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後章
今度は国王様と面会です!
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ナディル先生に過去の出来事を教えてもらった日の夕方、アランとライモンドが暇を告げている最中に家令が一枚の手紙をもって部屋にやってきた。
封筒に押された封蝋をみて思わず顔を顰めると、素早くアランが伺う。
「リーリア様、どなたからの手紙でしょうか?」
「カミッラ正妃様からです。今、開けて内容を確認するのでお待ちいただけますか?」
何の用事もなくお手紙を出す方ではない。ソフィアの事を調べろと言ったのはカミッラ正妃だし、また何かを言いつけられる可能性は大いにある。
家令から受け取ったナイフで、封筒の上部を開くと中に入った紙が一枚ではないのが見えた。
取り出した手紙の文面を目で追う。先日の謁見の短い社交辞令の後に続く、助言と言う名の命令に頬が引き攣る。
「大丈夫ですか? 頬、すごい引き攣ってますよ?」
ライモンドがおずおずと言った調子で指摘する。その顔には一抹の不安があるのは、旧国派の騎士でカミッラ正妃の性分をよく知っているからだろう。
二枚目以降の私信ではない部分をアランに渡すと、視線を落とした顔が私と同じ様に引き攣る。
「これは……」
「はい。ソフィア様が行う事になっていた、『奇跡』の一部です。先日、ソフィア様がレナート王子と共に遠征にでられた為に、私に『聖女』として変わり行ってはとご助言がありました」
アランが読み終わったものを受け取って、ライモンドも天井を仰ぐ。
二人に渡した方は、ソフィア様が請け負う予定だった『奇跡』の行程表である。
『奇跡』の内容はいい。運良くというか、カミッラ正妃が精査したのか、いづれの願いも水に関する事になっている。規模もそこまで大きくないから、私の『魔術』でも十分対応できる。もっとも、護衛の二人は私の『奇跡』の事情は知らないから、この戸惑いに内容は関係ない。
一様に顔を顰めた理由は日程にある。
最初の対応日は明後日で、数か所の村を北へに向かう様に移動し、四日かけてシャンデラにほど近い村まで移動する計画が書かれている。
「これ、今からこっちに用意しろって事ですかね? もっと早く言って欲しいですよね」
日程書類を指で弾きながら、ライモンドがアランと私に同意を求めるような眼差しを向ける。
本当に。私もそう思う。でも、その辺りの事情も、私の持つ手紙で説明されていた。
「それは、元々遠征が決まるよりも、ずっと前にソフィア様の為に組まれたものなんです。私に『聖女』らしい仕事が必要と、カミッラ正妃様がしつこく……いえ、粘り強く会派に詰問……打診し、ようやくこの厳しい日程が提出されたそうです。是非、やり遂げて教会派に目に物見せて欲しいとお願いされてます……」
私が『聖女』と名乗る事に、まだ懐疑的な者が教会派中心に多いのは知っている。それは、あの処刑の日の一度しか、それらしいことをしていないからだ。『聖女』の称号を二分しない為に、当然教会派は『奇跡』に関する事案は譲りたくない。だから、伏せていたのだと思う。
今からでは準備の厳しい日程でも、カミッラ正妃から助言という形で示されれば、命令である事は二人も十分に理解している。アランが難しい顔で引き結んでいた口を開く。
「宿の手配と移動の経路はこのまま使えます。同行の兵は旧国派で組み直す必要がありますが、急な出立には慣れております。先日の遠征はデュリオ王子の可能性もあったので、二分隊程度なら旅装が整っている者も多いでしょう。明後日の早朝出立で、初日が少し駆け足になる行程でリーリア様の方がいかがですか?」
騎士団の準備は、間に合う答えが返ってくる。
カミッラ正妃からの手紙に目を落とす。
最後の村はシャンデラからほど近く、その日の宿泊もシャンデラになっている。
シャンデラではソフィアが巫女となり、イリーナが殺されている。まるで、それについて聞き及ぶ事を促すように、手紙の最後には、依頼が済めばシャンデラで羽を伸ばしても良いと書かれている。
「カミッラ正妃様のご助言を受け容れようと思います」
ナディル先生が過去を語ってくれたことで、レナート王子の『贋物』の意味が私には分からなくなった。でも、それで出来る事がなくなる訳じゃない。
レナート王子の『廃太子』の話から、ソフィアの過去をカミッラ正妃は調べるように勧めた。ソフィアの過去は、レナート王子の今後に関わる点があるという事だ。
