無能チートで冒険者! ~壁魔法も使いよう~

白鯨

文字の大きさ
35 / 48
 1章.無能チート冒険者になる

閑話.大鎧の誓い(セヨン視点)

しおりを挟む

 ワタシはセヨン・カルーア。
 トンボの保護者になり、初依頼の日がきた。

 冒険者ギルドでは謝りにきたロジャーに、トンボが食って掛かったが、暴言を吐いたロジャーが次の日に謝りにくるのは、ワタシにとっては日常茶飯事だ。私が許すと言えば、トンボも納得してくれた。
 だから早々に去れロジャー。

 依頼は薬草採取を選択した。
 新人はまず、森の中の移動に慣れることが大切だ。それに場所さえ把握していれば、確実に採取できるので、最初の依頼としては最適なんだ。
 そして、そういうのを教えるのは、保護者たるワタシの仕事。
 だから、今もこちらの様子を伺っている、よく新人にアドバイスしている奴らに、滅多に使わない兜の目を光らせる機能を使い、威嚇をしておく。
 ヨケイナコトヲシタラブットバス。

 依頼の受注が済んだら、次は道具の準備だ。
 ポーション類すら持たず、森に向かおうとするトンボを止めて、フィレオの道具屋に向かった。
 トンボは初めて見た巨人に驚いていたけど、フィーの事を“おっちゃん”と呼ぶくらいには仲良くなっていた。
 フィーはトンボの世間知らずっぷりと、妙な知識を持っている事に、貴族や他国の人間かを疑っていたけど、ワタシが何も言わずにいると、追及を諦めたようだった。
 トンボにはもう少し自分の出自を隠すよう言っておこう。

 森に入ってからは順調だった。
 トンボが新しい壁魔法を思いつくまでは。
 トンボ式アイテムボックス。とトンボは呼んでいたが、あれの運搬性能は目を見張るものがある。
 トンボの壁魔法は、一点に大きな力が集中すると、容易に割れてしまうが、面に力が掛かる分には意外と強いため、入れ方さえ注意すれば、大量に物の運搬ができるだろう。
 ワタシの念動と違い、本人の力が弱くても、割れない限り浮かせる事ができるのも大きな利点だ。名前のナントカ“式”っていうのもカッコいい。今度何か作ったら付けてみよう。
 そして、トンボが実験などと言い出し、オークに遭遇したんだ。

 オークはCランクの討伐対象の魔物だ。
 しかも、そのオークは武装していた。そうなると、オークロードなどの上位種が生まれている集落が、近くにできている可能性があった。
 戦えば音を聞きつけて、集まってくるかもしれない。そう思い、ワタシがトンボに撤退すると伝えると、素直に従ってくれた。トンボはオークに負けず劣らず、猪突猛進な所があるので、少し安心した。
 だけど、それは間違いだった。
 逃げる際にオークに気付かれ、追われた先に他の冒険者がいたのだ。
 ワタシにとってはトンボの安全の方が優先度は高い。仮に共闘する事になっても、彼らを守りきる自信はなかった。
 そんなワタシの葛藤をよそに、トンボは彼らの安全を優先させた。
 自ら囮になると言って、はじめてワタシがトンボを助けた時に、格好付けて言った言葉を口にして。
 その背中が、ワタシが憧れていた理想の冒険者の姿に被って見えた。
 ただ、オークの攻撃に対して一切の防御行動を取らなかったのは、頭イカれてるとしか言えない。しかも、まるでワタシが守るのが当然みたいな顔をしているのだ。
 少しだけ、その信頼が重く感じた。

 だから、ワタシは新しい鎧を求めた。
 トンボの世界の話は興味深いものが多い。
 その中でも、ワタシのように、自分よりはるかに巨大な鎧に入り、操って戦う人間が主人公の物語があるらしい。
 バラバラの鎧のパーツが合わさって、巨大な鎧になったりもするらしい。
 そうか、なにも鎧を自分で身に着ける必要はないんだ。バラバラの鎧を操れば、ワタシの手の届かない場所にも、鎧を届かせる事ができる。
 そうすれば、トンボの信頼に応える事ができるかもしれない。
 だからワタシは巨大な腕の鎧を作ったのだ。ワタシの腕がトンボの元に届くように。

 ひとつ気になるのは『ビッグ・セヨン2号』ってそんなにダメかな?

