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一から造れば良いんじゃない?
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ある古びた飲食店。
燕尾服に聖剣を携えたラファエルと魔王の腹心ジェラードは食事をしていた。ラーメンを啜りながら魔道通信テレビを見る二人。
『魔王軍の猛攻は続いており、中でも最も恐ろしいのが魔王が直接産み出したとされる四大魔人です。ワグガラン、ウーギン、マヌチック、ガルジャワ、それぞれが魔王に匹敵する強さを誇るとされています。ご注意下さい、新しい脅威を!四大魔人を!!ここも*々\&ー、、』
ガガガーッ、プツン。
映像水晶がプツリと切れて、真っ暗になり。ニュース番組が中断される。
ラファエルの視線が鋭くなる。ズリュルルル~とラーメンの麺を一気に口で啜るといきなり立ち上がった。
ガタ。
「彼方は本気、最早一刻の猶予も無いのだ。それに聖剣を扱える勇者、そのヒントを得たのだ。」
「えっ?」
「四大魔人は【魔王が作った】。ならそれをオマージュして、人工勇者を生産するのだ。そして量産体制を確立することで、数百の人工勇者のうち聖剣を扱える人工勇者を一人作り出す。これがワンオブサウザント計画なのだ。」
「???」
ジェラードにはラファエルが何を言っているのか理解不能だった。ラファエルはそんな視線に答えるように雑誌を懐から取り出す。〈マジック・ネイチャー〉という商業誌だ。
「ホムンクルス研究所に行くのだ!」
〈スゴイマホウトシ〉
「ここはスゴイマホウトシの国立ホムンクルス研究所だ。俺は産業スパイを見張る警備員だ。なんだ貴様らは産業スパイか?もしくはスパイ的な何かだろう?」
「いや開発を手伝いに来た一般人なのだ。」
「、、そうか、なら通って良いぞ。」
ガチョン。
あっさり歩行者用のゲートを開ける警備員。
「手荷物・身体検査をしないのか?」
「男に興味は無い、、次の美人はちょっと待て、怪しいな、、その【胸のところが特に】、、スパイ的な何かが感じられる、脱いで見せてみろ。」
警備員の舐める様な視線の先にはジェラートの大きな胸があった。ジェラートはその視線から守るように両腕で胸を隠す。
「嫌です。というか、これ以上セクハラ発言をすると蹴りますよ。」
「、、良いだろう、蹴ってみろ。その蔑んだスパイ的な目で見ながら俺の尻をスパイ的に蹴飛ばしてみろ!」
尻をつき出して腰を落としコイコイと両手で挑発する警備員。
ガッ!ガッ!ガッ!
革製のヒールを履いているジェラードのマジ蹴りが警備員の尻に炸裂するが、警備員は恍惚な表情を浮かべるだけだ。
「スパイ容疑が晴れたら追ってくるのだ。」
ウイィー!!
=======ホムンクルス3分創作編========
「本日の三分創作はホムンクルスです。」
「ホムンクルス、旬ですね。美味しそうです。」
「ん?ん?違うよ。人型の魔法生物です食べられません。これ料理番組ではないので気を付けてね。先ず用意するのは培養液です、育てる為にはコレが一番大事です。これを透明な容器に入れます。」
「やはり、スープが重要であると、、」
「うん、うん、うん、離れようねー、料理から離れようねー。重要だと言われるのは、この液が後に血・肉を作る一番大事な要素になるためです。次はー」
「お肉ですか?ミンチですか?」
「僕は君をミンチにしたいよ~。人の体液(血や精液)です、この量は好みですね。これが出来上がる際の容姿や能力に影響します。」
「私は薄味が好きなので。入れすぎないでね。」
「やっぱり素材を生かすには、ってバカ!!君の好みを聞いてないの。」
「段々言葉が辛辣になってきましたね~。」
「そして最後に一番重要なのは世界樹の新芽です。これが心臓になります。これを最後に容器に入れて完成です。どうですか?」
ズルズルズル。
「美味しかったです☆」
=========================================
「ーという訳で人工勇者を作って欲しいのだ。」
「何が〈ーという訳〉か分からないが、いきなり何言ってる、コイツ。誰じゃ?一般人か??ここ武装警備員やセキュリティの扉をどうやって通った?」
