15 / 46
2章『転生×オメガ=当て馬になる』
03※
しおりを挟むそりゃそうだ。だって在昌さんには桃ちゃんが居るのだもの。分かっていた事だ。何度も繰り返した事実、だ。
きっと、在昌さんは桃ちゃんと付き合うのだろう。例え今、在昌さんに桃ちゃんへと矢印が向いていなくても、毎日のように傍に居るのなら人の気持ちはたやすく変わるだろう。
私とは何もかも違う、圧倒的なオメガ。
分かっていた事なのに。覚悟していた事なのに。好き、という気持ちを気のせいだと思うことを決めたのに。
現実はこんなにもうまくいかない。
まるで在昌さんと桃ちゃんの関係を認めたくないと言うかのように、胸が苦しくなる。
当て馬。
その通り、なのに。
「…真緒ちゃん」
「………」
有沢先生が私の肩に手を置く。
――その時、だった。
「――ぁっ!?」
有沢先生が肩に手を置いたところから電流が身体中を駆け巡る。それは、下半身へと向かっていき、自身でもわかる程の情欲が私を襲った。
溢れた愛液は壊れてしまった蛇口のように太腿までも濡らしていく。
「ぁ…あ……」
有沢先生に縋りながら、床へと崩れ落ちる私を真っ赤な顔をした有沢先生が私を見下ろしていて。
欲しい。
欲しい。
埋め込んで、欲しい。
そうすれば、この熱が収まると思った。
「有沢、せんせぇ…っ」
雌が縋る声だった。くらくらする。有沢先生のアルファの香りが余計に私の頭を犯していった。
「真緒、ちゃ…」
「苦しぃ、です…お願い…助けて、せんせぇ…っ…」
床が愛液で濡れていく。ああ、まるでエッチな本みたいだな、と頭の片隅で思いながら、微かに腰を揺らせば、迸る快楽。
「ぁあ…!」
気持ち良い。
気持ち良い!
無我夢中で有沢先生の足にしがみ付きながら、腰を揺らす。その度にぬちぬちと音を鳴らしながら得られる快楽は、在昌さんに与えられた快楽には程遠くて。
在昌さん。
在昌さん。
「ぁ、りまさ…さ、ぁ…お願い、…っ……ぅ…」
頭がぐちゃぐちゃだった。目の前に居るのは有沢先生なのに、目を瞑れば確かに在昌さんが居て。
「真緒ちゃん、ごめんね」
誰かが私の首を撫でる。
ひんやりとした掌が気持ち良い。でも、この掌は私の知っているあの掌では無かった。
「ふ…ん、ぅ…」
涙が溢れる。身体の苦しさと胸の苦しさで張り裂けてしまいそう。
「在昌さ、……っ?」
チクリ、と首筋に何かが刺さった。それが注射針だと理解した時には私の意識は途切れ始めていて。
「危な…っ」
息を乱した有沢先生が汗を拭いながら私を抱きかかえる姿をぼやけた視界に映しながら、私の意識は闇に包まれた。
*****
――危なかった。
本気で危なかった。まさかいきなりヒートするとは思ってもみなかった。多分発情期では無いだろう。
真緒ちゃんの身体をベッドに横たえながら、顔色を覗き込めば真っ赤だった頬が元通りの色に戻っていく。
もしも発情期なら、下手したらこの強力な抑制剤ですら効かない。咄嗟に打ってしまったが、顔色と脈を診たところ大丈夫だろう。
「それにしても…」
久々に強烈な匂いだった。
恐らく在昌の事を想っていたのだろう。オメガの匂いは持ち主の状況で匂いが僅かに変わる。勿論、普通のアルファだと気付かないだろう。俺のような医者や、特別な存在である番ならわかる。
アルファの匂いに慣れた俺ですらクラッときた。もしも抑制剤が近くになければ、あのまま無我夢中で抱いていたかも知れない。
「…在昌に殺されたくないしー」
独りごちながら、俺は電話を取り真緒ちゃんの主へと電話を掛ける。在昌は仕事中だ。出ない可能性もあるが、それは杞憂に終わった。
『…佑司か?珍しいな。真緒ちゃんに何かあったのか?』
挨拶も無しに真緒ちゃんの心配かい。本当、なんだかねぇ。
「んー、そう。何かあった。真緒ちゃんが倒れたんだけど」
『今すぐ行く』
即答して、こっちの話を聞く前に電話を切りやがった。特に問題はなさそうだから大丈夫、と言おうとしたのだけれど、ね。
「本当…おもろー」
在昌とは小学生の時からずっと一緒で、在昌の性格をわかりきっているつもりだけれど、真緒ちゃんに接する在昌は初めてみる。
在昌はモテる。アルファ抜きにしても凄くモテるのだ。それも、全バース性にだ。羨ましいを越えて、可哀想になってくる程だ。まぁ、中には僻んでいる奴もいるみたいだけれどね。
そして、奴は非常に冷たい。何度、男女達が泣いている所をみた事か。…気まぐれで付き合ったとしても、長く続かない。
理由は、愛されているかわからない。だそうだ。元恋人達は泣きながら在昌にそういう。
そして在昌は表情一つ変えずに、そう。で終わるのだ。
そんな在昌が…。
正直、在昌が心配だった。確かに在昌にはトラウマがある。けれど、医者としても親友としてもそれを乗り越えて幸せになってほしかった。
そんな在昌がニヤけながらオメガと一緒に居るのだ。ずっと傍で見ていた俺としては親の気持ちだ。
けれど、この真緒ちゃんは鈍感なのか、気付かない。寧ろ、こんな私が…、と否定しているようにも見える。
確かに在昌を知らない者からしたらそう思ってしまうのも仕方がない。ましてや真緒ちゃんは異例の存在だ。
彼女が言う、おめみつとやらの在昌の存在もあるのだろう。
おめみつとやらの在昌は優しくて、何でも出来る桃ちゃんとやらにぞっこんなスパダリ溺愛在昌様らしい。
正直、何を言っているか早口過ぎて全部は分からなかったが、何となく理解はした。
そんな在昌と、この現実の在昌。
全然違うのだ。だが、真緒ちゃんにとって在昌はおめみつの在昌なのだ。
「うーん…」
正直、うさんくさい話なのかもしれない。けれど、俺は信じた。
真緒ちゃんが嘘を吐いているとは思えないし、俺には知らない世界が沢山あるしね。
取りあえずは静観しておこう。それでもくっつかないのなら――…
9
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
侯爵令嬢ソフィアの結婚
今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない
そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる
美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ
その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた
結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて…
表紙はかなさんです✨
ありがとうございます😊
2024.07.05
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる