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小話
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しおりを挟む「フェリシア……眠い?」
「……だいじょう、ぶ……です……」
一向に大丈夫そうではない。グレンはあやす様にフェリシアの背をポンポンと叩いた。
「だめです……グレンさま……ねかしつけようとしてる……」
「うん、寝ようフェリシア。君はよく頑張ったよ」
「まだぁ……たりてませんんん……」
グレンさまを、きもちよく、できていません――そう訴えるフェリシアを、グレンは本格的に寝かしつける事に決める。抱き締めたままベッドに横になり、両足も絡めて身動きを封じた。若干、腰が引けているのは仕方がない。半分以上夢心地とはいえ、不様に反応しているのを押し付けるのは恥ずかしい。
「いやあ……ねません、ってば」
「俺のためと思うなら寝てくれると嬉しい」
粉々に砕け散った、はずの理性の鎖は徐々に復活しつつある。それでもボロボロであるのは変わりないので、いつまた砕けるか。そうなった時に自分は我慢ができるかどうか、グレンはそれが不安でならない。
いくら夫婦になっているとはいえ。仕掛けてきたのが彼女からだとはいえ。続きを求めているからとはいえ――それでも、眠りに落ちてしまった相手を抱く様な事が許されるわけが無い。
なんとか、それだけは避けねばならぬ道であり、そしてその為には彼女を一刻も早く夢の世界に追いやるのが最善の方法である。
我ながら情けないという自覚はあるが、だからこそグレンはそうする事を躊躇せずに実行に移す。最早開いているのか閉じているのか分からないフェリシアの目元に、軽く口付けを落としていく。嫌がる様に眉間に皺を寄せるが、もう顔を動かす気力も無いのだろう、フェリシアはされるがままだ。そうやって数回繰り返していれば、程なくして健やかな寝息が聞こえ始める。
グレンはゆっくりと身を起こした。すうすうと寝息を立てる愛しい妻の寝顔をしばし堪能し、そして静かにベッドから降りる。
はあ、と落ちる溜め息はどこまでも重い。しかしこのままでは眠るにも眠れず、グレンは身の内に籠もる熱を冷ますべく浴室へと向かった。
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