そこは研究室だった、広い試験管などが乱雑に置かれた研究所に二人だけの白衣を着た研究員。会話しているのは60代の初老の男性で長い白髪頭の片眼にモノクルを掛けた研究所所長のキチ博士である。
「警備員は〈勇者かどうか調べたら〉逃げ、扉なら押したら開いたのだ。横開きではなく縦開きだったのだな。」
セキュリティの扉が片方が床に倒れている。
「どちらかというと〈自動開き〉じゃがな。」
「とにかく人工勇者を作ってくれ、金ならいくらでもあるのだ。」
ラファエルはやりての営業マンさながらに《懐から巨大なアタッシュケースを取り出す》、だがキチ博士は見向きもしない。
「そんなものはいらん!ワシはホムンクルス研究が好きなだけじゃ、そしてボインの女型ホムンクルスを作るのが夢なんじゃ!!」
「ホムンクルスが好きなのかボインが好きなのか、分からないのだ。」
「ボインが好きじゃ!ホムンクルスなどどうでも良い!というかナンじゃホムンクルスって、面倒なだけで絶対その金と時間でキャバクラ通いした方が良かったと、今さらながら後悔しとるわ!」
あまりの即答ぶり・己の研究に対する客観的な評価に感心するラファエル。
「なら胸の大きな女の人工勇者を、沢山量産すれば良い。これなら狂科学者もニッコリなのだ。」
「そうしたいが、今は無理なのじゃ。原材料となるボイン女の体液は手に入れたが、一番重要なホムンクルスの核となる材料が足りないのじゃ。【世界樹の新芽】がな。」
「ほうほう。」
「世界樹の新芽は世界最強の守り手である聖獣と聖獣の世話をする多くのエルフが厳しく管理している。今年の研究分は去年使い、来年分と再来年分を前借りして、今年は倉庫に閉まっておいたのだが、研究が思いの外進まず完成にこぎ着けた時には倉庫の在庫は空になっておった。こうなれば明明後年の分を~。」
「借金が雪だるま式に増える駄目な国家みたいなのだ。将来破綻するのだ。」
「破綻しても技術は残るし、借りとるのは国じゃから借り逃げという手もあるがの。とにかくじゃ、今ホムンクルス研究は滞っておる。聖獣を説得するか、エルフの首を縦に振らせるしか方法はない。」
「なら私に任せるのだ、華麗な交渉で必ずヘヴィメタのヘッドバンギング並に、激しく首を上下に振らせて見せてみせるのだ。」
キチ博士の眼光が鋭くなり、ラファエルを見据える。
「お主、凄腕のネゴシエーターか?」
「うむ。そういっても過言ではないのだ。それでは世界樹の新芽を取って取って取りまくりに、エルフの住む所に行くのだ。」
「うほほほっ、ステラーカイギュウの様に乱獲するかのような発言!頼もしいのう。」
【エルフノカクレザト】
世界樹の下はジャングルの様な森に囲まれ人や魔物すら寄せ付けない高度な結界によって護られていた。
通ることが出来るのは結界を無効化する護符を持つエルフの住民と一部交流のある国の高官か限られた技術者だけだろう。
ジャングルの奥には神殿があり。世界の護り手たる〈神獣〉のホワイトドラゴンが数十メートルはあろうかという巨体を玉座というにはあまりにも大きな台座に蛇のように体をあずけていた。
バタバタバタ!
「聖獣様!!大変でございます!」
「どうした?」
一人のエルフが血相をかいて玉座に現れる。
「人間が世界樹の新芽を狙ってこの里を襲撃してきました!」
「何だと!!自らの力を過信した人間どもめ、今まで温情によって新芽を恵んでやっていたのに、それを仇で返すとは!何百何千の軍勢で来ようとも結界と我がいれば世界樹の護りに不足は無いわ!」
「それが、、その、、相手は二人でして!しかも若い人間の方は結界の効力が効いていない様子で、何がナンだか。」
「??」
ドゴン!!
神殿の強固な防御結界が張られた扉が外からの衝撃で吹き飛ぶ。現れたのは若い人間の男と老人だ。
「おおっ、なんかデッカイ竜がいるのだ!あれが一番偉い聖獣か?聖獣にも色々いるのだな。」
「物理交渉とは、、ホントにネゴシエーターか、お主?」
「何を言うのだ。拳を使った会話は古来からあるものなのだぞ、言葉による話し合いはこれから始まるのだ。」
ラファエルは聖獣に怯えること無く、王座に近付き、睨むホワイトドラコンに要求する。
「新芽を全部寄越すのだ。」
「ぬうん!」
ガゴン!