当然だけど、カミッラ正妃の誘導はデュリオ王子を王にする為にある。乗って分かる事は、レナート王子の不利になる内容なのだろう。
でも、何も知らなければ離れていく気がするレナート王子を、理解する事が出来ないまま物事が進んでしまう。
強がりになるかもしれないけれど、得た情報をどう使うかは私の自由で、受け取って判断をするのは私自身だ。だから、どんな情報でもないよりもあった方がいい。
知らずに指先に力が入って、皺の寄ってしまった手紙に気づく。肩の力をゆっくりと抜くと、小さく息を吸ってアランとライモンドを見る。
「アランは騎士団との調整を至急お願いします。この機にシャンデラで巫女や『聖女』について学びたいので、大修道院へ訪問の申し入れと一日でいいので滞在延長を都合して下さい。ライモンドは旅に必要なものを家令に教えて頂けますか? 終わったら、ここにいないジュリアへの連絡もお願いします」
二人の護衛騎士が急な遠征への戸惑いを消して、主の願いを叶える騎士の顔で頷く。動き出した騎士の背を見送って、私も準備の為にドレスの袖をまくって気合を入れる。
故郷から王都に来た以来の大移動だ。準備も大変だし、規模を見定めて魔術の準備も、早速しておかなくてはいけない。
翌日は、早い時間から『聖女』としての旅の準備に追われる事になった。急な決定の為に騎士団から調整の伝令が度々訪れて、頻繁に中断するので用意が中々進まない。
昼過ぎになってて、漸く移動用の服を詰めたトランクを閉じる。もちろん、荷物はこれで終わりではない。
一つ大きなため息を吐いて、ベッドの上に広げた二つのドレスと合わせたアクセサリを見下ろす。
「どちらが『聖女』に見えると思う?」
旅の支度を手伝う侍女を振り返る。
ソフィアには『聖女』の服に相応しい巫女の服があるけれど、貴族の令嬢で巫女の経験のない私には当然ない。レナート王子として臨んだ『祭祀』での、ソフィアの真似て白のドレスを選んだけど、やっぱり私のドレスは社交用にしか見えない。神聖さなのか、清らかさのか、『聖女』としては何かが足りないのだ。
同じような感想を持っているのか、侍女もやや浮かない顔をして答えを口にしない。ほんの少しの沈黙の後に、おずおずと提案を侍女が口にする。
「リーリア様、アクセサリーを変えてみましょうか? 銀はレナート王子の髪色の印象がございますし、デュリオ王子の髪色に合わせて金にしてみると……」
侍女の言葉がどんどんと小さくなって消えた。どうしてかは分かる。
このドレスに似合う金のアクセサーは幾つか持っているけれど、どれを着けてもきっと舞踏会に赴く令嬢にしかならない。
ドレスを前に途方に暮れていると、ドアを叩いて入室を求める家令の声がした。許可すると大きな箱を幾つも抱えて、従僕と共に入って来る。
「それは、どうしたの?」
「たった今、カミッラ正妃様のお名前で届きました。後、こちらのお手紙もです」
箱と手紙をテーブルに乗せて、家令と従僕が部屋の外へ出る。どちらを先に空けるか迷った末に、箱の方を開ける事にした。
箱は貴族に人気のお店の品だから、今の状況を救う品が入ってい可能性がある。手紙の方は開いたら、また更なる問題で頭を悩ませる心配があるから後回しがいい。
「あっ……」
「まぁ!」
侍女と共に箱の中の白のドレスに声を上げる。
真っ白なドレスはしっとりとした滑らかなな生地で、縁取りには繊細で上品な金の刺繍が見て取れた。花ではなく蔦であるのが、普通のドレスと違って控えめに見える。
手に取って身体にあってて姿見の前に立つ。袖は長く肌があまり見えないようになっていて、首元も繊細レースによって覆われている。
腕や首筋の肌を見せる最近の流行とは、一風違うデザインが清廉で頑なな蕾を思わせる。
「着用されてはいかがですか?」
頷いて早速着用してみる。私もオーダーで利用する店を通しているから、サイズは贈り物なのにぴったりあう。侍女の手で他の箱も開いてもらうと、似たデザインの生成りのドレスと、それぞれに合わせた細金細工のアクセサリも出てきた。
「先ほどまでの私の服と比べて、ずっと『聖女』に見えます」
裾と翻してくるりとその場で周ってみせる。今度は侍女も会心の笑顔を浮かべて答えてくれる。
「とても素敵ですわ。靴はお持ちのもので、低めのデザインのないものをお持ちしますね」
いそいそと衣裳部屋に向かう侍女を見送って、手紙の方の封を開ける。
依頼を受ける事へのお褒めの言葉と共に、準備を心配する文章が最初に目に入る。さらに読み進めて、用意された品について書かれた部分を読んで目を瞬く。
