ガーディアンズ・ヘッド〜人類最後の瞬間は美しいですか?それとも、未来が見えますか?〜

安太郎

文字の大きさ
2 / 7

第2話 警報とSmile

しおりを挟む
******************
【ガーディアン・ヘッド】
残された人類最後の都市の最終防衛部隊であり、生存圏奪還部隊。
最後の人類を守る為に結成され、〈具現機〉と言われる極小数の人間が扱える武器を用いて戦う部隊。
******************

入隊式が始まった。
何処にでもあるような「君達を歓迎する」と言ったような言葉が綴られる。
瞼が重くなり、生理反応であくびが出そうになるのを全力で鼻で息を吸い、口でのあくびを押しとどめる。

隣で座っている未来もカクツイては眉間に皺を寄せ、足をつねって眠気を抑えている。

「あー、やっぱり無理……。」

ゆっくりと椅子の上から離脱する。
眠気を覚ますには一人でサボる場に移動するのが手っ取り早い。
トイレだ。個室のトイレ。
そこに移動だー、私!

「何処に行く?」
「お手洗い。女の子にそういうことは聞かないの。」

我慢しろと思ったが前方から強い視線を感じ、反射的に俺は姿勢を正す。

「そこ。何処に行く気だ?」

バレたー……。

司令官の鋭い声と目線が未来を射貫く。
偉くガタイのいい、これぞ軍人と呼べるおっさんが眼光を光らせる。
そして、何を思ったか低い体勢からスッと立ち上がり、敬礼のポーズを取る

「は!トイレです!」

「今か?」

「今です!」

「わかった、いいだろう。」

いいのかよ……!?

「は!ありがとうございます!」

未来はスタスタと会場の出入り口に向け、歩いていく。そして、司令は構わず今後の活動について話を続ける。

「私たちは基本四人の小隊で動く。
君達のデバイスに既に班のメンバー表が送られているはずだ。今確認してくれ。」

ポケットからデバイスを取り出し、一件のメール通知。そこに添付されてあるファイルを開くと確かにそこにメンバー表があった。

……!
班長・小川未来
柏木ヒロ

その上文二つに目が止まる。
嘘だろと再読み込みボタンを押すが何も変わらない。

班長、しょっぱなトイレを理由に式典出てったんですけど……。
目付けられるやつだ、これ。

チラッと時計を確認すると恐らく未来が出てってから10分以上経っている。
トイレ、食事は早急に済ませるのがこの軍のルールだ。
トイレは3分以内。それを大幅に超過する。
そこで、更に一通のメールが届く。
差出人は小川未来。
『変わった指令があったら後で教えてね。』
最後にスパムメールのようにハートマークやキラキラの羅列。

