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第22話 公太子来訪2★

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 その日の夜。
 今日も今日とて、セオは赤薔薇宮に顔を出した。いつもの性行為コースかと思いきや、その前に真面目な顔で切り出した。

「ライリー。話すのが遅れたが。実は来週、ルエニア公国から……」
「その話ならエザラ殿下から聞いたよ」

 努めて平静に言ったつもりだが、表情にも声音にも不機嫌さが滲んでいたらしい。セオはちょっぴり困ったような顔になった。

「そうか。すまない、気を遣ったつもりだったんだが」
「……別にいい。ちゃんとエザラ殿下の下にも顔を出してるみたいで、よかったよ」

 サンドフォード侯爵家も、三大侯爵家の一つ。今はライリーにご執心といったって、エザラをないがしろにするのは賢明なことじゃない。

「これからも俺に遠慮はしなくていいから。エザラ殿下と……その、寝たい時はそっちにいってくれていいし」

 ふいと顔をそっぽ向ける。
 ライリーとセオは寝台に隣り合って座っている状態なのだが、セオの大きな手が両頬を包み込んだ。かと思うと、ぐいっとセオに向き直らされる。

「ライリー」

 綺麗な空色の瞳と、目が合う。だが、怖いくらい真剣な目だ。

「私が愛しているのはライリーだ。何度も伝えているだろう」
「………」

 ――今だけだろ。
 そう言いたくなるのを、どうにか堪える。だいたい、ライリーを愛しているからといったって、エザラを抱かなくていい理由にはならないだろう。国王なのだから。

「俺は……気にしないよ。セオが他に誰を抱こうが。早く世継ぎができるのに越したことはないからな」

 五年後までできないことは、分かっているけれども。
 目線を逸らしてそう言うと、セオから噛みつくようなキスをされた。その勢いのまま、寝台に押し倒される。驚いて頭上にある秀麗な顔を見上げると、

「私がお前をどれだけ愛しているか、その身体に教えなければならないな」

 据わった目で、背筋がぞっとするようなことを言われた。
 どう考えても、溺愛スイッチが入っている。

「ちょ、ちょっと、待っ――」
「私はお前以外を抱く気はない。愛しているのはお前だけだ」

 だから、なぜそんなにもライリーにご執心なのか。
 慣れた手つきで衣服を脱がされ、あっという間に全裸になる。
 今夜は一段と愛撫が執拗だった。乳首からじっくりと攻められて、その一方で肝心なところはほとんど触らない。ようやく触れたと思っても、達してしまいそうになると、すぐ手を離してしまう。いわゆる生殺し状態だった。
 ライリーはもう涙目だ。

「セ、オ……意地悪しちゃ、いやだ」

 愛していることを身体に教えるというのなら、もっと優しくするものじゃないのか。セオの考えが理解できない。

「イきたいか?」

 率直な確認の言葉に、ライリーは言葉に詰まる。
 そりゃあ、いい加減に達したい。が、それを素直に口にするのは勇気がいる。

「え、あ……う」
「言わないのなら、イかせない」

 セオは無慈悲に告げ、ねちっこい愛撫を続ける。蜜液を吐き出したくても吐き出せず、ただただ苦しい快楽を享受することしかできない。
 どれほどの時間が経ったことか。ライリーはとうとう根を上げた。

「セ、セオ。言うから…っ……だから、お願い」

 セオの愛撫する手が止まる。耳を傾けるセオに、ライリーはか細い声で訴えた。

「イ、イきたい……」

 耳が熱い。消え入りそうなくらい恥ずかしい。
 素直にねだったことで、セオの気は済んだらしかった。いいだろう、と満足げに言って、ライリーの中心に手を伸ばして上下に扱く。
 待ちに待った刺激は、たまらなく気持ちいい。ほんの数分、扱かれただけで、それまで我慢していた性欲は容易く弾けた。

「あぁっ!」

 膨れ上がっていた花棒から、蜜液が飛び出す。
 ようやく達することができたライリーは肩で息をしつつ、恨めしげな目でセオを軽く睨んだ。

「なんであんな意地悪したんだよ」
「お仕置きだ。他に誰を抱いてもいいなんて、素直じゃないことを言うから」
「な…っ……ほ、本心だし!」
「嘘をつけ。ならば、なぜ目を逸らした。私の目を見て言えなかったことがその証拠だ」

 そんなのセオの主観だろう、と思う。勝手な憶測に過ぎない。
 まるでライリーがセオのことを好きだと思っているように言うが、ライリーは別にセオのことなど……好きではないのだから。

「ぐ、偶然だ、そんなの」
「ほう。まだお仕置きされたいのか」

 口から悲鳴が飛び出そうになった。また、あんな生殺し責めをされては、たまらない。

(こいつ、ドSだったのかよ!)

 今までは、猫をかぶっていたのでは。片鱗はあったけれども。
 急いで寝台から逃げようとしたが、あっさりとセオの手に阻まれた。組み敷かれて、正常位の体勢で雄棒を挿入される。抵抗する間もなかった。
 また、生殺し責めされるかと思いきや、今度は真逆だった。ライリーの気持ちいいところを重点的に責め、何度もイかされた。先ほどとは違う意味で涙目になるほど。

「あっ、あぁっ、もうやだ…ぁ……」

 吐き出す蜜液は、もはや白濁してさえいない。

「おかしくなっちゃ……、あぁああああああ!」

 また、イってしまった。ここまでくると、気持ちいいよりも苦しい。快楽地獄という言葉がしっくりとくる。
 息も絶え絶えのライリーの耳元に、セオが囁いた。

「おかしくなればいい。私のことしか考えられなくなるくらいに」

 激しく腰を打ちつけると、セオのモノがとうとうライリーの中で爆発した。熱い飛沫が肉奥まで濡らす。
 その衝撃でライリーもまた達してしまい、そこで意識が途絶えた。


     ◆◆◆


 今夜は、いつになく意地悪してしまった。
 眠った……というよりも、気を失ってしまったライリーに布団をかけてやりながら、セオはライリーを愛おしげな目で見つめる。
 なぜ、あんなに意地悪してしまったのか。理由は分かっている。嬉しかったからだ。――ライリーから焼きもちを妬かれたことが。
 ライリー自身は自覚があるのかないのか分からないが……ルエニア公国の件をライリーに伝えるよりも先にエザラに話していたことが、ライリーには不服だったのだろう。そして、その際にエザラを抱いたかもしれないと思って、ああいう物言いになったのだとも思われる。
 元々、セオはライリーから好意を持たれている、と思っていたわけではない。政略結婚なのだ。自分が想っているようには、ライリーから思われていないだろうと分かっていた。
 だから、少しずつでも振り向かせようと、長期戦覚悟で接してきた。最初の頃は全く眼中になかったように思うが、それがようやく意識してもらえ始めたように感じ、それが嬉しい。
 ……嬉しいからとなぜ意地悪するのだと聞かれたら、それが自分の本性だったのだろうとしか答えようがないが。

「愛しているよ、ライリー」

 目を閉じているライリーの額にキスを落とし、セオもその傍らに横たわった。

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