このドレスは、カミッラ正妃が輿入れの時に持参した品を、私のサイズに直したものだった。袖を通してない品で、『聖女』に相応しいと思うから下さると書かれている。
言われて見れば、婚儀用のドレスに見えなくもない。一見して分からないのは、見慣れないデザインが多用されているからだ。変わった刺繍の入れ方も、首まで覆うレースの作りも、バルダートの古典衣装の型なのかもしれない。
遠くの旧国からこれ程の品を揃えて赴いたのに、旧国の意匠を理由に袖を通せなかったのなら切ない。でも、『聖女』の意匠として再び表に出す、なんだか逞しく強いカミッラ様らしい逞しい執念を感じる。
複雑な気分でドレスを見下ろして、二枚目の手紙に差し掛かろうとした時、侍女が戻ってきた。先にドレスを脱ぐ事にする。
「これは、凄く凄く丁重にしまってください。色々な想いが詰まっていそうなので、頂いたとはいえ汚したら後が大変怖そうな品です」
他に似合うドレスはないし、カミッラ正妃の贈り物を使用しないなんてできない。
元の服に着替えて、途中になった手紙を再び手に取る。
『聖女』として移動の際に、必ずデュリオ王子の宣伝をする事などカミッラ正妃らしい要求が並ぶ。全てに目を通した一番最後に、とんでもない事が書かれていた。
「国王陛下と? 戻られたら謁見? 今日?」
呟いた言葉に侍女が慌てて部屋を飛び出して、悲鳴のような声で家令を呼ぶ声が聞こえた。
夕方、お城からの陛下帰還の一報を受けて、向かう馬車の中でジュリアと向き合う。
「ごめんなさい! 準備が忙しいのに護衛騎士を呼んで!」
手紙の最後に、国王陛下が戻られたら謁見を希望していると書かれていた。今日は呼び出す予定はなかったのに、急遽護衛騎士の三人を午後は呼ぶ事になってしまった。
「あら、呼ばれない方が困りますわ。王家の命で私達はリーリア様に付いているんですの。お城に行くのに、その護衛騎士がいないなんて大問題ですわ」
確かにそうなのだけど、忙しいと分かっているから申し訳ない気持ちは収まらない。
正直、謁見は今日でなくともと、私は思う。国王陛下だって戻ったばかりで、きっと忙しい筈だ。大事な事はグレゴーリ公爵など、必要で十分な情報を持った人からなされた方が絶対に良い。
急な一大イベントに盛大なため息を一つつく。
「ジュリア、私のドレスにおかしなところはありませんか?」
明日の用意そっちのけで、選んだドレスを尋ねると、ジュリアが左腕のリボンに手を伸ばす。
「結構だと思いますわ。でも、このリボンが少しだけ捩じれております」
その言葉にレナート王子を思い出す。本当にレナート王子は私の事をよく見ていたと思う。
今はどの当たりを進んでいるだろうか。
もう、出立から三日が立つ。ラントまでのバルダート第二街道の道のりの半分は越えているのだろうか。
そっと馬車のカーテンを上げて、陽が落ちて薄暗くなった空を見る。西の空は遥向うはの地平線は、まるで燃えているかのように赤くみえた。
「そういえば、シュルテン修道院の以前の神官は分かりましたか?」
「ええ。ウィルソン伯爵でしたわ」
以前クリスと謁見した時に打ち負かされていた礼院長を思い出す。根っからの教会派と言った様子の彼が、確かウィルソン伯爵だ。
やや恰幅が良く年齢の分かりにくい容貌をしていたけれど、対応からは経験不足が滲み出ていた。
「ウィルソン伯爵……。今代ではなく先代ですか?」
「いえ、残念ながら先々代の最後のお仕事でしたの。ですから、当時の詳細がほとんど残っておりませんでした。詳細を探し出すようにお願いをしてありますが、見つけるのは難しいかもしれませんわ」
また一つ、答え探しの道が遠い事が明らかになって肩を落とす。
周囲が暗くなった時間の城は、今日は国王が帰還したばかりという事もあって篝火がいつもよりも多く灯っている。
馬車寄せで馬車を降りると、三人の護衛騎士を伴って東棟にある国王陛下の謁見室に向かう。謁見室に入るのは、レナート王子としてクリス謁見した時以来になる。
デュリオ王子は、もう国王陛下に国政の引継ぎは済んだのだろうか。たった、三日の本来なら携わる事の決してなかった国政は上手くいっただろうか。
知らないうちに祈るように組んだ手を握りしめながら、広い東棟の廊下を見渡しながら進む。忙しく立ち働く文官の姿は数名見る事ができたけど、デュリオ王子に会う事はなかった。
謁見室に辿り着くと、既に物々しい警備がしかれていて、国王陛下が中で待っている事がすぐに分かった。糸でつられたように上へと気持ちを意識して背中を伸ばす。
