間違って聖剣抜きました。

勝研

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一般人強くすれば良いんじゃない?

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**弱い君、強くなってみないか!!**

我々勇者サポート・ヒューマン・エンジニアリング(YSHE)は応募して頂いた、一般の対象者を勇者にし、魔王と戦い勝利してもらおうというボランティア団体です。

勇者の素質がない貴方でも落ち込む心配はありません、我々YSHEが必ず貴方を立派な勇者にします。

魔王を倒して英雄に?!広がる薔薇色の人生をあなたの手に!!

ココが凄い①
給料は手取り30万ピコを保証+社会保障も充実!!さらに社宅完備(特訓場までの距離はなんと5分、更に近くには総合アミューズメントパークもあり、特訓の疲れもこれで解消!)

ココが凄い②
どんな人も勇者に出来るという、世界最強の戦士Rさんの完全サポート付き。分かりやすく簡潔に更に負担なく、貴方を勇者にしてくれます。えっ腕立て伏せが一回も出来ない?!そんな貴方も彼のトレーニングで立派なガチムチマッチョになれる。

ココが凄い③
アットホームな職場。特訓場の空気はいつも明るく、参加者全員が笑顔になれる。美人のマネージャーJさんはカウンセラーの資格を持ち、貴方を精神的・肉体的にケアしてくれます。何度もいいましょう《彼女》は・KA・RA・DAを最恍《さいこう》の状態にしてくれます☆

気になった貴方!応募ハガキに名前・住所を書くだけで、君は今日から成功を手に出来る!!

********************

「結構応募者が少なかったのだ。こんなに好条件なのに謎なのだ。好条件過ぎて怪しかったか?」

応募者の返信ハガキを見る燕尾服を来た完璧超人のラファエルは手紙のあまりの少なさに落胆する。

「やはり、一般人を勇者にする計画には無理があったのでは無いでしょうか。(怪しいというか、詐欺で騙す気満々の文章というか、、まぁ来ない方がこちらとしては助かるけど)」

今回の計画で美人相談員担当になったジェラードは応募ハガキを見つめ苦笑する。

「何を言うか。確かに勇者は生まれながらに勇者の資質を持つのだ、しかしそれは思考の停止なのだ。一般人でも鍛えあげれば、勇者になれる。人間頑張ればDNAすらも書き換えられるのだ!」

そう言いながら、ラファエルは《たった2枚応募ハガキ》を見る。ジェラードもそれを横から覗き込む。

「二人とも審査など要らないのだ!迎えに行くぞ。二人を最強の一般人にしてやるのだ。ジェラードはそこにいるのだ!トウ。」

そして空高くジャンプする。
 
ビォーン、キラン。



「ぼぼ、僕はタナカっていいます。勇者目指してますんで宜しくお願いします。」

「ハッハッハッ。ワン!」

一人と一匹が自己紹介をする。

タナカは本当に《極普通の青年》の様だ。大型犬は全身が白色のグレート・ピレニーズで牧羊犬として知られている有名な犬種であった。一般的と言えば一般的といえなくはない。

「なっ、何故犬なんですか?!」

若干興奮したジェラードが犬を指差してラファエルに質問する。ラファエルは当然のように答える。

「犬の飼い主が応募者だったのだ。だが借金で借金取りに連れていかれた、その時に交代要因として渡されたのがこの犬なのだ。この小説にはマスコット的な存在がいないので丁度良いだろう。」

「不味いですよ、これから特訓やらで痛め付けるんですよね。動物愛護の方から苦情が来るかも知れません。」

「むむっ、それは問題なのだ。」

キュッキュッキュツ。

ラファエルは犬の首に看板をぶら下げる。

〈この犬は実在しない犬であり。このファンタジー世界における人狼です。痛みに対して耐性があり、真っ二つにされても問題ありません。〉

********************

トレーニング場は何もない空き地が広がっていた。砂埃舞うその場所でラファエルが口を開く。

「先ずは腕立て伏せ1万回、腹筋一万回、背筋一万回をやってもらうのだ。犬は、、お手、お代わりを一万回なのだ!」

「ちょっと待ってください!ラファエル教官!無理です。僕は腕立て伏せ何か5回ぐらいしか出来ませんし、それじゃあ強くなりませんよ。」

「??強くならないとはどういう事なのだ?」

「えっと、この世界では強くなるためには魔物、強いモンスターを倒さないと強くなれないんですよ。経験値が手に入らないから、、」

「なっなんと!筋力や持久力アップの複合トレーニングや技術習得で強くなるのではなく。お前たちは経験値式方式で強くなるのか?!何匹倒せば良いのだ?その〈魔物〉とやらを。」

