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7歳の時
「見つけたぞ!お前は僕の婚約者になれ!」

「嫌」


8歳の時
「お前を僕の婚約者に選んでやる!有難く思え!」

「嫌です」

9歳の時
「命令だ!毎日僕に会いに来い!」

「無理です」

10歳の時
「喜べお前は未来の王妃だ!」

「お断り致します」

11歳の時
「お前なんか嫌いだ!二度と王宮に来るな」

「承知致しました」



あれから4年、15歳になった。
彼にはあの日から一度も会っていない。




生まれた時から前世の記憶があった。
私は両親と祖父母にそれはそれは大事に育てられた。双子の弟と共に。

なんでも買い与え、甘やかそうとする両親と祖父母。
前世では想像も出来なかった待遇がここには当たり前のようにあった。

だが、生まれた時から前世の記憶があった私は、この待遇だからこそ嫌な予感がしていた。



その予感が当たったと思ったのは6歳で双子の弟アランと王宮のお茶会に招かれた時。

この国ウインティア王国では王家が王子や王女のために、歳の近い子供たちを幼い頃から招き、側近候補、婚約者候補、お友達候補などを数年かけて能力、資質、聡明さ相性などから選ぶ。
だから、毎年最低1回は王子たちの為に大規模なお茶会が開かれる。

第一王子と第二王子がお茶会の会場に現れた瞬間に確信した。

ここはゲームの世界だと。



「世界を超えた乙女の愛と友情」なんで今の時代にこんな題名なんだと、古くささに興味が湧いて購入してしまったんだ。
パッケージの攻略対象者たちが私好みのイケメンだったのも理由だ。

ゲームの内容は王宮の庭園で開かれた、なにかのお茶会かパーティー中に目も眩むような光が輝くと、そこにはゲームの世界にはない服装をしたを少女が倒れていた。

ゲーム開始早々あまりのベタさにうんざりしたのを覚えている。

そこから何も分からない少女を王子、宰相の息子、騎士団長の息子、悪役令嬢の弟など攻略対象者と学園で交流しながら最後には結ばれるというマジでベタな内容だった。

そのゲームで悪役令嬢は金遣いが荒く、傲慢、優しさの欠片もない悪魔のような令嬢だとゲーム内の会話には出てきたが顔は一度も出なかった。

ゲームでの悪役令嬢は王子の婚約者候補だったが、王子からは嫌われておりヒロインを取り巻きを使って苛めたと断罪され、候補からも外され修道院で生涯を終えた。と最後のテロップに流れていた。


王道すぎて捻りもないこんなクソゲームを買ってしまった自分を恨んだ。
アッサリと王子を攻略して(チョロかった)一周目を終わらせて速攻売り払った。


そう!自分の名前を知った時から嫌な予感がしたんだよ。

私はエリザベート・ウォルシュ
弟はアラン・ウォルシュ
侯爵家に生まれた双子だ。

だから、両親と祖父母にどんなに甘く過保護に育てられようが、調子に乗らず謙虚倹約をモットーに我儘も言わない、使用人にも感謝の言葉を常に伝えるよう心がけた。

元日本人としてはお礼は言って当たり前だし、我儘で傲慢なんて日本じゃ嫌われる理由の上位に上がるだろう。
(日本じゃなくても嫌われるな)

そんな私を見て育ったアランは姉大好きのシスコンになってしまった。
これは予想外だったが、可愛いアランに嫌われて冷たい目を向けられるぐらいならシスコンの方がいいに決まっている。


ゲームのアランは姉を心底軽蔑していたから。



だから、初めて参加した王宮のお茶会では最初の挨拶が終われば、令嬢達に囲まれる王子にも近づかず2人だけで茶菓子を楽しんだ後はさっさと帰った。


次の年からだ。

王子がバカなことを言い出したのは。
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