ガーディアンズ・ヘッド〜人類最後の瞬間は美しいですか?それとも、未来が見えますか?〜

安太郎

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第1話 おはよう 未来

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******************
5年前、空から地底から現れた異形の姿をした生き物。
それは、まるで映画の世界ような出来事だったが人類は異形の形をした生き物【魔獣】に生命を脅かされ三都市の内、最後の都市を残し崩壊。
人間の生存圏は縮小の一途を続けている。
最終防衛部隊であり、生存圏奪還部隊でもある部隊は存在するものの人口の低下により、全盛期の三分の一にまで人数は低下した。
******************

個別に割り当てられた寮の部屋の天井。
まだ、日が登り始めて間もない6時頃の微弱な太陽光がカーテンから溢れている。
そして、いつもの癖のように傍に置いてあるスマホを手に取った。

【《柏木 ヒロ》のステータス】
筋力 10
体力 10
気力 10
速度 10

俺のスマホに記されたゲームのような文字。
しかし、これが1年間の軍事演習を受け、軍から俺に対する評価。
周りの人がどのような評価になっているかは知らされていないが平均らしい。
めんどくさい世の中になったなと思いながらベッドから体を起こし、机と椅子、教本がゲッソリするほど敷き詰められた本棚が視界に入る。

「死なないためには必要か……。」

そんな事をぼやきつつ洗面所に行き、歯を磨き、ボサボサの黒髪を見て水に濡らしクシで寝癖を治すがどう頑張っても、治ってくれない癖毛は放置した。
そのあと、黒い制服に身を包み食堂に向おうと、廊下に出た。
ふとこれまでの1年間を思い返すと怒涛というか大変過ぎて、他人と関わる機会がほとんどなかったなと。
周りの人達も疲れた足取りで誰とも喋らず自室に戻って行った記憶がある。
しかし、今日からは小隊を組み、任務の遂行していかなくてはいけない。
誰とも話さないつまらない日とはおさらばだと少し浮ついた気持ちがあった。

ブーブー…

ポケットにあるスマホがバイブル音とともに震える。
今日1日のスケジュールという一文から始まり、下にファイルが添付してあった。
今日始めの予定である8時の入隊式という事だけを確認し、後は食べ終えた後に確認しようと制服のポケットにしまう。

みんなも起きてきたな……。

食堂に続く長い廊下を歩いているとガチャガチャとドアが開く音が周りから聞こえ始め、前にも後ろにも廊下中に人が溢れ出す。
広い作りとはいえ、他の廊下との合流地点では歩みが遅くなるものの訓練の賜物か綺麗に整列している。
そのおかげか特に問題もなく食券販売機の前に辿り着くことができた。

米かパンか……。
どっちにしよう……。

昨日食べた物と同じ物を買おうと思ったが
『昨日朝食何食ったっけ?』と考えるも思い出せない。
この年でボケたかと自分の脳みそに嫌気が差した。
ため息を吐き、後ろの人を待たせるのも嫌だったから日本人と言えば米だろと思い、和風朝食の発券ボタンを押す。

「これお願いします。」
「はいよ。」

食堂の人は毎日変わる。
今日は新しい1日のスタートだからおばちゃんの「はいよ。」が聞きたかったが残念ながらゴツい軍人のようなおじさんだった。
トレイを手に取り、米と味噌汁、鮭の塩焼きとキャベツ盛りが乗ったお皿を受け取り、ドレッシングをかけて席につく。
周りも続々と席についていくが話す事なく黙々と食べていた。
これは軍の規定で10分以内に完食しなければいけないから仕方がない。

しかし、それでもため息が出るのは止められない。
味わって食べたいのになと。
前後左右にも人が座り始めるが一言も話す事なく、各々急いで箸かスプーンを持って食べ始める。

「ご馳走様……、」

そう一言呟き、席を立つ。
返却口に食器を返し、食堂を後にした。
食券売り場の人混みも既に解消していて、廊下には同じ時に食事を終えた人が歩いている。

さて、この後はどうしようか……。

入隊式の会場に行くか、それとも自室で一息つくか……。
他の人と接触するには入隊式会場に向かった方がいいし、もし人がいたら友人の一人でも作れたらいいなとそう思った。
他にも廊下を歩く人達がいたがほとんどは自室に戻り、それ以外も会場ではなく何処か他の場所に姿を消していく。

「あー、誰もいない……。」

広い会場に一人。陳列したパイプ椅子。
スマホから着席する場所が知らされていて、自分の指定席に腰を下ろす。

「……ふぅ。さて、暇だ。」

軍から支給のスマホには残念ながらゲームといった娯楽機能はない。
ほとんど、連絡用ツールとGPSなどの位置情報としての機能しか持っていないつまらない物だ。

「おーーはーーーよう!!」

背後から何者かに背中を押された。
それと同時に高い音。少し子供染みた、女の人の声。
振り向くとそこに金色の髪を短く纏めた女性がそこにいた。
身長は160センチほどだろうか。
制服は同じ物を着ている。

「ん?私の顔に何かついてる?」

「いや、えっと……」
何を最初に言葉を発していいかわからず、口をまごつかせる。

「あー、ごめんね。
私の名前は未来。小川未来おがわ みらい!!」
「小川さん……。」

「ん~むず痒いな~。未来!
呼び捨て、はい!!」

「わ、わかった。
おはよう。……未来。」

とても、拙い声音でそう告げられた。

「その髪の色は染めた?それか外国の人か?」

「髪は純正。生まれも育ちも日本だと思う。
髪の色は金髪の遺伝子が入ってるんでしょ。綺麗だから気に入ってる。」

「適当だな。」

「自分のルーツなんてどうでもいいじゃん。気に入ってるなら尚更さ。」

綺麗に整えられた髪の毛を指先に絡め、元に戻す。癖作ことなく重力に引っ張られて元に戻った。

「羨ましいな。その髪。」
「ヒロは癖っ毛が酷いもんね。」
「水に濡らしても素直に真っ直ぐなってくれないほどにな。」

自分の髪の毛を触るとやはり跳ねているのがわかる。
普段は慣れで気にしなくなったがこういう式典では恥ずかしく仕方ない。

「まあ、その髪の毛もいいんじゃない。
ちゃんと目立ってわかりやすい!」

そう言い満面の笑みで向けられ、何処かむず痒く照れてしまい目線を別のところに向ける。

「アナログな腕時計……」

未来の右腕についている茶色ベルトの腕時計。不思議な事に10時50分で針が止まったままだ。

「気になる?」
「なんで、止まったままなのかなって。」

そう聞くと未来はどこか懐かしむような目線を時計に落とす。

「動かない理由は電池がないから。
で、それでもつけているのは大切な人に貰った物と同じ物だからです!
どう?カッコイイでしょ!!」

目の前にその腕時計を突き出される。
まじまじと見ると茶色のベルトと言い、丸い形をした時計からもどことなく渋さというかカッコよさを感じた。
男心というかイケオジになりたい夢から心が揺れる。

「うん。いい。とても。
でも、貰ったものと同じって?」

「貰った方は置いてきちゃってさ。
この寮、近くの時計屋さんに同じの売ってて即買いしちゃった。
電池切れてたけど……。
それでも、同じ物ってだけでも心が落ち着くんだ。」

「……そっか。」

なんて返事をしたらいいか分からずそんな言葉が溢れる。

「あ、みんなも着だしたみたい。」

扉から同じ制服を着た人達がぞろぞろと入場を始める。気づけば時刻は7時45分になっていた。
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