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会場に入って全体を見渡す。
生徒数は3学年で優秀な平民も入れて300人程かな?・・・この中にがいるはずなんだけど、どの子なのか分からない。
まあ、今は分からなくても待っていればあっちから接触してくるでしょう。
それにしても男女関係なくチラチラと見られているのは何で?
気持ち悪いんだけど・・・
大体この学院に入るまで私はお茶会にすら参加したことがない。

ああ!だからか!!

フィオナの記憶には何度も人生を繰り返しているから貴族名鑑に載っている貴族の家名、当主、一族の赤子からお年寄りまで記憶にある。
それに、見た事のある顔ぶれだ。

だけど、この中にフォーライト公爵家に末娘がいる情報は出回っていても、私の顔を知っている人はいない。

その見知らぬ令嬢が一目置かれるフォーライト公爵家の2人といるから皆んなも不思議なんだね!

なるほど、なるほど。

おっと!学院長の話しがいつの間にか終わっていたようね。
次に在校生代表で挨拶をしたのは生徒会長の第二王子。
うん、遠目で顔はよく分からないけど雰囲気はキラッキラでまさにザ・王子様って感じだね。
新入生代表は大人しくて真面目そうな普通の男子生徒だった。
思っていたよりも早く入学式が終わり、教室へ移動する。
私のクラスはエル姉様とアル兄様が案内してくれた。

よし!ここからは気を引き締めないとね!





~レオニール回想~



やはり黒髪も似合っていたが光を反射するような銀髪の方がフィオナ嬢には似合っているな。

生徒会室から見下ろせば、無邪気な笑顔で兄妹仲良く入学式会場に向かっている。



約1か月前、俺たち生徒会のメンバー5人で王都から1番近くにあるダンジョンに潜った。
学院でも上位の実力があると自負する俺たちは誰が言い出したか"力試しに行こうぜ""好き勝手自由に過ごせるのも学生の間だけだぜ"の言葉に乗った。・・・乗ってしまった。


装備は各自で用意し、その他は大商家の子息であるアンバーがマジックボックスの中にポーションやテント、寝袋、1週間は潜れるだけの5人分の食事など準備を万端にして潜った。
もちろん全員、変装済みだ。
パーティーメンバーはそれぞれ何度かダンジョンに潜った経験もある。
もちろん冒険者登録もしている。ランクはAが3人、Bが2人だ。

パーティーのバランスは良く、地下60階層まではそれ程苦戦することなくクリアすることが出来た。
確実に強くなる魔物、どんどん減っていくポーション。

70階層のボスを倒し終えた時には疲労困憊で体力回復のためにそこで一夜を明かし、ここでリタイヤするかさらに下の階層を目指すか相談し合った。
不思議なもので、10階層ごとのボスを倒せばその奥に転移魔法陣が現れる。それに乗ればダンジョンの入口まで転移される。
だが、ボス部屋から出ると何故だか戻ることが出来なくなる。
でもここで魔法陣を使えば、次回は入口の転送魔法陣からクリアしたここまで転送してくれる。
一度帰って体力、魔力を完全回復させ、ポーションや備品その他を補充して再度挑戦するのがベストだろう。だが・・・

『私たちは学院を卒業したら私の側近になる者以外は今のように簡単に会えなくなる。こうやって羽目を外すのもコレが最後かもしれない。まだ皆んなの余力が残っているなら下を目指したいと思う』第2王子のリオネル殿下の言葉で80階を目指すことになった。

これで次に転移する為には80階のボスを倒さなくてはならなくなった・・・もう引き返せない。

だが、そう簡単にはいかなかった。
71階からの魔物はさらに凶暴で強く、一瞬でも気を抜くと命を刈り取られる。
それでも傷だらけになりながらもギリギリ77階まではクリアできた。
もう、十分に用意してきたポーションも底を尽きた。
俺たちの体力も魔力も限界だった。
死を覚悟した。いや、覚悟するしかなかった。
簡易の結界を張れるアイテムでひと休みするも、どの程度この結界が耐えられるのか・・・結界が破られるのが先か、帰らないリオネル殿下を騎士団が救出に来るのが先か・・・

『すまない。私の我儘で君たちまで巻き込んで・・・本当にすまなかった』

ああリオネル殿下は命を諦めたんだ・・・

『いえ、下に降りることは皆んなで決めたことです』

『そうですよ。殿下だけの責任ではありません』

『僕は悔いはないよ~』

皆んなも諦めたのか?

"自分の命にかえてもリオネル殿下だけは守りきる"なんて言葉はこの最悪の状況では軽すぎる。
それでも俺は最後まで足掻きたい。

でも、もう終わりか・・・
今の魔物の攻撃で結界にヒビが入った。
ここまでか・・・

パリーンっと結界の破られた音と同時に鈴を転がすような声が響いた。

『全員しゃがんで!』

条件反射でしゃがんだ俺たちの目の前に長い黒髪を高い位置て1つに纏めた少女が俺たち目前まで迫っていた魔物を一撃で倒したところだった。

『サラ、あとは頼んだよ』

『任せて』

サラと呼ばれた女性が俺たちの周りに結界を張った。
それよりも黒髪の少女・・・
髪色を変えていても間違えたりしない。
俺の婚約者になるはずだったフィオナ嬢だ。

一目見たときから消えてしまいそうなほど儚いフィオナ嬢を俺が守ってあげたいと思った令嬢だ。

一度も俺に関心を向けなかった令嬢。

それが婚約を結ぶ直前だった。
初めて彼女が真っ直ぐに俺を見た。力強い目で婚約を断られたが、そんなフィオナ嬢から目が離せなかった。

部屋から退室するフィオナ嬢のクスッと笑った顔がずっと忘れられなかった。

その彼女が、目の前で飛ぶように、踊るように、舞うように不思議な形の細い剣で次々と魔物を屠っていく。

目が離せない。
それはきっと俺だけじゃない。





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