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三章 微笑む蓮と黒い槍
三章 [6/10]
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「ちょっと王紀! あまり水蓮を怖がらせないで」
おびえる水蓮があまりにかわいそうで、泉蝶は水蓮をかばった。
「泉蝶」
王紀に冷たい目で見られる覚悟をしていたが、彼は悲しそうにほほえんだだけだった。彼女の内心の葛藤を察して同情しているのかもしれない。
「そうだぞ、王紀」
「あなたは黙っておいてください」
しかし、志閃には冷たい。
「僕は作戦本部に戻りますが、みなさんはどうされますか?」
そして、志閃以外の将軍にそう問いかける。
「用は済んだ。わたしも戻る」
飛露はそう言うや否や水蓮に声をかけることなく、病室をあとにした。鳥のことを問い詰めるつもりだったが、志閃のせいで時機を逃してしまった。
「オレも」と赤覇も飛露の後を追う。
「じゃあな」
低い声ではあったが、水蓮に声をかけるのも忘れない。
「俺は残るよ~」
「志閃ひとりは不安だから、あたしも少しの間ここにいるわ」
志閃と泉蝶は病室に残る意思を示した。
「そうですか。それでは明日の朝、水蓮さんの配属の話をしましょう」
「了解~」
「わかったわ」
そして、王紀も病室を出ていった。
「よ~し、邪魔者はいなくなった!」
その瞬間はしゃぎだす志閃。ふと気づけば、病室には志閃と泉蝶と水蓮。女が二人に、志閃を邪魔する男もいない。
「…………」
泉蝶はさりげなくこぶしを握りしめ――。
「あたりもいい感じに暗いし、ハーレムライ……ブッ!」
次の瞬間、志閃のほほにそれがめり込んだ。
「あはっ」
そのつぶれた顔が面白くて、水蓮は思わず笑い声を漏らした。その様子は、本当にただの少女のように見える。
「水蓮ちゃん、殴られてる人を笑うとかひどい」
「自業自得だと思います」「自業自得よ!」
水蓮と泉蝶の言葉がかぶって、水蓮は再び笑い声を漏らす。
「なんだか、今日のみなさんは少し怖くて、歓迎されてないみたいでしたけど、泉蝶さんはやさしくて、志閃さんは程よくバカで、やっぱり禁軍はとっても楽しいです」
「『程よくバカ』ってひどっ……。俺年上よ?」
「精神年齢は三歳児だけどね」
「三歳児って……。泉蝶ちゃん。俺、こう見えて結構先輩だからね? 先輩は敬うべきっしょ?」
黒髪癖毛のところどころを金に染めわけ、細めの顔にややたれ目の金茶の瞳。真面目な顔をしていれば色男な彼は、二十代中ごろに見えるが、実際はもっと年上だ。
彼に限らず、仙術を扱う者の多くは実年齢よりも若く見られることが多い。気を扱うことが、老化防止に役立っているらしい。
「志閃さんおいくつなんですか?」
興味本位で水蓮が尋ねた。
「ん~? 永遠の二十歳だよ~」
「…………」
「志閃さんやっぱりバカですよね?」
水蓮がまた笑う。
「ねぇ、泉蝶さん。志閃さんっておいくつなんですか?」
「さぁ?」
泉蝶も首を傾げる。
「聞いてもごまかされるからわからないわ。でも、禁軍将軍で一番の古株は飛露のはずだから、飛露よりは若いと思うわよ」
「あいつも気の扱いうまいから、結構若く見えるけど、俺が禁軍にはいったときにはもうかなり偉ぁーいところにいたから、それなりにいってるはず。それでいつまでも帝様ラブなんだから、イタいよね~。親離れできないおっさんと一緒」
「あなたも似たようなもんでしょ」
泉蝶が突っ込む。
「違うよ。俺はぁ、女の子みーんなを愛してるの」
「不潔だわ」
「泉蝶ちゃん冷たすぎ。俺だって傷つくんだよ?」
「あたしには関係ないわ」
ふいと志閃から顔をそらす泉蝶。
「そういえばねー、王紀は最初俺の仙術部隊にいたけど、正直仙術はダメダメだったから、騎馬部隊にやったらすごかったって感じ。家柄がいいってのもあるけど、あっという間に将軍にまでなりやがってね。昔は『志閃将軍!』って呼んでたのに今では、『志閃は本当に変態ですよね』とか言ってくる始末。俺悲しい。歳はとりたくないよね~。俺たちの中では一番あとに将軍になったくせに一番偉そうだし。あ、一番偉そうなのは飛露かな?
