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1章.無能チート冒険者になる
閑話.大鎧の誓い(セヨン視点)
しおりを挟むワタシはセヨン・カルーア。
トンボの保護者になり、初依頼の日がきた。
冒険者ギルドでは謝りにきたロジャーに、トンボが食って掛かったが、暴言を吐いたロジャーが次の日に謝りにくるのは、ワタシにとっては日常茶飯事だ。私が許すと言えば、トンボも納得してくれた。
だから早々に去れロジャー。
依頼は薬草採取を選択した。
新人はまず、森の中の移動に慣れることが大切だ。それに場所さえ把握していれば、確実に採取できるので、最初の依頼としては最適なんだ。
そして、そういうのを教えるのは、保護者たるワタシの仕事。
だから、今もこちらの様子を伺っている、よく新人にアドバイスしている奴らに、滅多に使わない兜の目を光らせる機能を使い、威嚇をしておく。
ヨケイナコトヲシタラブットバス。
依頼の受注が済んだら、次は道具の準備だ。
ポーション類すら持たず、森に向かおうとするトンボを止めて、フィレオの道具屋に向かった。
トンボは初めて見た巨人に驚いていたけど、フィーの事を“おっちゃん”と呼ぶくらいには仲良くなっていた。
フィーはトンボの世間知らずっぷりと、妙な知識を持っている事に、貴族や他国の人間かを疑っていたけど、ワタシが何も言わずにいると、追及を諦めたようだった。
トンボにはもう少し自分の出自を隠すよう言っておこう。
森に入ってからは順調だった。
トンボが新しい壁魔法を思いつくまでは。
トンボ式アイテムボックス。とトンボは呼んでいたが、あれの運搬性能は目を見張るものがある。
トンボの壁魔法は、一点に大きな力が集中すると、容易に割れてしまうが、面に力が掛かる分には意外と強いため、入れ方さえ注意すれば、大量に物の運搬ができるだろう。
ワタシの念動と違い、本人の力が弱くても、割れない限り浮かせる事ができるのも大きな利点だ。名前のナントカ“式”っていうのもカッコいい。今度何か作ったら付けてみよう。
そして、トンボが実験などと言い出し、オークに遭遇したんだ。
オークはCランクの討伐対象の魔物だ。
しかも、そのオークは武装していた。そうなると、オークロードなどの上位種が生まれている集落が、近くにできている可能性があった。
戦えば音を聞きつけて、集まってくるかもしれない。そう思い、ワタシがトンボに撤退すると伝えると、素直に従ってくれた。トンボはオークに負けず劣らず、猪突猛進な所があるので、少し安心した。
だけど、それは間違いだった。
逃げる際にオークに気付かれ、追われた先に他の冒険者がいたのだ。
ワタシにとってはトンボの安全の方が優先度は高い。仮に共闘する事になっても、彼らを守りきる自信はなかった。
そんなワタシの葛藤をよそに、トンボは彼らの安全を優先させた。
自ら囮になると言って、はじめてワタシがトンボを助けた時に、格好付けて言った言葉を口にして。
その背中が、ワタシが憧れていた理想の冒険者の姿に被って見えた。
ただ、オークの攻撃に対して一切の防御行動を取らなかったのは、頭イカれてるとしか言えない。しかも、まるでワタシが守るのが当然みたいな顔をしているのだ。
少しだけ、その信頼が重く感じた。
だから、ワタシは新しい鎧を求めた。
トンボの世界の話は興味深いものが多い。
その中でも、ワタシのように、自分よりはるかに巨大な鎧に入り、操って戦う人間が主人公の物語があるらしい。
バラバラの鎧のパーツが合わさって、巨大な鎧になったりもするらしい。
そうか、なにも鎧を自分で身に着ける必要はないんだ。バラバラの鎧を操れば、ワタシの手の届かない場所にも、鎧を届かせる事ができる。
そうすれば、トンボの信頼に応える事ができるかもしれない。
だからワタシは巨大な腕の鎧を作ったのだ。ワタシの腕がトンボの元に届くように。
ひとつ気になるのは『ビッグ・セヨン2号』ってそんなにダメかな?