「えっと、、大体経験値上限は2百万位なので弱い魔物なら多分20万匹とかですかね。強いのならもっと少なくて良いはずです。」

「そんな時間は無いのだ、手っ取り早くレベルを上げるのだ。強敵っぽい奴ならいいのだな。ジェラード、強い魔物やモンスターは何処にいる?」

「えっ?!」

ジェラードは考える、もしかしたらこれはチャンスかもしれない。確かにラファエルは強い、だがもしあらゆる罠に嵌めそして最強の魔王軍幹部をぶつければ、勝機は十分にある。いやもう、コレが駄目なら魔王軍では誰も勝てない。

「暫くお時間を頂ければ、最高の場所をご用意いたします。」

「凄いんですねジェラードさんは一体何者何ですか?」

「ジェラードは魔王の使用人なのだ。」

驚くタナカ。青い顔をして歯をガタガタ鳴らす。

「(なんで魔王軍の関係者が?意味が分からない、意味が分からないよぉ)」

「よし、出発なのだ!」


〈スゴイドウクツ〉

「ケケケッ、ここはスゴい洞窟。魔物がひしめく最凶の洞窟だ。ありとあらゆる罠と魔物が貴様を地獄へーヘブン!」

ドゴン!

瞬間ラファエルに殴られ、鷹の上半身が壁にめり込みピクピクと痙攣する獅子の下半身。それはグリフォンという強い部類に入る魔物だった。

「五月蝿いのだ。タナカに魔物について聞けないのだ。これが魔物なのか?」

「そっそうです。」

「では経験値を手に入れるのだ。」

「あっはいトドメをさせば、経験値が手に入るはずです。えーと武器は、、剣が良いかな。」

地面に武器を並べてトゲがついた棍棒や剣を、見比べ品定めするタナカ。

「普通の顔をしてトンデモナイ凶悪な言葉を吐く男だ、末恐ろしいのだ。期待できるのだ。」

タナカと犬はピクピクと痙攣する魔物を剣で刺したり、噛み付いたりしてダメージを与えるがその硬い皮膚に傷一つ付かない。だが一時間するとグリフォンの体は光に分解され消えた。

ジェラードと共にオセロを楽しんでいたラファエルはそれに気が付く。

「おおっ、倒したか!しかし、映像的にやはり絵面が暴力的なのだ。苦情が来るのだ。」

キュキュキュ。

ラファエルは犬の首に看板をぶら下げる。

〈このファンタジー世界における魔物は殺されても輪廻転生に従い復活します。また痛覚に耐性があるため痛みを感じません。時々聞こえると思われる声は効果音であり、実際の映像とは関係ありません。〉


ラファエル一行(ジェラード除く)は洞窟を進む。

「コロセェ!人間だ!人間!!ブッ殺せ!!」

「ヒヒハャ、良く来たなぁー」

ドゴンドゴン。

先程と全く変わらず、頭が壁にメリ込む二匹。躊躇なくタナカと犬はそれにトドメをさしていく。

「以外に早くレベルアップ出来そうなのだ。んっ??」

ドグワシャ!

壁がいきなりラファエルを挟む。消えるラファエル。だがー

「なかなか楽しいアトラクションなのだ。」

ガゴン!

