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2章『転生×オメガ=当て馬になる』

04※

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目が覚めるとそこは知らない世界だった――…訳ではないが、ぱっちりと目が覚めた私は見知らぬ天井を見つめていた。頭が少しだけ痛い。

見知らぬ天井なのだが、此処がどこなのか私には分かっていた。間違い無く在昌さんのベッドだろう。微かに感じる残り香が在昌さんだと語っている。

「~~~!!」

と言う事は、ここで在昌さんが寝ている。そして色々としている訳だ。なんだか恐れ多くって、私は布団から逃げ出した。だが、私の身体は上手く動かなくて床へと頭からダイヴしてしまった。

ゴン!という音と共に私の頭の中がぐわんぐわんと回る。…顔からじゃなくて良かった。

私が頭を抱えているところ、隣のリビングからパタパタと走ってくる音がし、在昌さんが部屋に飛び込んできた。

「ちょ、真緒ちゃん大丈夫!?」
「えへ、びっくりして転げ落ちちゃいました」

何となくぶりっ子しながら在昌さんに大丈夫ですと伝えるが、全く信用していないようで、私の後頭部を掴み触診を始めている。

「たんこぶは無いみたいだね」
「はい、頭固いので」

本当の事だ。寧ろ床が凹んでいないか心配だった。チラリと床を見たがお互い無傷のようで胸を撫で下ろした。

「もう少し寝てなよ」
「いえ、もう大丈夫なので」
「だぁめ。真緒ちゃん、倒れたんだよ?分かってる?本当心配したんだからね。佑司から電話来た時心臓止まるかと思ったよ」

床に座っていた私の身体をひょいと抱きかかえ、慎重にベッドへと戻された。…此処に来てから何度目のお姫様抱っこだろうか。

ここで無理をすると余計に在昌さんを心配させると思った私は、甘える事にした。

「わざわざお仕事中に来てくれたんですか…?」
「ん、今日は大事な会議無かったからね。気にしないで」

私の頬を優しく撫でながら、微笑む在昌さんに一縷の不穏な雰囲気を感じた。

「在昌さん…?」
「何があったの、かな」

在昌さんの問いにクエスチョンマークを浮かべたが、暫くして何に対して在昌さんは質問を投げかけたのか思い至った。

そうだ、私は病院で倒れたのだった。でも、何故だったろうか。

確か、有沢先生と話していて…。それから……。

「!!!!!!」

そうだ。私はいきなり欲望が爆発したのだった。在昌さんの事を考えてたら胸が苦しくなって、それで…何故だか暴走してしまったのだ。
残念ながら鮮明に覚えている。当時は意識も朧気だった癖に、冷静になったらばっちりと覚えていたのだ。

有沢先生の足に縋り付いた事も、床を愛液で塗らしまくった事も、床ニーしていた事も、有沢先生が在昌さんに見えていた事も――…全て、だ。

ウワァァァァ!!アアアアアア!!もう病院に行けない!有沢先生の顔が見られない!!

うわぁっと私が頭を抱えていたら、のしり、と在昌さんがベッドに上がり私の両手を掴んだ。

…怒ってる。間違い無く怒ってる。

なんで?何故?ホワイ?

「在昌、さん…?」
「ナニ、があったのかな?」

ナニって言ったよね、このイケメン様は。

…言える訳が無い。
在昌さんの事を想っていたら発情して、最初に起きた在昌さんとの情事を思い出しながら床ニーしたうえに、有沢先生を在昌さんに見えて縋った。と説明しろと?

いやいやいや、無理でしょう。

「いやぁ~、それが覚えていなくてぇ…」
「真緒ちゃんは嘘を吐くとき目が泳ぐね」
「ファッ!?」

わかりやすいね、と言いながら私を見下ろしたままの在昌さん。両手を固定されて押し倒されたようなシチュエーションに私は冷静を保てない。保てる訳がない。

「…良い匂い。まだ、フェロモンが出てるんじゃない、かな」

顔を首筋に近付け、スンスンと私の体臭を嗅ぐ在昌さん。微かに掛かる吐息が私の身体を震わせた。

「在昌、さ…」

恐らく在昌さんは分かっている。私に何が起きたのか。けれど、在昌さんは私に言わせようとしているのか、何も言葉にしない。

「真緒ちゃん」
「在昌さん…」
「言って」

強い言葉だった。逆らう事が出来ない、声。
まるで主従関係のように、主の、ように。

「私――…」

震えた声が言葉を紡ぐ。ゆっくりと、怯えるように、ひっそりと。

「――ごめんな、さい…っ…」

嫌わないで。だなんて言える立場では無い事は分かっている。
それ以前の存在なのだから。

気持ち悪いよね。好きでもない女にそんな風に自分を使われて。ましてや友人である有沢先生に迷惑を掛けたのだから。

「――良かった」
「…え?」

怒鳴られる、と思った。けれど、在昌さんは真逆の反応を示し、私の身体に体重を預けて被さった。

「ぅぐ」
「てっきり、佑司としてしまったのかなって思って、恥ずかしいけど…怒りでどうにかなりそうだった」

在昌さんは私の首筋に顔を埋めたまま、小さな声で有沢先生のところへ行った時の事を教えてくれた。

「佑司から電話が来て、急いで行ったらぐったりして寝ている君と、少しだけ乱れた佑司がいてさ。極めつけにあの…君のフェロモン。気が狂いそうになったよ。けど、佑司は君の事を何も言わずに、俺に薬の事を説教し始めてさ」
「あ!」
「ん!?」

耳元で大きく叫んだ私の声に身体をビクつかせる在昌さん。

そうだ。
在昌さんはオーバードーズをしているのだ!自分の痴態の事で頭いっぱいになっていて抜けていた。

「在昌さん!駄目です!」
「ん?ん?…あぁ、佑司から聞いたんだ」

私の突拍子の無い言葉に理解したようで、身体を少し起こし、私の顔を再び覗き込んだ。

「在昌、さん…あの…近く……」
「俺は間違いなく、君を抱くよ」
「…ン!?」

そのまま私の首筋に顔を埋めたと思えば、在昌さんの舌が私の首筋を舐める。いきなりの行動に変な声が出てしまった。

「ぐちゃぐちゃに、君を犯す。君が嫌だって泣いても、何度も君のナカに出すよ」

処理能力が追いつかない。
言われている事は分かるのだけれど、理解が出来ないのだ。

「君が拒んでも、この細い首に噛みついちゃうだろうね、俺は」
「ひぅ…!」

真っ赤になった私の耳朶を口に含み、チロチロと舌で弄ぶ。駄目だ、このままだと、溢れてしまう。

「…あ、甘い匂いしてきた、ね」
「ぁりまささん、…ゃ、あ!」

在昌さんの身体から強い匂いがする。甘くて、少しだけ怖い…初めて感じたアルファの香りだった。

息を荒くした在昌さんが、私の唇に噛みつく。強引に舌を捻じ込み、縮こまった私の舌を絡めて、離さない。
ぐじゅぐじゅと水音が響き渡る。その度に目眩がする程の快楽と今までに無い程の情欲に、私は在昌さんの首に腕を回した。


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