 スライム討伐の時は酷かった。
 暗いし臭いしジメジメしてるし。ただ、ヴィッシュの性能は上出来だった。ワタシの最高傑作と言える。
 しかし、またトンボがやらかしたのだ。
 壁魔法に魔方陣を刻むとは、壁魔法の汎用性は凄いな。
 それにしても、もう正確な魔方陣を覚えるとは、あの絵描き歌というのは、なかなか有用みたいだ。印を覚えて組み合わせを覚えるのではなく、完成された魔方陣を覚える為の歌。これが意外と頭に残るのだ。
 発展性には欠けるけど、既存の魔方陣を覚えるのには最適。
 ワタシが魔方陣の勉強をしていた頃に知りたかった。
 まぁ、発動した風の魔方陣で、酷い目にあったわけだけど。

 そして、スタンピードが起きたのだ。
 当然、トンボがおとなしくできる訳もなく、冒険者の事を馬鹿にしたという理由で、貴族である軍団長を、魔法でぶっ叩くし、殺してないからセーフとか言い出す始末。
 ギルマスが副団長を呼んでくれなかったら、不敬罪で切り殺されててもおかしくなかった。そうなっても絶対抵抗して、余計な混乱を招いてただろうけど。
 そして、オークロードの策略を見破って、ギルマスと副団長に信じられもしていた。
 まだトンボは新人の冒険者なのに。どんどん活躍するトンボが遠くの人のように感じた。

 冒険者がそれなりの数死ぬかもしれないと聞いて、トンボが走り出した時、ワタシは怖くなったんだ。
 フィーの店から木箱を持って出てきたのを見て、それは確信に変わった。
 トンボはきっとまた無茶をする。自分の命を顧みない覚悟で、きっと。
 ワタシが格好付けて言った、“冒険者として困っている人を助けるのは当たり前だ”という言葉を実践して。 
 ワタシがトンボにそんなことを言わなければ、トンボはそんな無茶をしなかったかもしれない。そう思うと、ワタシはトンボが死ぬのが怖くなったんだ。
 だからワタシは、泣きながら後悔した、泣きながら懇願した。泣きながら自分の矮小さを吐露した。
 なのにトンボは、やっぱり当然のような顔をして、ワタシにトンボを守れと言ってくれた。
 だから、ワタシも覚悟を決めた。
 トンボが無茶をするのなら、無茶をするトンボはワタシが守ると。
 トンボに語ったことを本当にするために、トンボが困った時はワタシが助けると。
 強くなるって。

 再び、この大鎧に誓ったんだ。





「なのにトンボと来たら、オークを殲滅するために、早速無茶してさ! トンボが大丈夫って言うから、ギルマス止めたりしてさ、なのにトンボが自滅するなんて、聞いてないよ! トンボが倒れた時は本当に、ほんとーに! 心臓止まったんだよ! トンボが死んだらワタシも死ぬって言ったから、ワタシもビックリして死んじゃったの! わかる?!」
「た、頼むからもう勘弁してくれよ!」
「なんだその態度は! お前何歳だ?! ワタシは42歳だぞ! 年長者は敬え! それでな、トンボが言うんだよ、“セヨンさんはもう成長しませんね”って! ドワーフの女だってな! バインバインには憧れるんだぞ!」
「話が変わりすぎてわからねぇよ! 頼むからその手甲で俺の腕掴むの止めてくれよ! 食い込んで痛いんだよ!」
「あははははっ! なに言ってんだよロジャー! あははははっ!」
「面白いこと言ってねぇよ?!」


「なぁ、あれってセヨンさんだよな……」
「なんだ、お前この街に来たばかりか? セヨンはロジャー以上に酒癖悪いんだぞ。喋り方が普通になる代わりに、すぐ絡むようになるし、泣き上戸と笑い上戸がコロコロ変わる」
「マジかよ。ドワーフなのに?」
「ドワーフだからこそ厄介なんだよ。酔うのは早いくせに、潰れねぇんだ。つまり一度捕まるとああなる」
「……それはキツいな」
「酔ったセヨンに近付くな。がこのギルドでは常識だ。ロジャーが酔った時にセヨンによく絡むのは、こういう時の仕返しなのかもしれんな」
「トンボちゃんを呼んでくるか?」
「トンボちゃんなら、あそこで寝てるぞ。酒を飲まなくても騒ぎ疲れたらしい」
「あらら、起こすのは可哀想だし、このままロジャーには犠牲になってもらうか」
「おう、っていうか、セヨンまだ強くなる気なのか?」
「オークロードの攻撃片手で止めて、数十メートルも殴り飛ばすとか、十分化け物だよな?」



「誰か! セヨンを引き剥がしてくれー!」
「ううっ、ワタシは頑張るぞトンボ、ううっ」





ーーーーーーーーーー

 酒に弱いドワーフ。
 セヨンさん変な属性ばかり付与されてない?
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません! 神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...