誰も残らなかった物語

悠十

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プロローグ

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 空はあいにくの曇天。
 広場には悪趣味な民衆が集まり、高台から見下ろす男は、つい最近まで婚約者だったこの国の王太子だ。
 王太子は無表情だが、長い付き合いの元婚約者の女、アリシアには彼が高揚しているのが分かった。
 彼の周りには高位貴族の子弟が侍り、ある者はアリシアを蔑むように、またある者は下品な笑顔を湛えて此方を見ていた。

 そんな彼等を見て、アリシアは思う。
 嗚呼、可哀そうに、と。









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