「いってらっしゃいませ。大丈夫ですわ。多分、今回のお呼び出しは諸々の慰撫と、婚約の祝福だけだと思います。笑って頷いていれば終わります」
ジュリアの声に頷くと、謁見室のドアが私の来訪を告げる声と共にゆっくりと開いた。
訪問される側ではなく、訪問する側として謁見室へと足を踏み入れる。玉座には国王陛下が、その隣にはカミッラ正妃が待っていた。
現国王陛下。エドモンド・セラフィンは、先先代から続く旧国派を認める流れを汲む政を取っている。幼少時代から国内の多くを回り、自分の目で優秀な人材を選んできた活動的な人物だ。
私のお爺様が先々代国王と知己があり、早くからお父様はエドモンド国王陛下にお仕えし、今は右腕とされる専属文官の地位を与えられている。
無口な父だけど、国王陛下の話は何度も聞いている。
情熱的な実務家。でも、子供みたいに手がかかる時がある。お父様はそう国王陛下を楽しそうに評価していた。
玉座の前の一段引く場所で、ドレスの両端を摘まんでゆっくりと両膝を付く。
「ご無事のご帰還を、心よりお慶び申し上げます。元気なお姿を拝見でき、大変光栄にございます」
月並みの口上を述べると、碧い瞳を細めて片手を上げて立ち上がるように促される。もう一度深く頭を下げてから立ち上がると、国王陛下の方へと顔を向ける。
じっと見過ぎてはいけないけれど、間近に見るのは久しぶりでついつい視線がお顔にいってしまう。
彫刻の様な均整のとれた美し顔立ちに、引き込まれるような強い眼差しと意志を感じさせる真っ直ぐな眉。国王陛下の面差しは、デュリオ王子によく似ている。
「よく来たな。正妃カミッラから、明朝より『聖女』の役目の為に王都を出ると聞いた。その前に、会う事ができてうれしく思う。まず、其方の父であるリエトから手紙を預かってきた。納めると良い」
国王陛下の従者と思しき人物が、封蝋の施された手紙を私に届ける。受け取った封筒に書かれた父の文字に、たった数日しか離れていないのに懐かしさと寂しさがせり上がる。
宝物を抱くように抱きしめると、国王陛下が優しい声が聞こえた。
「詳細はまだ聞いていないが、不在の間の一件は聞き及んでいる。此度はリーリアには大変な心労を掛けたと理解している。この国の王として厳正な対応をとるつもりだ」
その言葉に慌てて顔を上げる。
厳正な対応の範囲にレナート王子は含まれてしまうのだろうか。
過去の事例なら大丈夫だけれど、『廃太子』を願い出るとカミッラ正妃は宣言した。目の端に映るカミッラ正妃はお面のような無表情を貫いていて、何を考えているか伺い知る事ができない。
対応の詳細を尋ねたいけれど、今の私が庇う言葉を口にできる立場ではない事は理解している。
カミッラ正妃が目の前にいるし、私はデュリオ王子の婚約者だし、一介の令嬢でしかない。歯がゆさに唇を引き結んで国王陛下を見上げると、憂いを帯びた眼差しと視線がぶつかる。
「父として、レナートの許しを請う事は許されるか?」
その言葉にしっかりと頷くと、カミッラ正妃の眼差しが非難の色を帯びて私を見る。言葉を許されるならば、私にだって言える事がある。
「勿論です。レナート王子に過去に頂いた時間は、掛け替えのないものでした。別々の道を行く事になった今も、感謝の気持ちを持ち、互いの幸せを願いたいと思っております」
「そうか。過去の慣例を踏襲する判断を取る場合は、辛い思いをした其方から見て甘い内容になる可能性がある。その言葉を聞けたのは幸いだ」
父としての顔を覗かせた国王陛下の柔らかな笑顔を、苛立たし気に肘おきを指先で叩く音が遮る。
「父である前に、王である事を私は望みます。どちらが王に相応しいか、選び直せる機会はそうはありません。リーリア、貴方にも婚約者としての最善を望みます。分かっておりますね?」
婚約者としてデュリオ王子が王になる事を望めと、真っ向からカミッラ正妃が私を見据える。
「私は、デュリオ王子が望む最善を支持している……」
つもりだと、言いたかった。でも、出立の時にレナート王子が私に示した言葉が、最後まで言葉を言わせなかった。
デュリオ王子の本当の望みは何なのだろう。無理矢理に手を伸ばせば入るものを、押しとどめている今が本当に最善だったのだろうか。
深い緑の瞳を細めて、カミッラ正妃が私を見下ろす。
「この数日のデュリオは、王に相応しい判断を見せました。いらぬと口にしながら、国王と同じ目で政を見ていた。魔力も上と分かっていて、埋もれさせるのか?」
「カミッラ、やめよ。王を決めるのは私で、リーリア・ディルーカに問う内容ではない」
