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小話
うわき・1
しおりを挟む「――それはつまりは浮気なんじゃないかしら?」
優雅なティータイム中に突如飛び出た不穏な単語。それを正面から喰らったフェリシアは丁度口にしていた紅茶をゴクリと飲み込んだ。
会話の主はこの茶会の主催者でもあるエイベル伯爵夫人だ。その隣に座るオルコット男爵夫人もうんうんと頷いている。
「彼に限って、とは思うけれど、ことこういう点において男性は信用ならないところがあるもの。その可能性はあると思うわフェリシア」
「え……えええ……」
二人からそう詰め寄られ、フェリシアは乾いた笑いを浮かべるしかない。これが二人して意地悪くフェリシアに言っているのであれば反論もするのだが、わりと本気で心配してくれているようなのであまり強くは言い返せない。そもそもからして切欠はフェリシアが作ってしまっているから尚更だ。
「男性からの贈り物は嬉しいし、そこは素直に喜んでいいと思うわ。それが愛しい旦那様なら余計に嬉しいわよね」
「でもそれがあまりにも頻繁なんでしょう? そうなってくると話は別よ」
「そ……そういうものです、か、ね?」
ある意味新婚ほやほやのフェリシアにはその辺りがよく分からない。最近やたらとグレンから贈り物をされ、それに対して嬉しいけれど申し訳なくもあり、お礼をしたいのだがどうしたらいいか、という相談から始まったはずなのに気付けばこのありさまだ。
「男性はね、やましいことがあると贈り物で誤魔化す習性があるのよ」
「そう。そうなのフェリシア。そうなのよ」
優雅であれども力強い二人の言葉にフェリシアは圧倒される。
「まあね、あの方ですものそんなことはないかもしれないけれど。でも、よ、フェリシア」
「いまだにグレン様にどうにか近付こうとする令嬢も少なくないって聞くわ。まったくもう、貴女という最愛の妻がいるのにね」
ひえ、と飛び出そうになった声をフェリシアは急ぎ紅茶で飲み込んだ。
社交界きっての噂好きの二人に目を付けられた、と思った時は正直生きた心地はしなかった。根掘り葉掘り聞かれた上に、それを広められてしまうのではなかろうかと。しかし実際会ってみればそうではなかった。たしかに噂好きだし根掘り葉掘り聞かれもしたが、フェリシアが言葉に詰まるとそれ以上は突っ込んではこないし、この二人が噂として話すのもどれも幸せな恋愛話ばかりで、フェリシアは逆にその話を聞くのを楽しみにしている。
「夫のことはもちろん愛しているわ。子供たちだって可愛いし大切よ。でもそれはそれとしてね、自分達ができなかった恋愛結婚にものすごく憧れているの」
エイベル伯爵夫人は初めて会った時にそうフェリシアに微笑みかけたものだ。
「だからね、貴女たち二人のお話を聞かせてもらえたらとても嬉しいわ」
オルコット男爵夫人も瞳をキラキラと輝かせながらそう言っていた。その後、この二人が政略結婚でありながら、とても仲睦まじい夫婦として社交界でも有名なのだとミッシェルから聞き、むしろそちらのお話が聞きたいのですがとフェリシアは思った。
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