「……バックれやがった。」

終わった。この班終わりだ。
落ちこぼれか何かの掃き溜めだろ。この班。

「ちょーーーーーーい!!」

会場に甲高い声が響き渡る。
未来が大声で扉を開け放ち、壇上の司令官に詰め寄っていく。

「ちょっと!!大塚さん!!
え、なんで、私が班長何ですか!?
一番不適合者でしょ!!良い眼科が精神科紹介しましょうか!!」

「軍の病院以外ないだろ。」

「そ・う・で・す・け・ど!!
私は絶対にダメ!!無理無理。
向いてない。ないない。
変更の意義申立てを要求します!!」

ビー…ビー…!!
会場に危険を知らせるような音が鳴る。
僅かな砂嵐に巻き込まれたような音の後に女の人の声が響く。

『……移住区近辺に魔獣が発生。
多くはNo.00 エッグ・コア と思われます。
至急対処を行います!』

「よし、きた。」

マイクが未来の小さなその一言を拾う。
壇上にいる未来は緊急事態にも関わらず笑顔を浮かべていた。

「大塚さん!エッグ・コア私達がどうにかするんで異議申立てを受け入れてください。
却下は受け入れません!!」

そう言い壇上から飛び降り、パイプ椅子を掻き分けて俺に笑顔で迫ってくる。

「ほら、ヒロ!行くよ!!
異議申立ての為に手伝え!!
貴様も軍人なら戦えーーー!!
わっしょーーーい!!」

俺の腕を掴み、他の人たちを掻き分けていく。

「あ、指令はメールに送っといてー。」

そう最後に言い放ち会場の扉は勢いよく閉めた。
残された会場は静まり返っている。
そこで、耳にはめてあったイヤホンが何処かと繋がった音が鳴る。

『どうしますか?司令官?』

「いかせてやれ。敵は00なのだろ?
良い経験になる。奴らに指令と援護部隊を寄越してやれ。」

『了解しました。』

……

「お、メール来た。」

受け入れられるはずがないと思ったが予想に反して受理されたメールが届いた。
入隊式その日に初陣。
少し、身が硬くなるのを感じた。
そして、その時、今俺は死地に向かって足を踏み出しているのだと気がつく。

「大丈夫。訓練の記憶を使えば十分戦える。
相手は魔獣の中でも最弱のNo.00。
早めに戦場を経験できる良い機会だと思わない。」

「まあ、そうだけど。」

「安心して。ヒロは私が守ってあげる。」

俺の腕をどこまでも力強く引っ張る手に更に力が込められ、振り向き満面の笑みを向けられる。

「それは男の俺のセリフだ。」

「にひひひ。じゃあ、頼むよ。」

軍人の宿舎は移住区の中心に存在する。
緊急時、訓練兵も含めて適材適所に現場に素早く出す為だ。
今回の目的は移住区外周に出現した、エッグ・コアの撃退。
ここからそこまで離れた場所ではない。
鼓膜は既に少し離れた場所の銃撃音を捉えていた。
そして、その現場に駆けている今、10秒前より確かにその音は近づいている。

「エッグ・コアの倒し方は大丈夫そ?」
「教本とか訓練の記憶の中ではって所だ。」

エッグ・コアの見た目は全身は硬い外殻に覆われ、縦に長い球体に6本の足を生やした、真っ黒な姿をした魔獣。
全長は2メートル程。
敵の急所は球体の中心にある核。
攻撃方法は前足の二本の爪。
そして、球体に存在する鋭い歯を生やした口による捕食行動。
正攻法の倒し方は後ろ足から切り落として、核の破壊。
しかし、そんな教本での頭の中でのイメージで倒せるほど実践は甘くない。
戦い方の訓練は一通り受けたが実際に魔獣を前に戦えるかは話は別だ。

「具象化は大丈夫そ?」
「ああ、大丈夫だ。」

手に冷たい液体を持つ手触り。
それが具象化が発動する時の感覚だ。
そして、硬さを持ち確かな個体を手に取った。
その手には刃の長さ30センチ程しかない真っ黒な短剣。

「二刀……。」

「いいでしょ。
もう見た目だけで強そうでしょ!」

真っ黒で刃の長さ70センチほどの長い直剣と刃の長さ30センチ短い直剣を一振りずつ。

「ああ、強そうだ。」
「ふふん♪」

戦を前に嬉しそうな笑みを浮かべる。
でも、きっと俺の顔はひどく強張っているのだろうと感じる。
今、現場に向かって走っているこの足の動きを止めたいと思っている。

「緊張?」
「うん。」

同年代の異性にそれを気づかれて、少し情けない。それに緊張というより恐怖の感情の方が近いかもしれない。

「大丈夫!!
今から行く場所は命のやり取りじゃない。
私たちは今から自分の命を守るための経験をしに行くの。それで、終わったら報奨金を貰って美味しいもの食べる。
これが今日の私達二人のスケジュール。
ほら、行こ。ヒロ。」

未来は笑顔で一瞬振り向くと走るペースをあげる。手を引っ張るのではく、ついて来いと言わんばかりに。

カッコいいな……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

処理中です...