壁そのものが砕けて、瓦礫から中から現れたラファエルは無傷だった。

一行は更に進む、至るところに魔物と罠が張り巡らしてあった。ラファエルは致死製の罠を受けるが全くダメージはない。そしてー

「ウギャ。」

バキッ。

「グエッ。」

バキッ。

「ウキャ。」

次々に経験値にされる魔物達。タナカと犬は確実にレベルアップしていった。

ータナカー
村人
レベル15
HP46
MP0
攻撃力33
防御力25
素早さ21
運63

ー犬ー

レベル23
HP122
MP36
攻撃力92
防御力75
素早さ65
運73



「四天王様!第一次防衛ラインが突破されました!!」

しかしその報告に動じた様子はない四天王。

「そんな事は想定内よ。だが次は我々四天王をも苦戦する魔物と罠が奴等をー」

「すいません!第二次防衛ラインもたった今突破されました!罠が完全に役に立たず、また侵入した人間が思いの外強いようです!」

「、、フフフ。ハハハッ!!」

「大変です!最終防衛ラインが突破されました!もうすぐにこちらにやつらが来ます。四天王様お支度を!」

「えっ?!早くない、早いよね!1分位だよね今の!!新記録じゃない?ここまでの道中その時間で来るのちょっと異常じゃない?」

「お支度を!」




魔物を倒し続け、壁を破壊し。時には地面を潜り、ラファエル達は玉座がある大広間に足を踏み入れる。

ドスン。

扉は全員を飲み込むと再び固く閉ざされた。

チャララララ~ン。

「むむむっ。」

辺り一面魔物が犇めいている。待ち構えていたことは一目瞭然であった。

「ひひぃ!〈魔物・家〉状態だぁ!」

「うぅーガウガウ。」

王座には四人の一際大きい魔物がいた。

「百獣王ハギャン!」

「魚海王プレンタン!」

「爬虫王マルシャ!」

「そして四天王統括・闘鬼王オルガン!」

圧倒的な威圧感逃げ道は閉ざされている、タナカと犬は震えて立ち尽くすしか出来なかった。

「おおっ、何か強そうなのが出てきたのだ。経験値にするのだ!」

あまりの言葉にオルガンは苦笑する。

「己の力を知らぬ愚か者めが。この部屋は閉ざされた逃げ道はない、ゆっくり料ーヘブン!」

ドゴン!

見えないスピードでオルガン吹き飛び、壁に上半身をメリ込ませていた。瀕死の状態なのか下半身はピクピクと痙攣している。

「えっ?」

「あっ?」

「んっ?」

残りの四天王が状況を飲み込めないでいる。

トタトタトタ。タナカと犬は条件反射なのかオルガンを攻撃する。グサッ、ガブガブ、ズシャ。パアァァ。

光に変わるオルガン。

「どうなのだ、経験値は?」

「まぁまぁです。でも駄目ですね、これじゃあ《ココの魔物全部を経験値にしても》レベルを最高に出来ませんよ。はははは。」

人間達の場に相応しくない会話。魔物達は理解した。多分間違いなく、自分達は殺されて経験値にされるだろう、何故なら初めに倒されたオルガンは四天王でも最強の存在であり、それをたった一撃で倒すなど魔王にも出来ないのだから。