ぴしゃりと跳ねのけた言葉に、カミッラ正妃が私からエドモンド国王陛下に視線を移す。
「どうかしら? 決めるのは王でも、決め手になるのは王ではないかもしれない」
封筒に押された封蝋をみて思わず顔を顰めると、素早くアランが伺う。
「リーリア様、どなたからの手紙でしょうか?」
「カミッラ正妃様からです。今、開けて内容を確認するのでお待ちいただけますか?」
何の用事もなくお手紙を出す方ではない。ソフィアの事を調べろと言ったのはカミッラ正妃だし、また何かを言いつけられる可能性は大いにある。
家令から受け取ったナイフで、封筒の上部を開くと中に入った紙が一枚ではないのが見えた。
取り出した手紙の文面を目で追う。先日の謁見の短い社交辞令の後に続く、助言と言う名の命令に頬が引き攣る。
「大丈夫ですか? 頬、すごい引き攣ってますよ?」
ライモンドがおずおずと言った調子で指摘する。その顔には一抹の不安があるのは、旧国派の騎士でカミッラ正妃の性分をよく知っているからだろう。
二枚目以降の私信ではない部分をアランに渡すと、視線を落とした顔が私と同じ様に引き攣る。
「これは……」
「はい。ソフィア様が行う事になっていた、『奇跡』の一部です。先日、ソフィア様がレナート王子と共に遠征にでられた為に、私に『聖女』として変わり行ってはとご助言がありました」
アランが読み終わったものを受け取って、ライモンドも天井を仰ぐ。
二人に渡した方は、ソフィア様が請け負う予定だった『奇跡』の行程表である。
『奇跡』の内容はいい。運良くというか、カミッラ正妃が精査したのか、いづれの願いも水に関する事になっている。規模もそこまで大きくないから、私の『魔術』でも十分対応できる。もっとも、護衛の二人は私の『奇跡』の事情は知らないから、この戸惑いに内容は関係ない。
一様に顔を顰めた理由は日程にある。
最初の対応日は明後日で、数か所の村を北へに向かう様に移動し、四日かけてシャンデラにほど近い村まで移動する計画が書かれている。
「これ、今からこっちに用意しろって事ですかね? もっと早く言って欲しいですよね」
日程書類を指で弾きながら、ライモンドがアランと私に同意を求めるような眼差しを向ける。
本当に。私もそう思う。でも、その辺りの事情も、私の持つ手紙で説明されていた。
「それは、元々遠征が決まるよりも、ずっと前にソフィア様の為に組まれたものなんです。私に『聖女』らしい仕事が必要と、カミッラ正妃様がしつこく……いえ、粘り強く会派に詰問……打診し、ようやくこの厳しい日程が提出されたそうです。是非、やり遂げて教会派に目に物見せて欲しいとお願いされてます……」
私が『聖女』と名乗る事に、まだ懐疑的な者が教会派中心に多いのは知っている。それは、あの処刑の日の一度しか、それらしいことをしていないからだ。『聖女』の称号を二分しない為に、当然教会派は『奇跡』に関する事案は譲りたくない。だから、伏せていたのだと思う。
今からでは準備の厳しい日程でも、カミッラ正妃から助言という形で示されれば、命令である事は二人も十分に理解している。アランが難しい顔で引き結んでいた口を開く。
「宿の手配と移動の経路はこのまま使えます。同行の兵は旧国派で組み直す必要がありますが、急な出立には慣れております。先日の遠征はデュリオ王子の可能性もあったので、二分隊程度なら旅装が整っている者も多いでしょう。明後日の早朝出立で、初日が少し駆け足になる行程でリーリア様の方がいかがですか?」
騎士団の準備は、間に合う答えが返ってくる。
カミッラ正妃からの手紙に目を落とす。
最後の村はシャンデラからほど近く、その日の宿泊もシャンデラになっている。
シャンデラではソフィアが巫女となり、イリーナが殺されている。まるで、それについて聞き及ぶ事を促すように、手紙の最後には、依頼が済めばシャンデラで羽を伸ばしても良いと書かれている。
「カミッラ正妃様のご助言を受け容れようと思います」
ナディル先生が過去を語ってくれたことで、レナート王子の『贋物』の意味が私には分からなくなった。でも、それで出来る事がなくなる訳じゃない。
レナート王子の『廃太子』の話から、ソフィアの過去をカミッラ正妃は調べるように勧めた。ソフィアの過去は、レナート王子の今後に関わる点があるという事だ。
当然だけど、カミッラ正妃の誘導はデュリオ王子を王にする為にある。乗って分かる事は、レナート王子の不利になる内容なのだろう。
でも、何も知らなければ離れていく気がするレナート王子を、理解する事が出来ないまま物事が進んでしまう。
