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戸惑いを見せるつもりはなかったのに,急なマサラ王妃の参入に私は心を乱してしまった。
「わ…わたくしは…」
「陛下。申し訳ございません。私から一言よろしいでしょうか?」
私が言葉に詰まってしまうと、隣にいたお父様が国王陛下に声をかける。
「許そう…」
陛下の許しが出るとお父様は私に優しく微笑んで、肩をトンと叩いて一歩前に出る。
「マサラ王妃。お言葉ですが、この様な状況で…第二王子に娘をあの様に罵倒されながら婚約を継続させるほど私は薄情な親ではございません。婚約を続け、婚姻をした所でカロリーナが苦労することは目に見えております。
それに…カロリーナが第二王子にとって良きパートナーになるとのお言葉ですが、それは互いに支え合うパートナーという意味ではなく、単なる金銭的な…と言うことでですよね?
第二王子とカロリーナの婚約が決まってからマサラ王妃からは何回かに渡り当家に金銭的援助の要求がございましたから。」
「えっ?そんなことが?」
私は初めて耳にする真実に驚きが隠せず声を出してしまう。
「何?本当か?マサラ…」
お父様の言葉に国王も驚き,マサラ王妃の方を見る。
マサラ王妃は何も答えず,少し気まずそうに扇子で口元を隠す。
「最初は愛しい我が娘カロリーナの事を想い、要求にしたがってきましたが、娘が第二王子とうまく行っていない様だったので、私は2人の婚約の見直しをマサラ王妃に要求し、それと共に金銭の引き渡しを断らせていただいた。しかし、一向に婚約の見直しをされることはなく、その頃から第二王子に関しては不穏な噂を耳にするようになりました。」
「不穏な噂?何だ。私の耳に入ってきていないぞ」
お父様の言葉に国王が食いつく。
お父様は国王の言葉に軽く反応すると、マルク様に対して怒りに満ちた表情を向ける。
「第二王子が婚約者である娘とは別に数名の女性と関係があるというものです。しかも私の知る限りではそのお相手は高位貴族の令嬢がほとんどでした。それを聞いた時の怒りは底知れぬ者でした。が、噂は噂…確証が取れず…家の為、国の為と頑張ってくれている娘にはその事実を話すことができなかった。」
お父様はそれだけ言って、私の方を向くと悲しげな表情を見せる。
お父様は色々知っていたのね。
私のせいでお父様にも辛い思いをさせていたんだ…
何だか胸が苦しくなる。
「カロリーナの為に、確証となる証拠を掴もうとしましたが、証拠を掴もうとする度に何者かに邪魔をされ、中々噂を確証にすることができないでいた。そんな中、とある人物がカロリーナを救うために証拠をつかみ、苦境の中にいるカロリーナを助けてくれると約束をしてくれました。私では得られる情報が限られている。だから、全てをその者に託した。第二王子の事で辛くても頑張って進もうとする娘を見ているのは辛かったが、私は現状を受け止め見守ることを決めた。」
お父様が急にマルク様と私の婚約に対して真意に受け止める様になった裏にはそんな事があったのね…
全く気づけなかった…
とある人物とはきっとアロンの事よね。
そんな前からお父様と協力して私を助けようとしてくれていただなんて…
こんな状況なのに嬉しくて仕方ない…
「が、今回の事は流石に見逃すことはできません。」
お父様は今までよりも声量を大きくし、怒りに満ちた声を上げる。
「私は、親として今までカロリーナの何の力にもなってやれず、苦労をさせ続けてきてしまった。だから、ここで宣言をさせて頂く。
我がミスドナ伯爵家は第二王子と我が娘カロリーナの婚約を解消しないのであれば…カロリーナに苦痛を与えた第二王子。およびマサラ王妃に何かしらの制裁を下して頂けないのであれば、今後一切国に金銭的援助は行わない。
現国庫の財政の4分の1をまかなっているミスドナ家はマキシマス王国より撤退して妻の祖母の故郷バデロン帝国に入り、妻の母君の生家である子爵家に入る」
お父様の宣言に謁見の間にいる皆が騒めく。
国王もマサラ王妃もマルク様も流石にお父様の宣言には表情を崩している。
アロンとサムル様も予想外のお父様の宣言に驚きを隠せないでいる。
…我が家の財源がすごいことは知っていましたが、そんなにもこの国に貢献をしていたのですね。
改めてお父様の凄さを感じた。
お父様…グッジョブです。
リナの事とかアロンの事とか色々私に隠していたことはもう追求しません。
お父様の宣言でだいぶ断罪は上手くいっている様に感じますが、でも、まだこれは序章です。
本当の本番はこれから。
お父様…
この国を出ると言う事は、ひぃお爺さまやお爺さま…代々受け継いできたミスドナ伯爵家を捨てると言う事。
この国を出るという判断は苦渋の決断でしょう。
それに、お父様は何やかんやいってこの国がお好きですよね。
だから、安心してください。
お父様は…ミスドナ家は、この国を出て行く必要はありません。
だって、お父様も苦しめたマサラ王妃とマルク様はこれから地に落ちていきますから。
「わ…わたくしは…」
「陛下。申し訳ございません。私から一言よろしいでしょうか?」
私が言葉に詰まってしまうと、隣にいたお父様が国王陛下に声をかける。
「許そう…」
陛下の許しが出るとお父様は私に優しく微笑んで、肩をトンと叩いて一歩前に出る。
「マサラ王妃。お言葉ですが、この様な状況で…第二王子に娘をあの様に罵倒されながら婚約を継続させるほど私は薄情な親ではございません。婚約を続け、婚姻をした所でカロリーナが苦労することは目に見えております。
それに…カロリーナが第二王子にとって良きパートナーになるとのお言葉ですが、それは互いに支え合うパートナーという意味ではなく、単なる金銭的な…と言うことでですよね?
