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小話
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しおりを挟むグレンが動かなければフェリシアはずっとこのままだ。これが、ひたすら、ずっと、と思うだけでグレンは理性も意識も飛びそうになる。
彼女から動いてくれるなどそうそうある事では無い。なんとしても満喫したい。したくてたまらない。が、しかし、と思考は堂々巡りだ。
ふ、と鼻にかかった甘い吐息が耳を打つ。その音にグレンの腰が疼いた。ああもう、と己の理性の脆さ、そして技巧もなにも持たないのにひたすら求めてくれる彼女へ対する愛しさと、それに反する様に燃え上がる苛立ち。
どれだけ自分が彼女を欲しているか、溺れているのかを知らないから、だからこんな焦らす様な真似をひたすら続けられるのだという、惨い仕打ちに対する怒りにグレンは覚悟を決める。すなわち、自らも動いて後で彼女に叱られるという、なんとも情けない覚悟を。
「……っん!?」
舌先で唇を割り、ビクリと震えるフェリシアの腰と背を引き寄せたまま腔内を貪る。逃げる様に動く舌を絡め取り、軽く歯を立ててジュ、と吸い付けばさらにフェリシアは身体を震わせた。懸命に両腕をグレンの胸元に押し当てて身を離そうとするが、そんなか細い力では有って無きが如しの抵抗だ。
彼女の好きな箇所を舌先で擽っていれば徐々に力が抜けていく。突っぱねようとしていた腕も、再びグレンの首の後ろに回りフェリシアも舌を絡め始め、その事に彼女の許しを得た様でグレンは口付けたまま緩やかに口角を上げ――そして異変に気が付いた。
ほのかに広がる酒精の味。これはまさか、とより一層舌を差し込みフェリシアの腔内をまんべんなく味わうと、疑惑は確信に変わりグレンはゆっくりと唇を離した。
「……ぁ、ふ……」
「フェリシア……」
赤く染まった頬と潤んだ瞳。見つめてくる彼女の表情はとろりと蕩けており、完全に快楽に目覚め、酔っている据え膳の姿、であるのだが。
「……そういえば……いつもより食事の時に飲んでいたね……」
「……寝室で待っているあいだにも……すこし……」
飲みました、とフェリシアはグレンの胸に額を預けてそう呟く。言われてグレンは視線を動かした。サイドテーブルにグラスが一つ。そして僅かに残る赤い色に、グレンはフェリシアを抱き締めたまま天を仰いだ。これからの展開が容易に想像できて辛い。
フェリシアの身体から力がどんどんと抜けていく。それに伴いグレンに掛かる重みは増え、予想通りの展開にグレンは乾いた笑いを浮かべる。
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