強がりになるかもしれないけれど、得た情報をどう使うかは私の自由で、受け取って判断をするのは私自身だ。だから、どんな情報でもないよりもあった方がいい。
知らずに指先に力が入って、皺の寄ってしまった手紙に気づく。肩の力をゆっくりと抜くと、小さく息を吸ってアランとライモンドを見る。
「アランは騎士団との調整を至急お願いします。この機にシャンデラで巫女や『聖女』について学びたいので、大修道院へ訪問の申し入れと一日でいいので滞在延長を都合して下さい。ライモンドは旅に必要なものを家令に教えて頂けますか? 終わったら、ここにいないジュリアへの連絡もお願いします」
二人の護衛騎士が急な遠征への戸惑いを消して、主の願いを叶える騎士の顔で頷く。動き出した騎士の背を見送って、私も準備の為にドレスの袖をまくって気合を入れる。
故郷から王都に来た以来の大移動だ。準備も大変だし、規模を見定めて魔術の準備も、早速しておかなくてはいけない。
翌日は、早い時間から『聖女』としての旅の準備に追われる事になった。急な決定の為に騎士団から調整の伝令が度々訪れて、頻繁に中断するので用意が中々進まない。
昼過ぎになってて、漸く移動用の服を詰めたトランクを閉じる。もちろん、荷物はこれで終わりではない。
一つ大きなため息を吐いて、ベッドの上に広げた二つのドレスと合わせたアクセサリを見下ろす。
「どちらが『聖女』に見えると思う?」
旅の支度を手伝う侍女を振り返る。
ソフィアには『聖女』の服に相応しい巫女の服があるけれど、貴族の令嬢で巫女の経験のない私には当然ない。レナート王子として臨んだ『祭祀』での、ソフィアの真似て白のドレスを選んだけど、やっぱり私のドレスは社交用にしか見えない。神聖さなのか、清らかさのか、『聖女』としては何かが足りないのだ。
同じような感想を持っているのか、侍女もやや浮かない顔をして答えを口にしない。ほんの少しの沈黙の後に、おずおずと提案を侍女が口にする。
「リーリア様、アクセサリーを変えてみましょうか? 銀はレナート王子の髪色の印象がございますし、デュリオ王子の髪色に合わせて金にしてみると……」
侍女の言葉がどんどんと小さくなって消えた。どうしてかは分かる。
このドレスに似合う金のアクセサーは幾つか持っているけれど、どれを着けてもきっと舞踏会に赴く令嬢にしかならない。
ドレスを前に途方に暮れていると、ドアを叩いて入室を求める家令の声がした。許可すると大きな箱を幾つも抱えて、従僕と共に入って来る。
「それは、どうしたの?」
「たった今、カミッラ正妃様のお名前で届きました。後、こちらのお手紙もです」
箱と手紙をテーブルに乗せて、家令と従僕が部屋の外へ出る。どちらを先に空けるか迷った末に、箱の方を開ける事にした。
箱は貴族に人気のお店の品だから、今の状況を救う品が入ってい可能性がある。手紙の方は開いたら、また更なる問題で頭を悩ませる心配があるから後回しがいい。
「あっ……」
「まぁ!」
侍女と共に箱の中の白のドレスに声を上げる。
真っ白なドレスはしっとりとした滑らかなな生地で、縁取りには繊細で上品な金の刺繍が見て取れた。花ではなく蔦であるのが、普通のドレスと違って控えめに見える。
手に取って身体にあってて姿見の前に立つ。袖は長く肌があまり見えないようになっていて、首元も繊細レースによって覆われている。
腕や首筋の肌を見せる最近の流行とは、一風違うデザインが清廉で頑なな蕾を思わせる。
「着用されてはいかがですか?」
頷いて早速着用してみる。私もオーダーで利用する店を通しているから、サイズは贈り物なのにぴったりあう。侍女の手で他の箱も開いてもらうと、似たデザインの生成りのドレスと、それぞれに合わせた細金細工のアクセサリも出てきた。
「先ほどまでの私の服と比べて、ずっと『聖女』に見えます」
裾と翻してくるりとその場で周ってみせる。今度は侍女も会心の笑顔を浮かべて答えてくれる。
「とても素敵ですわ。靴はお持ちのもので、低めのデザインのないものをお持ちしますね」
いそいそと衣裳部屋に向かう侍女を見送って、手紙の方の封を開ける。
依頼を受ける事へのお褒めの言葉と共に、準備を心配する文章が最初に目に入る。さらに読み進めて、用意された品について書かれた部分を読んで目を瞬く。
このドレスは、カミッラ正妃が輿入れの時に持参した品を、私のサイズに直したものだった。袖を通してない品で、『聖女』に相応しいと思うから下さると書かれている。