第二王子とカロリーナの婚約が決まってからマサラ王妃からは何回かに渡り当家に金銭的援助の要求がございましたから。」
「えっ?そんなことが?」
私は初めて耳にする真実に驚きが隠せず声を出してしまう。
「何?本当か?マサラ…」
お父様の言葉に国王も驚き,マサラ王妃の方を見る。
マサラ王妃は何も答えず,少し気まずそうに扇子で口元を隠す。
「最初は愛しい我が娘カロリーナの事を想い、要求にしたがってきましたが、娘が第二王子とうまく行っていない様だったので、私は2人の婚約の見直しをマサラ王妃に要求し、それと共に金銭の引き渡しを断らせていただいた。しかし、一向に婚約の見直しをされることはなく、その頃から第二王子に関しては不穏な噂を耳にするようになりました。」
「不穏な噂?何だ。私の耳に入ってきていないぞ」
お父様の言葉に国王が食いつく。
お父様は国王の言葉に軽く反応すると、マルク様に対して怒りに満ちた表情を向ける。
「第二王子が婚約者である娘とは別に数名の女性と関係があるというものです。しかも私の知る限りではそのお相手は高位貴族の令嬢がほとんどでした。それを聞いた時の怒りは底知れぬ者でした。が、噂は噂…確証が取れず…家の為、国の為と頑張ってくれている娘にはその事実を話すことができなかった。」
お父様はそれだけ言って、私の方を向くと悲しげな表情を見せる。
お父様は色々知っていたのね。
私のせいでお父様にも辛い思いをさせていたんだ…
何だか胸が苦しくなる。
「カロリーナの為に、確証となる証拠を掴もうとしましたが、証拠を掴もうとする度に何者かに邪魔をされ、中々噂を確証にすることができないでいた。そんな中、とある人物がカロリーナを救うために証拠をつかみ、苦境の中にいるカロリーナを助けてくれると約束をしてくれました。私では得られる情報が限られている。だから、全てをその者に託した。第二王子の事で辛くても頑張って進もうとする娘を見ているのは辛かったが、私は現状を受け止め見守ることを決めた。」
お父様が急にマルク様と私の婚約に対して真意に受け止める様になった裏にはそんな事があったのね…
全く気づけなかった…
とある人物とはきっとアロンの事よね。
そんな前からお父様と協力して私を助けようとしてくれていただなんて…
こんな状況なのに嬉しくて仕方ない…
「が、今回の事は流石に見逃すことはできません。」
お父様は今までよりも声量を大きくし、怒りに満ちた声を上げる。
「私は、親として今までカロリーナの何の力にもなってやれず、苦労をさせ続けてきてしまった。だから、ここで宣言をさせて頂く。
我がミスドナ伯爵家は第二王子と我が娘カロリーナの婚約を解消しないのであれば…カロリーナに苦痛を与えた第二王子。およびマサラ王妃に何かしらの制裁を下して頂けないのであれば、今後一切国に金銭的援助は行わない。
現国庫の財政の4分の1をまかなっているミスドナ家はマキシマス王国より撤退して妻の祖母の故郷バデロン帝国に入り、妻の母君の生家である子爵家に入る」
お父様の宣言に謁見の間にいる皆が騒めく。
国王もマサラ王妃もマルク様も流石にお父様の宣言には表情を崩している。
アロンとサムル様も予想外のお父様の宣言に驚きを隠せないでいる。
…我が家の財源がすごいことは知っていましたが、そんなにもこの国に貢献をしていたのですね。
改めてお父様の凄さを感じた。
お父様…グッジョブです。
リナの事とかアロンの事とか色々私に隠していたことはもう追求しません。
お父様の宣言でだいぶ断罪は上手くいっている様に感じますが、でも、まだこれは序章です。
本当の本番はこれから。
お父様…
この国を出ると言う事は、ひぃお爺さまやお爺さま…代々受け継いできたミスドナ伯爵家を捨てると言う事。
この国を出るという判断は苦渋の決断でしょう。
それに、お父様は何やかんやいってこの国がお好きですよね。
だから、安心してください。
お父様は…ミスドナ家は、この国を出て行く必要はありません。
だって、お父様も苦しめたマサラ王妃とマルク様はこれから地に落ちていきますから。
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