「しょうがないのだ、少しでもいいから経験値を貯めるのだ。」

ガタガタガタ。

恐怖、それは恐怖だった。残りの四天王はラファエルの目を見た瞬間に死を覚悟した。そして彼等が言っていた言葉を思い出す〈経験値〉これだ。

「ああ!あの経験値が欲しいのですよね!?我々を殺すことが目的ではなく。」

「うむ。経験値がたくさん欲しいのだ!」

「なら良いのがいますよ〈メタルグミ〉です。」


========魔物通販メタルグミ編=========

「マイケルどうしたのそんなに落ち込んで? 」

「ジェニファーか、実は俺レベルが上がらなくて困っているんだ。強い魔物を倒しても経験値は微々たるもの、、もう参っちまうよ。」

「うふふ、マイケル。実は貴方に良いものがあるの。」

「何だって?!」

「これよ【メタルグミ】」

「ちょっと待ってくれよ、グミは弱い序盤の魔物じゃないか、、経験値1だろ。」

「違うわ。この【メタルグミ】の経験値はなんと一万なのよ。」

「な、、何だって!!そいつは凄い!」

「しかも倒しやすくて、反撃もない。お手軽なレベルアップにピッタリ!」

「マジかよジェニファー。でも高いんだろ、、」

「それがね、今回はメタルグミの人工生産に成功して、値段は天然の100分の1にまでコストカットできるようになったのよ!」

「ワオ!そりゃあ、たまげた!」

「今ならなんとお値段10000ピコ!10000ピコで簡単お手軽レベルアップ生活が貴方の手に!」

「さぁ、皆も俺と一緒にお手軽レベルアップしてみないか?!」

====================================

「実はこのメタルグミは強力な魔物を産み出す過程で生まれてしまう副産物でして、我々としても無くすことは出来ないんですよ。魔物は魔物を殺せない誓約が掛かっていますからね。」

地下の研究所らしき所に移動する四天王とラファエル一向。辿り着いたのは魔方陣が書かれた部屋だった。隅にはメタルグミがプニプニと移動している。

「ここが生産場です15匹程いますよ。」

「、、15匹?少ないのだ、もっと寄越すのだ。」

ハギャンの胸ぐらを掴むラファエル。

「無理ですよ、強力な魔物を産み出す過程で産まれる魔物ですよ。生産するには膨大な魔力がいるんですぅ。」

「なら私がやるのだ。ここに手をかざせば良いのだな。」

二つの一メートル程の高さの禍々しい鉄柱に掌を乗せるラファエル。

「ちょ、ラファエルさん?!壊さないでくださいよ。」

「ちょっとだけなのだ。安心するのだ。」

ゴゴゴゴッ。ブオオォンン!!

地震、そして魔方陣が激しく輝く!

ドゴゴゴゴン!

「邪竜王ワグガラン」

「覇蛇王ウーギン」

「時空王マヌチック」 

「病繁王ガルジャワ」

四天王すらも凌駕すると思われる存在が今ここに産まれた。だがラファエルは副産物に目をやる。

「おおっ、何だか【でっかいメタルグミ】がいっぱい現れたのだ。倒せタナカ!」

「はいぃラファエル教官!」

「ガウガウ。」

百匹の【ジャンボ・メタルグミ】魔物を倒したタナカと犬はレベルが最高になり、ホクホク顔でスゴイドウクツを去っていった。



広い荒野、地面に刺された聖剣。その前にはタナカの姿があった。自信満面のタナカ、頷くラファエル。

「さぁ、タナカのレベルは最高なのだ!これなら聖剣を持てる筈なのだ!行くのだタナカ!」

「はい、ラファエル教官!」

ガシッ!

「アバババ!」

電流が流れる、しかしタナカのレベルは最高。魔物ではない為、致死性ではない電流はタナカをボロボロにしていくがタナカはあきらめない。あと数秒なら耐えられそうだ。

「伝説の始まりなのだ。ウム。」

「、、、教官、、」

「何なのだタナカ?」

「、、持ち上がりません。アベべシ!」

ドサリ。

黒こげになって倒れるタナカ。

「、、、」

駆け寄るラファエルはタナカの口が動いた事に気が付き耳を寄せる。

「、、あの、、」

「何なのだ?」

「チラシの【ココが凄い③】、、ジェラードさんに僕を、最恍の状態に、、してほしかった、、」

ガクッ。

「タナカァ~!!」

「ワゥーン!」



********************

人類連合軍戦力。

加入戦力レベル+198
総戦力176698(レベル合計値但しレベル10以下は戦力外の為、含まれない。)

ータナカー(負傷中)
村人
レベル99
HP221
MP0
攻撃力95
防御力88
素早さ62
運153

ー犬ー

レベル99
HP450
MP80
攻撃力235
防御力201
素早さ285
運121
【魔術】
ハウリングショット
キュア

魔王軍戦力。

離脱戦力-15060(オルガン含む)
参加戦力+4000
総戦力116807

魔王軍被害額

スゴイドウクツ罠修理代。
11,500,020ピコ

スゴイドウクツ修理代・設備損失額
2,468,860ピコ

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