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第二章 箱庭の発展と神の敵対者
14.ぬいぐるみとギルド登録
しおりを挟むスーラン領の不穏な動きを探るのは、フィレオのおっさんに丸投げすることになった。
私が勝手に動くと、ガンボ村の砦化みたいにやり過ぎて、相手を刺激する結果になると言われたのだ。
私が行ってヤーデルって領主をボゴして終わり。とはいかないらしい。
だから、私は頼られたら協力するスタンスでいこう。
ラウとミウはカルーア工房に連れていき、セヨンを紹介(セヨンには飯を作ってもらった段階で、二人を引き取りたいという旨は伝えていた)。
それから数日休ませたのだが、ミウは何度も夜に泣き出したり大変だった。
これからは私が親代わりに色々と教えていかねばならない。
でないと、この子は純粋過ぎる。
二人が元気になった辺りで、箱庭の中に連れていき私の秘密を暴露をしたのだが。
ラウが私の目の前で固まったまま、かれこれ一時間以上動かないのだ。
ミウは直ぐに受け入れ、今はソルとナルと一緒にカルデラの巨体によじ登って遊んでいる。
精神年齢は近いだろうから、いい友達になりそうでなによりだ。
「トンボさんが……神様……世界を創ってる……神様……オレは……オレは……」
そしてラウは見ての通り地面に四つん這いになり、甲子園の決勝九回裏逆転サヨナラホームランを打たれ、夢破れたピッチャーの様な状態だ。
そろそろ元に戻って欲しいが、私が声を掛けるのは逆効果な気がする。
「神様って言うたっちゃトンボはまだ見習い。そしてそりゃ長か期間続くはず。見習いん間はほぼ人間やけん、チャンスはある…………はず」
ぶつぶつと呟きながら負のオーラを撒き散らすラウに辟易したのか、セヨンがテキトーな事を言ってラウを励ました。
そんな断定できない事ばかりの上っ面だけの言葉じゃ、流石にダメだろ。
「そうですよね! ありがとうございますセヨンさん! オレもっと頑張ります!」
あっ、いいんだ。
「それでよか若人よ」
「なんで偉そうなんだよ。っていうか、今日は工房に籠ってないんだな?」
「ふふふ、我天啓ば得たり」
「まぁ、神様の私がアドバイスした訳だし、間違っちゃないな」
スキル付き魔道具を造るのに苦戦していたセヨンに、私が地球のある道具について話したら人造神級魔道具作成が進展したらしく、テンションがおかしくなっているのだ。
「トンボさん! オレもこの箱庭を発展させます!」
「おう、なら早速仕事を与えよう」
そんなに気負わなくてもいいんだけど。
それを口にはしない。
今の二人は故郷を失ったばかりだし、ミウに至ってはまだ五歳だ。
現実の辛い事を少しでも和らげる為にも、今は箱庭の非現実さが必要なんだと思う。
私は二人を箱庭に縛りつける気はない。
いつか心の整理ができて、他にやりたいことができたら、いつ箱庭を出ていってもいいのだ。
それまでこの箱庭が二人の休憩所になればいい。
まぁ、ずっと居てくれたらありがたいけどな。
「ラウとミウの記念すべき初仕事は……虫取りだ」
「はい! …………はい? 虫取り、ですか?」
「そうだ。ミウー! 虫取り行くぞー!」
「わかったのー!」
『わかったのだ!』
『わかりました!』
チビッ子三人組がカルデラの頭の上で元気に返事をした。
というか、ソルとナルも行くのか?
ーーー
ソルとナルはミウにのっかっただけで、虫取りが何なのか知らなかったらしく、外に出ないといけないと言った途端涙目になっていた。
しかし、ミウが「虫取りは楽しいの!」と言ったら、触発されたのか頑張って外に出てきた。
少し変わった方法で……。
『お外~♪ お外~♪ 人間いっぱい~♪』
『これが人間の街ですか……』
「二人とも可愛いの!」
ミウの腕の中でキョロキョロ周りを見渡す二体のぬいぐるみ。
この二体がソルとナルである。
二匹とも前々から外に出るのは怖いけど興味はあったらしく、セヨンと一緒に考えた結果、ソルの作ったぬいぐるみに、箱庭の光と闇を集めて作った疑似ダンジョンコアを埋め込み、ラジコンみたいなゴーレムを作っていたのだ。
ちなみに動物を擬人化したぬいぐるみでソルが三つ目のカラスで、ナルが杵を持ったウサギだ。
八咫烏と月兎を表現しているらしい。
名前はクロウとラビ。
「つまり、自然の生き物を箱庭に入れる試みと、作物等の増産を一辺にするために、ムシャムシとヘビミミズ、それとミツバチを捕まえるという訳ですね?」
チビッ子三人組が楽しくやっている横で、私はラウに虫取りに至った経緯を説明していた。
ラウは理解が早くて助かる。
「ピコット村でも、作物の収穫後は森からヘビミミズを捕まえてきて、次の種まきに備えて畑の土壌回復をしていましたから」
農村とかでは普通に使われてるんだな。