スライム討伐の時は酷かった。
暗いし臭いしジメジメしてるし。ただ、ヴィッシュの性能は上出来だった。ワタシの最高傑作と言える。
しかし、またトンボがやらかしたのだ。
壁魔法に魔方陣を刻むとは、壁魔法の汎用性は凄いな。
それにしても、もう正確な魔方陣を覚えるとは、あの絵描き歌というのは、なかなか有用みたいだ。印を覚えて組み合わせを覚えるのではなく、完成された魔方陣を覚える為の歌。これが意外と頭に残るのだ。
発展性には欠けるけど、既存の魔方陣を覚えるのには最適。
ワタシが魔方陣の勉強をしていた頃に知りたかった。
まぁ、発動した風の魔方陣で、酷い目にあったわけだけど。
そして、スタンピードが起きたのだ。
当然、トンボがおとなしくできる訳もなく、冒険者の事を馬鹿にしたという理由で、貴族である軍団長を、魔法でぶっ叩くし、殺してないからセーフとか言い出す始末。
ギルマスが副団長を呼んでくれなかったら、不敬罪で切り殺されててもおかしくなかった。そうなっても絶対抵抗して、余計な混乱を招いてただろうけど。
そして、オークロードの策略を見破って、ギルマスと副団長に信じられもしていた。
まだトンボは新人の冒険者なのに。どんどん活躍するトンボが遠くの人のように感じた。
冒険者がそれなりの数死ぬかもしれないと聞いて、トンボが走り出した時、ワタシは怖くなったんだ。
フィーの店から木箱を持って出てきたのを見て、それは確信に変わった。
トンボはきっとまた無茶をする。自分の命を顧みない覚悟で、きっと。
ワタシが格好付けて言った、“冒険者として困っている人を助けるのは当たり前だ”という言葉を実践して。
ワタシがトンボにそんなことを言わなければ、トンボはそんな無茶をしなかったかもしれない。そう思うと、ワタシはトンボが死ぬのが怖くなったんだ。
だからワタシは、泣きながら後悔した、泣きながら懇願した。泣きながら自分の矮小さを吐露した。
なのにトンボは、やっぱり当然のような顔をして、ワタシにトンボを守れと言ってくれた。
だから、ワタシも覚悟を決めた。
トンボが無茶をするのなら、無茶をするトンボはワタシが守ると。
トンボに語ったことを本当にするために、トンボが困った時はワタシが助けると。
強くなるって。
再び、この大鎧に誓ったんだ。
◆
「なのにトンボと来たら、オークを殲滅するために、早速無茶してさ! トンボが大丈夫って言うから、ギルマス止めたりしてさ、なのにトンボが自滅するなんて、聞いてないよ! トンボが倒れた時は本当に、ほんとーに! 心臓止まったんだよ! トンボが死んだらワタシも死ぬって言ったから、ワタシもビックリして死んじゃったの! わかる?!」
「た、頼むからもう勘弁してくれよ!」
「なんだその態度は! お前何歳だ?! ワタシは42歳だぞ! 年長者は敬え! それでな、トンボが言うんだよ、“セヨンさんはもう成長しませんね”って! ドワーフの女だってな! バインバインには憧れるんだぞ!」
「話が変わりすぎてわからねぇよ! 頼むからその手甲で俺の腕掴むの止めてくれよ! 食い込んで痛いんだよ!」
「あははははっ! なに言ってんだよロジャー! あははははっ!」
「面白いこと言ってねぇよ?!」
「なぁ、あれってセヨンさんだよな……」
「なんだ、お前この街に来たばかりか? セヨンはロジャー以上に酒癖悪いんだぞ。喋り方が普通になる代わりに、すぐ絡むようになるし、泣き上戸と笑い上戸がコロコロ変わる」
「マジかよ。ドワーフなのに?」
「ドワーフだからこそ厄介なんだよ。酔うのは早いくせに、潰れねぇんだ。つまり一度捕まるとああなる」
「……それはキツいな」
「酔ったセヨンに近付くな。がこのギルドでは常識だ。ロジャーが酔った時にセヨンによく絡むのは、こういう時の仕返しなのかもしれんな」
「トンボちゃんを呼んでくるか?」
「トンボちゃんなら、あそこで寝てるぞ。酒を飲まなくても騒ぎ疲れたらしい」
「あらら、起こすのは可哀想だし、このままロジャーには犠牲になってもらうか」
「おう、っていうか、セヨンまだ強くなる気なのか?」
「オークロードの攻撃片手で止めて、数十メートルも殴り飛ばすとか、十分化け物だよな?」
「誰か! セヨンを引き剥がしてくれー!」
「ううっ、ワタシは頑張るぞトンボ、ううっ」
ーーーーーーーーーー
酒に弱いドワーフ。
セヨンさん変な属性ばかり付与されてない?
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