返答はホワイトドラゴンの強力な前足だった。その一撃をまともに受けたラファエル━━━━
「いたぁ!」
が反応する前にドラゴンの巨体が激痛のため跳び上がる。ラファエルを思い切り殴り付けた為に鉤爪と指の骨がボロボロ・バキバキに砕けたのだ。
「ナンだ、なんだ!ナンなのだ?!お前の体はオリハルコンで出来ているのか!!?ちょっと何コイツぅ!」
涙目になって振り返りエルフに意見を求める聖獣。
「に、、人間かと。」
「いや、無いから。魔王クラスだって結構ダメージあるはずだもん今の一撃。それが、、いたた、絶対折れてるよコレ。これ回復魔法じゃ治らない系だよ、もー。」
愚痴るドラゴンを見て、ラファエルは決断する。
「交渉が決裂なら仕方ないのだ。最後の手段でボコボコタコ殴り、世界樹の新芽を〈温情〉で恵んでもらうのだ。」
「ネゴシエー、、まぁエエか。なんかもらえそうだしのぅ。」
ラファエルの目を見て聖獣の全身がこおりつく。瞬間にして格の違いが判ったからだ。
「ちょっ、待って!新芽が欲しいんですよね?!」
「うむ。全部欲しいのだ。」
「いや、、全部はちょっと、、世界樹の新芽を全て取ったらエライ事になりますよ。木の生命力は落ち、世界樹は枯れて、新芽から精製される医療用の薬も流通しなくなりますし、、。」
「なら、、半分で手を打つのだ。これ以上は負からないのだ。出来れば値段はタダが良いのだ。」
「ヒェー。滅茶苦茶だよーコイツー。」
世界樹
世界樹はあまりにも高く成長し、雲より高いその頂を見た人間はいないという。世界樹の根もとには新芽を取りやすくした高台が設置され、世界樹の新芽を定期的に採取出来るように厳しく管理されていた。
「取って取って取りまくるのだ。」
「ちょっ、上の方に成っている葉は毒素が強くて研究用には向きません、こちらの日光に遮られていて、毒素が弱い幹部分の玉露的な新芽を取ってください。」
最早威厳もない、〈世界樹新芽狩りツアー〉の係員となった聖獣はラファエル一行を世界樹の新芽栽培場まで案内していた。
ブチブチ。ブヂヂヂーン!
無理矢理新芽を掴むと根元から引きちぎるラファエルを見て絶句する聖獣。
「あーあーー!!ちょっとラファエルさん。そんなシングルのトイレットペーパーを引き千切る様に、無理矢理とったら世界樹がぁ。ちょっちょと待って!」
「ナンなのだ、うるさい聖獣なのだ。こっちは客なのだ。お客様は東照大権現の様に敬うのだ。」
「神様って意味ですか?せめてお金を払って言って欲しい台詞ですよ、、あの、、ラファエルさんはそこで見ているだけで良いですから。エルフ達は全員で収穫をして、運びやすいよう梱包してくれ。」
ラファエルを世界樹にあまり長居させたくないのか急ピッチで作業が進められ、日暮れ前には積込は終わったのだった。
〈スゴイマホウトシ〉
「そろそろ、ボインが誕生するぞ!」
「もうホムンクルスや勇者ではなく、ボインという言い方なのだな、潔いのだ。」
「スイッチオン!」
ポチ。
ブオォォォオン。プシィー。
大きな装置が光を発し蒸気の中から裸体のホムンクルスが現れる。
「ムッ!」
キチ博士は目をキラキラ輝かせるが、ホムンクルスが裸体を完全に晒す前にラファエルが照明の灯りを最大にする。
ピカー。
「眩しい!なんじゃ??謎の光で大事な部分が見えんぞ!!?」
「全年齢対象の健全な青少年の小説なので、裸体は不味いのだ。BANされるのだ。」
「お主は何を言っているんじゃ!あーあー!何も見えん、なーんにも見えん!画面が白い光で全く見えん。今までの研究成果が。」
「世話の掛かる博士なのだ、仕方がないのだ。」
ラファエルはキチ博士に奇抜なサングラスを渡すと肝心の部分が見えたのか、鼻の穴から鼻血を垂らしながら感涙している。
全身がライトによって光輝くホムンクルスにラファエルは近寄り、腰にさしている聖剣を引き抜くとホムンクルスの目の前に付き出した。
「これを持ってみるのだ、ちょっとビリっとするかも知れないが我慢するのだ。」
ズドン。
ホムンクルスが聖剣を持ちやすい様に、地面に突き刺す。
実際は対象者以外を黒焦げにする聖剣だが、それをホムンクルスは考えなしに無言で手に取る。
考えなしに聖剣を握ったのはホムンクルスが生まれたてで赤ん坊程の知能しか無いためだ。
にぎにぎ。