言われて見れば、婚儀用のドレスに見えなくもない。一見して分からないのは、見慣れないデザインが多用されているからだ。変わった刺繍の入れ方も、首まで覆うレースの作りも、バルダートの古典衣装の型なのかもしれない。
遠くの旧国からこれ程の品を揃えて赴いたのに、旧国の意匠を理由に袖を通せなかったのなら切ない。でも、『聖女』の意匠として再び表に出す、なんだか逞しく強いカミッラ様らしい逞しい執念を感じる。
複雑な気分でドレスを見下ろして、二枚目の手紙に差し掛かろうとした時、侍女が戻ってきた。先にドレスを脱ぐ事にする。
「これは、凄く凄く丁重にしまってください。色々な想いが詰まっていそうなので、頂いたとはいえ汚したら後が大変怖そうな品です」
他に似合うドレスはないし、カミッラ正妃の贈り物を使用しないなんてできない。
元の服に着替えて、途中になった手紙を再び手に取る。
『聖女』として移動の際に、必ずデュリオ王子の宣伝をする事などカミッラ正妃らしい要求が並ぶ。全てに目を通した一番最後に、とんでもない事が書かれていた。
「国王陛下と? 戻られたら謁見? 今日?」
呟いた言葉に侍女が慌てて部屋を飛び出して、悲鳴のような声で家令を呼ぶ声が聞こえた。
夕方、お城からの陛下帰還の一報を受けて、向かう馬車の中でジュリアと向き合う。
「ごめんなさい! 準備が忙しいのに護衛騎士を呼んで!」
手紙の最後に、国王陛下が戻られたら謁見を希望していると書かれていた。今日は呼び出す予定はなかったのに、急遽護衛騎士の三人を午後は呼ぶ事になってしまった。
「あら、呼ばれない方が困りますわ。王家の命で私達はリーリア様に付いているんですの。お城に行くのに、その護衛騎士がいないなんて大問題ですわ」
確かにそうなのだけど、忙しいと分かっているから申し訳ない気持ちは収まらない。
正直、謁見は今日でなくともと、私は思う。国王陛下だって戻ったばかりで、きっと忙しい筈だ。大事な事はグレゴーリ公爵など、必要で十分な情報を持った人からなされた方が絶対に良い。
急な一大イベントに盛大なため息を一つつく。
「ジュリア、私のドレスにおかしなところはありませんか?」
明日の用意そっちのけで、選んだドレスを尋ねると、ジュリアが左腕のリボンに手を伸ばす。
「結構だと思いますわ。でも、このリボンが少しだけ捩じれております」
その言葉にレナート王子を思い出す。本当にレナート王子は私の事をよく見ていたと思う。
今はどの当たりを進んでいるだろうか。
もう、出立から三日が立つ。ラントまでのバルダート第二街道の道のりの半分は越えているのだろうか。
そっと馬車のカーテンを上げて、陽が落ちて薄暗くなった空を見る。西の空は遥向うはの地平線は、まるで燃えているかのように赤くみえた。
「そういえば、シュルテン修道院の以前の神官は分かりましたか?」
「ええ。ウィルソン伯爵でしたわ」
以前クリスと謁見した時に打ち負かされていた礼院長を思い出す。根っからの教会派と言った様子の彼が、確かウィルソン伯爵だ。
やや恰幅が良く年齢の分かりにくい容貌をしていたけれど、対応からは経験不足が滲み出ていた。
「ウィルソン伯爵……。今代ではなく先代ですか?」
「いえ、残念ながら先々代の最後のお仕事でしたの。ですから、当時の詳細がほとんど残っておりませんでした。詳細を探し出すようにお願いをしてありますが、見つけるのは難しいかもしれませんわ」
また一つ、答え探しの道が遠い事が明らかになって肩を落とす。
周囲が暗くなった時間の城は、今日は国王が帰還したばかりという事もあって篝火がいつもよりも多く灯っている。
馬車寄せで馬車を降りると、三人の護衛騎士を伴って東棟にある国王陛下の謁見室に向かう。謁見室に入るのは、レナート王子としてクリス謁見した時以来になる。
デュリオ王子は、もう国王陛下に国政の引継ぎは済んだのだろうか。たった、三日の本来なら携わる事の決してなかった国政は上手くいっただろうか。
知らないうちに祈るように組んだ手を握りしめながら、広い東棟の廊下を見渡しながら進む。忙しく立ち働く文官の姿は数名見る事ができたけど、デュリオ王子に会う事はなかった。
謁見室に辿り着くと、既に物々しい警備がしかれていて、国王陛下が中で待っている事がすぐに分かった。糸でつられたように上へと気持ちを意識して背中を伸ばす。
「いってらっしゃいませ。大丈夫ですわ。多分、今回のお呼び出しは諸々の慰撫と、婚約の祝福だけだと思います。笑って頷いていれば終わります」
ジュリアの声に頷くと、謁見室のドアが私の来訪を告げる声と共にゆっくりと開いた。
