妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

文字の大きさ
11 / 63
第一章 妹を守ってみせる

10

しおりを挟む
 思ったより、順調にことが終わったな~!

 私は気が抜けて、安心しきり、きらびやかな回廊を一人で歩く。もちろん、帰宅するためだ。
 華やかな回廊はシャンデリアが輝き、何本もの大理石の円柱が立っているが、さすがハモンド家といったところだ。我が家より格段にお金持ちだ。

 人の姿は見えないが、始まって早々に帰ろうとしているのは、私以外いないだろう。夜だというのに、華やかなシャンデリアの輝きがこうこうと照らす空間を歩く。

 不意に背後で人の気配がした。同時にヒールが床に触れる、コツンとした音が響く。

「もう、帰っちゃうの?」

 え、私に聞いている? 

 反射的に振り返ると、円柱に寄りかかり、顔をのぞかせる姿があった。

 ――エディアルドだ。

 まさか油断していた、こんなところでばったり会うなんて!

 エディアルドはゆっくりと近づいてくる。
 長い金の髪をなびかせ、微笑みながら近づいてくる姿は、やはり今日も妖精のような可愛らしさだ。薄いピンクのドレスがよりいっそう際立たせる。

 だが、私は身構えた。

「もう、帰ってしまうの?」

 再度同じ質問をされ、顔をのぞき込まれた。

「ええ。本日はご招待、ありがとうございました、エディア様」
「ふふっ。堅苦しい言葉使い、真面目なんだね、リゼットは」

 逆に馴れ馴れしい口を効くエディアルドに私は警戒を強める。

「――どうして私の名前を知ったのです?」

 疑問に思ったら、つい口からポロッと出た。
 エディアルドは肩と口の端を上げて笑う。

「調べたんだ。気になると知らないと気が済まないから」

 調べあげられている――。
 喉の奥からヒッと声が出そうになるが、なんとかこらえた。

 エディアルドはにっこりと微笑んだ。

「改めて自己紹介、私はエディア・ハモンド。ジェラールは遠縁なんだ。どうか堅苦しい言葉使いはやめて、気楽に接して」
「わ、わかったわ」

 私は距離感に戸惑いつつも、平静を装おう。

「街では助けてくれてありがとう。助かったよ」

 エディアルドの言葉は本心からのように思えた。

「リゼットが来てくれなかったら、あの場が血だまりになっていたかも!」

 えっ……。

 無邪気に笑うエディアルドにフリーズする。

 そうだ、エディアルドは精霊の加護持ち。それも五つも。

 私が助けに入らずとも、自分でどうにかできただろう。だが、平和な街に血の雨が降っていたかもしれない……。本当にお礼を言われるのはエディアルドからじゃなく、あのゴロツキ三人からのような気がした。あの程度で済んだのだから。

「冗談だよ?」

 固まってしまった私の顔をのぞき込むエディアルドだが、冗談なのか本気なのか区別がつかず、乾いた笑いが出る。

「それで、もう帰るの?」
「ええ、ちょっと頭が痛くて」

 こめかみ部分をそっと手で押さえ、痛むアピールをする。だから早く、私をこの場から解放してくれ。

「じゃあ、ちょっと来て」
「えっ」

 腕をグイッと引っ張られた衝撃で倒れそうになったが、なんとか耐えた。

「頭痛とか関節が痛む時によく効く薬持っているから、あげるよ」

 いつの間にか腕を絡められ、離さないようにぎゅっと寄り添っている。

「ついて来て!」

 私の意見を聞く前に歩き出した。まいった、腕が絡まり、抜けそうにない。
 ここは大人しく従うしかない。

 ***

 やがてエディアルドは一室に案内した。

「ここが私の部屋」

 扉を開けると、可愛らしい小物に囲まれた女の子の部屋、といった感じだった。

「可愛い」

 ぽつりとつぶやくとエディアルドはフフフと笑う。

「ジェラールの母、ハモンド夫人の趣味なんだ。女の子が欲しかったんだって」

 なるほど、少女趣味でレースが好きみたいだと納得しながら、部屋を見まわした。

「座って、リゼット。今、準備するから」

 テーブルに案内され、椅子をそっと引かれる。広い部屋に輝くシャンデリア、上質な革張りのソファ、細工が刻まれた椅子とテーブル。別荘でこんなに豪華なら、本宅はすごいことになっているだろうな。

 エディアルドはチェストの引き出しをあさり、しばらくすると箱を手にして戻ってきた。

「ほら、これだよ。痛みがひくと思う!」

 エディアルドは箱の中からオブラートに包まれた粉薬を手渡した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...