「それで今から森に入るんですか?」
「いや、先に寄る場所がある」
「寄る場所、ですか?」
「ここだよ」
そう言って私が二人を連れて入ったのは冒険者ギルドだ
ラウとミウの身分証を作るのと顔見せが目的だ。
何の顔見せかというと。
ラウとミウは表向きカルーア工房に所属している事にする。
その為二人には今後、薬草の納品やセヨンの手伝いで冒険者ギルドに来る事が増えるかもしれないからだ。
それに、数日置きに薬草納品をしている私は、『薬草少女』として冒険者に知られた存在になっている。
それも冒険者ギルドと鍛冶ギルドのギルマスと懇意にしていて、薬剤ギルドにも圧力を掛けられるとかいう噂付で。
これならラウとミウに手を出す馬鹿はいないだろ。
「という訳で登録よろしくエル」
「まぁ、トンボさんが有名なのは事実ですけど、『薬草少女』より『ドラゴンテイマー』としての方が有名ですよ?」
確かに『ドラゴンテイマー』としても有名になっているのだが、薬草長者を諦めていない私としては、薬草少女の方が気に入っている。
「それで、そちらの二人が新規登録ですか? はじめまして、冒険者ギルドの受付をしているエルティスです。エルと呼んでください!」
「ラウ・リーロットです。よろしくお願いします」
「ミウはミウ・リーロットなの!」
「二人は兄妹ですか?」
「はい、兄妹揃ってカルーア工房でお世話になる事になりました。よろしくお願いします」
「しますなの!」
「はぁ~可愛い、よろしくね~…………ラウ君はまだ成長期が来てないだけみたいですけど、ミウちゃんは本当に登録するんですか?」
エルが最終確認してくる。
流石は有能受付嬢。ラウとミウの大体の年齢がわかっているみたいだ。
見た目と年齢が合わない、異種族あるあるには慣れているのかな。
「ラウは十五歳で、ミウは五歳なんだけど、ギルドに年齢制限ってあるの?」
「いえありません。ですが、危険の多い職種ですから、あまり小さい子には、登録試験を受けていただきます。ミウちゃんは試験の必要ありですね」
「試験内容は?」
「一定時間試験官から逃げるか倒す。戦闘力や逃走能力を見る試験になります。最低限自分の身を守れるか……という事です」
今後一緒に出かける可能性もあるし、冒険者登録してパーティー組んだ方が便利だと思ったんだけど。
流石に依頼に関係ない子を連れて行けないし。
でも、ミウに危ない試験を受けさせるのもなぁ……仕方ないミウの登録は諦めるか。
「大丈夫なの! ミウ“しけん”受けるの!」
「ミウ……ってもなぁ」
『ボク達に任せるのだ!』
『僕達がミウを助けます』
やる気になっているミウを援護するように、ソルとナルがミウの腕の中で息巻いた。
「それはつまり、今後ミウが外に出かける時は、お前らが常に一緒にいる必要があるって事だけど、その覚悟はあるのか?」
その場しのぎで試験を通っても意味が無い。
ミウの力として一緒に試験を受けるなら、今後もミウの力として働く必要があるのだ。
その覚悟がないなら口出すなよ?
『と、当然なのだ! 外も全然怖くないし、人間だってなんのそのなのだ!』
『それに僕達だって、はじめてできた友達を守りたいです』
「ソルちゃんナルくん……ありがとうなの!」
ひしっと抱き合うミウとぬいぐるみ。
端から見てると、ミウが一人でごっこ遊びしている様にしか見えないけど。
お前ら今朝会ったばかりだろうに。
子どもは仲良くなるのが早いなぁ。
「なら、試験頼むよエル」
「わ、わかりましたけど……そのぬいぐるみって、キラードールなんですか?」
「キラードール?」
「怨念が人形に宿り、血を求めて動き出した魔物ですよ」
「ゴーレムなのかアンデットなのかと、未だに一部で議論が交わされてるんだよねぇ」
「きゃあ! ギ、ギルマス! いきなり現れないで下さいよ! ただでさえ私アンデットとか怖い系苦手なのに……」
いつの間にか現れたロジャーにエルが小さな悲鳴を上げた。
私達の方からは、後ろから気配を消して近くロジャーが丸見えだったけど。
「話は聞いてたよ。その子が試験受けるなら、おじさんが試験官をしてあげよう」
「え~、ロジャーが試験官かよ~」
「嫌そうだねぇ。おじさん悲しいよ」
「だってロジャー普通に強いじゃん」
「ちゃんと手加減はするよ。おじさんはトンボの連れてきた冒険者候補に、興味があるだけだよ」
ギルマスがただの興味本意で出てくんなよ!
「おじさん! ミウは負けないの!」
「おっ、いい気合いだねぇ~。お手柔らかに頼むよ。じゃあ、早速場所を移そうか」
そう言って、ギルドの裏手にある訓練場に先導するロジャー。
これでミウが不合格になったら殴ってやる!
ソルとナル、ミウを頼んだぞ!
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