しかも、王紀もてやがるし。なのに、女の子に声かけられてもつれないし。何あいつ」
「つまりあなたは、王紀があなた以上にもてるのが気に入らないのね……」
泉蝶がため息交じりに言う。
おびえる水蓮があまりにかわいそうで、泉蝶は水蓮をかばった。
「泉蝶」
王紀に冷たい目で見られる覚悟をしていたが、彼は悲しそうにほほえんだだけだった。彼女の内心の葛藤を察して同情しているのかもしれない。
「そうだぞ、王紀」
「あなたは黙っておいてください」
しかし、志閃には冷たい。
「僕は作戦本部に戻りますが、みなさんはどうされますか?」
そして、志閃以外の将軍にそう問いかける。
「用は済んだ。わたしも戻る」
飛露はそう言うや否や水蓮に声をかけることなく、病室をあとにした。鳥のことを問い詰めるつもりだったが、志閃のせいで時機を逃してしまった。
「オレも」と赤覇も飛露の後を追う。
「じゃあな」
低い声ではあったが、水蓮に声をかけるのも忘れない。
「俺は残るよ~」
「志閃ひとりは不安だから、あたしも少しの間ここにいるわ」
志閃と泉蝶は病室に残る意思を示した。
「そうですか。それでは明日の朝、水蓮さんの配属の話をしましょう」
「了解~」
「わかったわ」
そして、王紀も病室を出ていった。
「よ~し、邪魔者はいなくなった!」
その瞬間はしゃぎだす志閃。ふと気づけば、病室には志閃と泉蝶と水蓮。女が二人に、志閃を邪魔する男もいない。
「…………」
泉蝶はさりげなくこぶしを握りしめ――。
「あたりもいい感じに暗いし、ハーレムライ……ブッ!」
次の瞬間、志閃のほほにそれがめり込んだ。
「あはっ」
そのつぶれた顔が面白くて、水蓮は思わず笑い声を漏らした。その様子は、本当にただの少女のように見える。
「水蓮ちゃん、殴られてる人を笑うとかひどい」
「自業自得だと思います」「自業自得よ!」
水蓮と泉蝶の言葉がかぶって、水蓮は再び笑い声を漏らす。
「なんだか、今日のみなさんは少し怖くて、歓迎されてないみたいでしたけど、泉蝶さんはやさしくて、志閃さんは程よくバカで、やっぱり禁軍はとっても楽しいです」
「『程よくバカ』ってひどっ……。俺年上よ?」
「精神年齢は三歳児だけどね」
「三歳児って……。泉蝶ちゃん。俺、こう見えて結構先輩だからね? 先輩は敬うべきっしょ?」
黒髪癖毛のところどころを金に染めわけ、細めの顔にややたれ目の金茶の瞳。真面目な顔をしていれば色男な彼は、二十代中ごろに見えるが、実際はもっと年上だ。
彼に限らず、仙術を扱う者の多くは実年齢よりも若く見られることが多い。気を扱うことが、老化防止に役立っているらしい。
「志閃さんおいくつなんですか?」
興味本位で水蓮が尋ねた。
「ん~? 永遠の二十歳だよ~」
「…………」
「志閃さんやっぱりバカですよね?」
水蓮がまた笑う。
「ねぇ、泉蝶さん。志閃さんっておいくつなんですか?」
「さぁ?」
泉蝶も首を傾げる。
「聞いてもごまかされるからわからないわ。でも、禁軍将軍で一番の古株は飛露のはずだから、飛露よりは若いと思うわよ」
「あいつも気の扱いうまいから、結構若く見えるけど、俺が禁軍にはいったときにはもうかなり偉ぁーいところにいたから、それなりにいってるはず。それでいつまでも帝様ラブなんだから、イタいよね~。親離れできないおっさんと一緒」
「あなたも似たようなもんでしょ」
泉蝶が突っ込む。
「違うよ。俺はぁ、女の子みーんなを愛してるの」
「不潔だわ」
「泉蝶ちゃん冷たすぎ。俺だって傷つくんだよ?」
「あたしには関係ないわ」
ふいと志閃から顔をそらす泉蝶。
「そういえばねー、王紀は最初俺の仙術部隊にいたけど、正直仙術はダメダメだったから、騎馬部隊にやったらすごかったって感じ。家柄がいいってのもあるけど、あっという間に将軍にまでなりやがってね。昔は『志閃将軍!』って呼んでたのに今では、『志閃は本当に変態ですよね』とか言ってくる始末。俺悲しい。歳はとりたくないよね~。俺たちの中では一番あとに将軍になったくせに一番偉そうだし。あ、一番偉そうなのは飛露かな?
しかも、王紀もてやがるし。なのに、女の子に声かけられてもつれないし。何あいつ」
「つまりあなたは、王紀があなた以上にもてるのが気に入らないのね……」
泉蝶がため息交じりに言う。
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