訪問される側ではなく、訪問する側として謁見室へと足を踏み入れる。玉座には国王陛下が、その隣にはカミッラ正妃が待っていた。
現国王陛下。エドモンド・セラフィンは、先先代から続く旧国派を認める流れを汲む政を取っている。幼少時代から国内の多くを回り、自分の目で優秀な人材を選んできた活動的な人物だ。
私のお爺様が先々代国王と知己があり、早くからお父様はエドモンド国王陛下にお仕えし、今は右腕とされる専属文官の地位を与えられている。
無口な父だけど、国王陛下の話は何度も聞いている。
情熱的な実務家。でも、子供みたいに手がかかる時がある。お父様はそう国王陛下を楽しそうに評価していた。
玉座の前の一段引く場所で、ドレスの両端を摘まんでゆっくりと両膝を付く。
「ご無事のご帰還を、心よりお慶び申し上げます。元気なお姿を拝見でき、大変光栄にございます」
月並みの口上を述べると、碧い瞳を細めて片手を上げて立ち上がるように促される。もう一度深く頭を下げてから立ち上がると、国王陛下の方へと顔を向ける。
じっと見過ぎてはいけないけれど、間近に見るのは久しぶりでついつい視線がお顔にいってしまう。
彫刻の様な均整のとれた美し顔立ちに、引き込まれるような強い眼差しと意志を感じさせる真っ直ぐな眉。国王陛下の面差しは、デュリオ王子によく似ている。
「よく来たな。正妃カミッラから、明朝より『聖女』の役目の為に王都を出ると聞いた。その前に、会う事ができてうれしく思う。まず、其方の父であるリエトから手紙を預かってきた。納めると良い」
国王陛下の従者と思しき人物が、封蝋の施された手紙を私に届ける。受け取った封筒に書かれた父の文字に、たった数日しか離れていないのに懐かしさと寂しさがせり上がる。
宝物を抱くように抱きしめると、国王陛下が優しい声が聞こえた。
「詳細はまだ聞いていないが、不在の間の一件は聞き及んでいる。此度はリーリアには大変な心労を掛けたと理解している。この国の王として厳正な対応をとるつもりだ」
その言葉に慌てて顔を上げる。
厳正な対応の範囲にレナート王子は含まれてしまうのだろうか。
過去の事例なら大丈夫だけれど、『廃太子』を願い出るとカミッラ正妃は宣言した。目の端に映るカミッラ正妃はお面のような無表情を貫いていて、何を考えているか伺い知る事ができない。
対応の詳細を尋ねたいけれど、今の私が庇う言葉を口にできる立場ではない事は理解している。
カミッラ正妃が目の前にいるし、私はデュリオ王子の婚約者だし、一介の令嬢でしかない。歯がゆさに唇を引き結んで国王陛下を見上げると、憂いを帯びた眼差しと視線がぶつかる。
「父として、レナートの許しを請う事は許されるか?」
その言葉にしっかりと頷くと、カミッラ正妃の眼差しが非難の色を帯びて私を見る。言葉を許されるならば、私にだって言える事がある。
「勿論です。レナート王子に過去に頂いた時間は、掛け替えのないものでした。別々の道を行く事になった今も、感謝の気持ちを持ち、互いの幸せを願いたいと思っております」
「そうか。過去の慣例を踏襲する判断を取る場合は、辛い思いをした其方から見て甘い内容になる可能性がある。その言葉を聞けたのは幸いだ」
父としての顔を覗かせた国王陛下の柔らかな笑顔を、苛立たし気に肘おきを指先で叩く音が遮る。
「父である前に、王である事を私は望みます。どちらが王に相応しいか、選び直せる機会はそうはありません。リーリア、貴方にも婚約者としての最善を望みます。分かっておりますね?」
婚約者としてデュリオ王子が王になる事を望めと、真っ向からカミッラ正妃が私を見据える。
「私は、デュリオ王子が望む最善を支持している……」
つもりだと、言いたかった。でも、出立の時にレナート王子が私に示した言葉が、最後まで言葉を言わせなかった。
デュリオ王子の本当の望みは何なのだろう。無理矢理に手を伸ばせば入るものを、押しとどめている今が本当に最善だったのだろうか。
深い緑の瞳を細めて、カミッラ正妃が私を見下ろす。
「この数日のデュリオは、王に相応しい判断を見せました。いらぬと口にしながら、国王と同じ目で政を見ていた。魔力も上と分かっていて、埋もれさせるのか?」
「カミッラ、やめよ。王を決めるのは私で、リーリア・ディルーカに問う内容ではない」
ぴしゃりと跳ねのけた言葉に、カミッラ正妃が私からエドモンド国王陛下に視線を移す。
「どうかしら? 決めるのは王でも、決め手になるのは王ではないかもしれない」
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