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第七話
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ミアはその後、コツコツと情報収集をし、王宮内の事情を知ることとなった。
まず、側妃の男爵令嬢の名はミリアリスといい、ミリアリアと名がとても似ていた。そのせいか、プレスコット王国のミリアリア姫の名はミリアリスだか、ミリアリアだか、と曖昧になっていた。
そして、その肝心のミリアリスだが、彼女は何も知らなかった。
プレスコット王国の姫君が嫁いできたことも、自分と名が似ている事も、取り違えられている事も何も……
これは、彼女だけの責任ではない。彼女につけられた侍女や使用人たちが彼女の耳にそれが入らない様にしているのだ。これはつまり、皇帝の意思である。皇帝は、ミリアリアとミリアリスの立場を入れ替えたのだ。
「なにそれヤバイ」
「そうなのよ、ヤバイのよ」
あからさまに顔を歪めるのは、スカーレットだ。
あの魔女協会で顔を合わせてから、既に一か月の時が過ぎている。彼女もまたプレスコット王国とブレスト皇国のことを気にして、情報を教えて欲しいとミアの元を訪ねて来たのだ。
夕食を終え、手土産兼報酬代わりのお高いワインを飲む。ミアは折角美味しいワインなのに、こんな話題で残念だと思いつつ、告げる。
「しかも、皇妃であるヴィヴィアン妃を軟禁してるのよ」
「はあ⁉」
ぎょっとして目を剥くスカーレットに、驚くよね、分かる、とミアは頷く。
「ちょっと待ってよ、それって許されるの? 圧倒的な国力の差がある国から嫁いで来たならまだしも、拮抗してる国からの輿入れじゃない。冷遇したらヤバイなんて、考えなくても分かるわよ?」
皇帝の頭に脳みそは入っているのか、と呟くスカーレットに、入ってないじゃないかな、とミアは言う。
「しかも、実の娘まで軟禁して、冷遇してるの。かろうじて皇帝の息のかかった学問の教師はいるけど、皇妃が依頼したマナーの教師は辞めさせられてたわ。今は皇妃がマナーを教えてるみたい。あれはどこかで恥をかかせて、こんな恥ずかしい娘は外に出せないだのなんだの言って何処かに飛ばすかなんなりしたいんでしょうね」
「嘘でしょ? そんなことってある……?」
「ありそうよ。 ヴィヴィアン皇妃が強引に皇帝の執務室に行って意見したのよ。このままじゃ娘がいつか恥をかく、教師をつけてくれ、って。けどお前が教えればいいだろう、ロスコー王国一の淑女たるお前が教えるなら、娘も素晴らしい淑女に成長する筈だ、とか言ってね。軟禁されているとはいえ、皇妃の仕事があるヴィヴィアン皇妃にそんな時間は無いわよ。時間が許す限りは教えているみたいだけど、足りないみたいね」
「うわぁ……」
ドン引きしているスカーレットに、ミアは提案する。
「ねえ、ちょっと一緒に王宮内を見てみない? 皇帝はヤバイ頭をしてるのは分かるんだけど、いまいちどういう計画を思い描いているのか分からないのよね」
「まあ、私達も見張ることはできても、口に出してくれなきゃ頭の中までは分からないものね」
明らかにヤバイことをやらかしている皇帝が、どういう思考回路をしているのか理解できないので、彼が計画しているだろうことが想像できないのだ。
「この時間だと皇帝の仕事も終わってて、後はミリアリス妃の所に行くか、皇帝に絶対服従してるヤバイ部下に指示出しするかなのよね」
「絶対服従のヤバイ部下?」
命令に疑問を抱かず遂行する奴、と言うと、ああ、特殊な育ち方した奴……、とスカーレットは納得するように呟いた。
そして、ほろ酔いの魔女達は遠見の水晶を魔法で呼び寄せ、それを覗き込んだ。
まず、側妃の男爵令嬢の名はミリアリスといい、ミリアリアと名がとても似ていた。そのせいか、プレスコット王国のミリアリア姫の名はミリアリスだか、ミリアリアだか、と曖昧になっていた。
そして、その肝心のミリアリスだが、彼女は何も知らなかった。
プレスコット王国の姫君が嫁いできたことも、自分と名が似ている事も、取り違えられている事も何も……
これは、彼女だけの責任ではない。彼女につけられた侍女や使用人たちが彼女の耳にそれが入らない様にしているのだ。これはつまり、皇帝の意思である。皇帝は、ミリアリアとミリアリスの立場を入れ替えたのだ。
「なにそれヤバイ」
「そうなのよ、ヤバイのよ」
あからさまに顔を歪めるのは、スカーレットだ。
あの魔女協会で顔を合わせてから、既に一か月の時が過ぎている。彼女もまたプレスコット王国とブレスト皇国のことを気にして、情報を教えて欲しいとミアの元を訪ねて来たのだ。
夕食を終え、手土産兼報酬代わりのお高いワインを飲む。ミアは折角美味しいワインなのに、こんな話題で残念だと思いつつ、告げる。
「しかも、皇妃であるヴィヴィアン妃を軟禁してるのよ」
「はあ⁉」
ぎょっとして目を剥くスカーレットに、驚くよね、分かる、とミアは頷く。
「ちょっと待ってよ、それって許されるの? 圧倒的な国力の差がある国から嫁いで来たならまだしも、拮抗してる国からの輿入れじゃない。冷遇したらヤバイなんて、考えなくても分かるわよ?」
皇帝の頭に脳みそは入っているのか、と呟くスカーレットに、入ってないじゃないかな、とミアは言う。
「しかも、実の娘まで軟禁して、冷遇してるの。かろうじて皇帝の息のかかった学問の教師はいるけど、皇妃が依頼したマナーの教師は辞めさせられてたわ。今は皇妃がマナーを教えてるみたい。あれはどこかで恥をかかせて、こんな恥ずかしい娘は外に出せないだのなんだの言って何処かに飛ばすかなんなりしたいんでしょうね」
「嘘でしょ? そんなことってある……?」
「ありそうよ。 ヴィヴィアン皇妃が強引に皇帝の執務室に行って意見したのよ。このままじゃ娘がいつか恥をかく、教師をつけてくれ、って。けどお前が教えればいいだろう、ロスコー王国一の淑女たるお前が教えるなら、娘も素晴らしい淑女に成長する筈だ、とか言ってね。軟禁されているとはいえ、皇妃の仕事があるヴィヴィアン皇妃にそんな時間は無いわよ。時間が許す限りは教えているみたいだけど、足りないみたいね」
「うわぁ……」
ドン引きしているスカーレットに、ミアは提案する。
「ねえ、ちょっと一緒に王宮内を見てみない? 皇帝はヤバイ頭をしてるのは分かるんだけど、いまいちどういう計画を思い描いているのか分からないのよね」
「まあ、私達も見張ることはできても、口に出してくれなきゃ頭の中までは分からないものね」
明らかにヤバイことをやらかしている皇帝が、どういう思考回路をしているのか理解できないので、彼が計画しているだろうことが想像できないのだ。
「この時間だと皇帝の仕事も終わってて、後はミリアリス妃の所に行くか、皇帝に絶対服従してるヤバイ部下に指示出しするかなのよね」
「絶対服従のヤバイ部下?」
命令に疑問を抱かず遂行する奴、と言うと、ああ、特殊な育ち方した奴……、とスカーレットは納得するように呟いた。
そして、ほろ酔いの魔女達は遠見の水晶を魔法で呼び寄せ、それを覗き込んだ。
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