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小話
護衛の騎士とお付きの侍女は王子のヤンデレ化を阻止したい・1
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※この話は別シリーズとして書いていた物なのでメインキャラがこれまでとは違いますが、脇として出てくる+この話を踏まえての話があるので同シリーズとして投稿しています。
◇◇◇◇◇
「監禁したい」
うららかな日差しの中、優雅にお茶を楽しんでいたそんな一時に、突然不穏な単語が飛び出した。
発生元はこの国の第二王子であるフレドリックからで、その対象は彼の向かい側でティーカップを手にしたまま固まっている婚約者、オリアーナ伯爵令嬢である。
ああまた始まった、と王子の専属護衛であるグレンと、オリアーナ付きの侍女のジュリアはグ、と気を引き締めた。
フレドリックは元からこうだったわけではない。むしろこれまでの彼は公明正大、弱きを助け強きを挫き、誰からも好かれる好青年でありそして貴き血筋の生まれ。第二王子と言えば、物語の中ではなにかと悪役サイドで描かれる事も多いが、彼は幼い時から兄であるアーヴィングを慕い、誰よりも兄の為に働くのだと学問も武術も熱心に取り組んだ。その努力は見事に実を結び、王太子である兄を支える柱の一つとなっている。
そうやってひたすら兄のため、ひいては国のため民のため、と生きてきたフレドリックはおよそ自分の欲と言う物を持たなかった。初めの頃こそ美徳と周囲は元より彼の両親も褒め称えていたけれど、あまりにも己に対して無欲すぎる生き様に段々とその認識は揺らいでくる。せめて伴侶は心の底から望む相手を、と両親に兄、普段であれば我こそはと娘を差し出してくるだろう貴族達でさえそう口を揃える、が、しかし。
「そうだな、我が国、我が民を支えてくれる女性を心の底から望んでいるよ」
などと眩しい笑顔でフレドリックは言い切るばかり。第二王子は国に尽くすために自分の心を無くしてしまったのだ、そう育ててしまったのだ、そうなるよう押し付けてしまったと、国王夫妻と王太子――つまりは彼の家族の落胆ぶりは凄まじい物だった。
そんな時、フレドリックにまさに青天の霹靂とでも言うべき事が起きる。
たまたま参加した夜会で出会った令嬢、オリアーナに一目惚れしたのだ。
この際身分差など問題では無い、無欲で生きてきたフレドリックが初めて欲を示したのだと、王家は諸手を挙げて彼女を第二王子の婚約者と指名した。これに驚いたのは当然名指しされたオリアーナである。
明るく朗らか、細かい事は気にせず何事も広い心で受け止めるなんとも人好きのするご令嬢、と評判であり、実際その通りの性格をしている彼女をもってしてもこればかりは二つ返事では受けられない。
これにまたフレドリックの好感度が上がる。ついでに国王夫妻と王太子、王宮に勤める侍女達の好感度まで上がった。第二王子と結婚! 富と権力! 贅沢三昧!! と荒ぶる婚約者候補の令嬢達とオリアーナ、比べるまでもなくどちらに仕えたいか答えは一つ。そんな侍女達の時には押して時には引いて、さざ波の様にフレドリックの魅力を伝え、王宮での生活も怖くないですよと万全の体制であると囁き続け、ついに彼女はフレドリックとの婚約に頷いた。
それからしばらくは大変微笑ましい、むしろ年若い男女の方がもう少しだけ仲睦まじい姿を見せるのでは? と思うほどに健全な付き合いをしてきた二人であったが、徐々にフレドリックが突拍子も無い事を口にするようになる。
まさに今し方の発言の様に。
◇◇◇◇◇
「監禁したい」
うららかな日差しの中、優雅にお茶を楽しんでいたそんな一時に、突然不穏な単語が飛び出した。
発生元はこの国の第二王子であるフレドリックからで、その対象は彼の向かい側でティーカップを手にしたまま固まっている婚約者、オリアーナ伯爵令嬢である。
ああまた始まった、と王子の専属護衛であるグレンと、オリアーナ付きの侍女のジュリアはグ、と気を引き締めた。
フレドリックは元からこうだったわけではない。むしろこれまでの彼は公明正大、弱きを助け強きを挫き、誰からも好かれる好青年でありそして貴き血筋の生まれ。第二王子と言えば、物語の中ではなにかと悪役サイドで描かれる事も多いが、彼は幼い時から兄であるアーヴィングを慕い、誰よりも兄の為に働くのだと学問も武術も熱心に取り組んだ。その努力は見事に実を結び、王太子である兄を支える柱の一つとなっている。
そうやってひたすら兄のため、ひいては国のため民のため、と生きてきたフレドリックはおよそ自分の欲と言う物を持たなかった。初めの頃こそ美徳と周囲は元より彼の両親も褒め称えていたけれど、あまりにも己に対して無欲すぎる生き様に段々とその認識は揺らいでくる。せめて伴侶は心の底から望む相手を、と両親に兄、普段であれば我こそはと娘を差し出してくるだろう貴族達でさえそう口を揃える、が、しかし。
「そうだな、我が国、我が民を支えてくれる女性を心の底から望んでいるよ」
などと眩しい笑顔でフレドリックは言い切るばかり。第二王子は国に尽くすために自分の心を無くしてしまったのだ、そう育ててしまったのだ、そうなるよう押し付けてしまったと、国王夫妻と王太子――つまりは彼の家族の落胆ぶりは凄まじい物だった。
そんな時、フレドリックにまさに青天の霹靂とでも言うべき事が起きる。
たまたま参加した夜会で出会った令嬢、オリアーナに一目惚れしたのだ。
この際身分差など問題では無い、無欲で生きてきたフレドリックが初めて欲を示したのだと、王家は諸手を挙げて彼女を第二王子の婚約者と指名した。これに驚いたのは当然名指しされたオリアーナである。
明るく朗らか、細かい事は気にせず何事も広い心で受け止めるなんとも人好きのするご令嬢、と評判であり、実際その通りの性格をしている彼女をもってしてもこればかりは二つ返事では受けられない。
これにまたフレドリックの好感度が上がる。ついでに国王夫妻と王太子、王宮に勤める侍女達の好感度まで上がった。第二王子と結婚! 富と権力! 贅沢三昧!! と荒ぶる婚約者候補の令嬢達とオリアーナ、比べるまでもなくどちらに仕えたいか答えは一つ。そんな侍女達の時には押して時には引いて、さざ波の様にフレドリックの魅力を伝え、王宮での生活も怖くないですよと万全の体制であると囁き続け、ついに彼女はフレドリックとの婚約に頷いた。
それからしばらくは大変微笑ましい、むしろ年若い男女の方がもう少しだけ仲睦まじい姿を見せるのでは? と思うほどに健全な付き合いをしてきた二人であったが、徐々にフレドリックが突拍子も無い事を口にするようになる。
まさに今し方の発言の様に。
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