最初からここに私の居場所はなかった

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『ま、俺が言いたいのは"気を抜くな"ってことと"舐められるな"ってこと⋯⋯それと"どうしようもない時は必ず俺に助けを求めろ"ってことだ』

クロイツ殿下はそう言ってくれたけれど、彼に助けを求めるつもりは無い。
だって私には心強いリズベットとマリエルという最強の友達がいる。

そう、それに前回とは違う。私は1人じゃない。
私は強くなった。
騎士団の鍛錬場で身体を鍛え技術を身につけ、お婆様の淑女教育で礼儀作法だけでなく精神的な部分も鍛えられた。

だからね？貴女たちに負ける要素はないのよ？

前世でも、前回でも、国が変わっても校舎裏に呼び出すのは同じなのね。

さっきから、やいのやいの口汚く罵っているのはセリア・シシー子爵令嬢とその仲間たち。
それだけじゃない。レイや他の練習仲間に思いを寄せているらしい令嬢たちが多数。
何人いるんだよ。円陣を組んだように周りを令嬢たちに囲まれている。後ろの方の令嬢なんて顔が見えない。

私と同じように練習仲間たちと仲のいいリズベットとマリエルも一緒に呼び出された。
校舎裏なんて人に見つからない場所を選んでも、これだけ騒いでいると声は聞こえているんじゃないかな～？

「聞いていますの？」

「「「はあ」」」

「馬鹿にしていますの？」

「「「はあ」」」

私たち3人の気のない返事に、令嬢たちの中からこんな言葉が出た。

「ミラドールなんてこの国の貴族におりませんわよ？」

アンタが勉強不足なんだよ！

「わたくしも聞いたことがございませんわ」

お前もか！

「ガルシア公爵家でお世話になっているからって自分まで貴族になったつもり？」

「私は貴族で間違いないわよ」

「あら！わたくしはガルシア公爵様の愛人の娘だと聞きましたわ」

「「わたくしも聞きましたわ」」

「「そうよそうよ」」

「伯父様の愛人？ふふっ、帰ったら伯父様に教えて差し上げなければいけませんわね」

「ねえ、リリーシア。馬鹿に教える必要はないと思うけれど、このままだとこの子たち処罰を受けることになるんじゃない？」

この人数に囲まれても一切動じず、さり気なく馬鹿にしているのはリズベット。

「ん～～」

「もう呼び出しは怖いから教えてあげて？」

怖がりで優しいマリエル。

「⋯⋯仕方がないわね。」

私たちの会話で何か察した子もいたけれど、こんな無駄な時間を使うのは私としてもごめんだ。
出来れば実家のことは言いたくなかったけれど、伯父様やユーリ兄様やアルト兄様まで見下されるのは私としても不本意だし、教えて差し上げましょう！そして反省しろ！

「私はガルシア公爵の愛人の娘ではなく実妹、アナスタシアの娘。そして、オーギュスト王国の現国王の弟である王弟レアンドルを父に持つミラドール公爵家の娘よ。ちなみにお婆様が前国王の実妹だとは皆さんも知っているわよね？」

自分で言うのもなんだけど、言葉にすると私って凄い血筋よね？敬われることはあっても馬鹿にされる言われは無いわね。

リズベットの『早く謝らないと貴族で居られなくなるかもよ～』と脅しともとれるセリフに囲んでいた令嬢たちは真っ青になり一斉に頭を下げて謝りながら去って行った。
唯一悔しそうに睨んでいたのはシシー嬢ただ一人。根性あるな。でも、道を踏み外したりはしないでね。




⋯⋯結局、私たちが呼び出された理由は解決したのだろうか？