

ラナは自室でひとり、対ラッソ戦の反射を胸に抱えながら考える。
相手の顔、静かな強さ、そして…胸の高鳴り。

そしてスティーブン…



彼は“家”なんて知らない。

25歳。だが“帰る場所”は、もう無い。

だから彼は歩き出す。

霧の中、雨の匂いの中、薄暗い石畳。

若い男女が手をつなぎ、笑い交わしている角へと進む。

スティーブンは立ち止まり、じっと見つめる。

不意に肌がうずく。

表面は静か。内側は動く。何かが――覚醒する。

夜風に僅かに光る、黴から逃げるような緑色の雫が地面に垂れる。

彼は歩を進める。

カップルが気づき、振り向く。

「ねぇ、大丈夫?」女性が言う。

スティーブンは顔を曇らせる。

何も言わず、ただ…歩く。

静寂。
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