聖剣には何も反応はない、ホムンクルスは柄に手を確実に触れていた。ラファエルは不思議に思い、聖剣に触る、するとやはり聖剣はラファエルを拒絶するように通常対象者の数百倍の電流をラファエルに流した。
「??不思議なのだ、ホムンクルスは聖剣の拒絶反応であるビリビリが発生しない?まさか選ばれた【勇者】なのか!!やったのだ!!勇者なのだ!!これで世界は救われたのだ!!!」
ワーイワーイワーイ。
そして世界は平和になった。
≪間違って聖剣抜きました。≫
【完】
しかし、みるみるラファエルの顔が難しいものになる。
「むむむっ。」
ホムンクルスは命令に反して聖剣をいつまでも持ち上げることはなかったからである。段々イライラしてきているラファエルにキチ博士が訪ねる。
「なんじゃ、あの剣は?」
「あれは聖剣なのだ。いつもなら触れた時にビリっとするのでホムンクルスが認められたと思ったのだが。重すぎるのだろうか?」
ラファエルは聖剣を軽量化しようと考えているのか【聖剣にチョップをして丁度良い長さ】にしようとした時。
キチ博士は顎に手を当て結論を言う。
「ホムンクルスは完全な生物ではないぞ。アレの体の半分はどちらかといえば精霊に近いからの。ナンつーか、認められたというよりは【相手にされてない】ンじゃねーのかの?」
その可能性が大なのだが、ラファエルは諦めなかった。
「、、まだなのだ!沢山人工勇者を生産すれば!!邪教の館でも256分の1で事故が起きて、珍獣等が誕生するのだ!」
「頼むのだ、邪教の館の主よ!」
「フム良くわからんが、ボインの為だ。作るかの。」
部屋には埋め尽くされた、人工勇者が立ち並ぶ。
その数1035人。
休むこと無く勇者を量産したが聖剣を持ち上げたホムンクルスはいない。それどころか、、
「役立たずなのだ。」
実はホムンクルスの腕力は人間よりも弱く、聖剣処か普通の模造刀ですら持ち上げられない欠陥品だったのだ。そして戦闘能力に至ってはキチ博士にすら及ばなかった。
「まぁ、本来戦闘向きに作るような種族でもないし、ワシの愛玩用じゃからな。」
「パワーisジャスティスなのだ!!ボインなんて嫌いなのだ、もう計画は中止なのだ。」
ラファエルは渋々、聖剣を手にもつとキチ博士に柄を向けた。キチ博士の方がまだ聖剣に認められる可能性が高かった、決して八つ当たりを考えてのことではない。
「、、、ホホッ。まぁそうなるかの。」
zzzZZZZZT!!
こうしてキチ博士は夜空に彩られたのだった。
キラーン。
********************
エルフカクレザト被害額(世界樹の新芽含む)
24,851,700,000ピコ
守護獣治療費
450,000ピコ
スゴイマホウトシ被害額
警備員治療費(火傷22人、キチ博士〈アフロ+軽症〉、重傷者〈お尻〉1名)
47,300,250ピコ
燕尾服に聖剣を携えたラファエルと魔王の腹心ジェラードは食事をしていた。ラーメンを啜りながら魔道通信テレビを見る二人。
『魔王軍の猛攻は続いており、中でも最も恐ろしいのが魔王が直接産み出したとされる四大魔人です。ワグガラン、ウーギン、マヌチック、ガルジャワ、それぞれが魔王に匹敵する強さを誇るとされています。ご注意下さい、新しい脅威を!四大魔人を!!ここも*々\&ー、、』
ガガガーッ、プツン。
映像水晶がプツリと切れて、真っ暗になり。ニュース番組が中断される。
ラファエルの視線が鋭くなる。ズリュルルル~とラーメンの麺を一気に口で啜るといきなり立ち上がった。
ガタ。
「彼方は本気、最早一刻の猶予も無いのだ。それに聖剣を扱える勇者、そのヒントを得たのだ。」
「えっ?」
「四大魔人は【魔王が作った】。ならそれをオマージュして、人工勇者を生産するのだ。そして量産体制を確立することで、数百の人工勇者のうち聖剣を扱える人工勇者を一人作り出す。これがワンオブサウザント計画なのだ。」
「???」
ジェラードにはラファエルが何を言っているのか理解不能だった。ラファエルはそんな視線に答えるように雑誌を懐から取り出す。〈マジック・ネイチャー〉という商業誌だ。
「ホムンクルス研究所に行くのだ!」
〈スゴイマホウトシ〉
「ここはスゴイマホウトシの国立ホムンクルス研究所だ。俺は産業スパイを見張る警備員だ。なんだ貴様らは産業スパイか?もしくはスパイ的な何かだろう?」
「いや開発を手伝いに来た一般人なのだ。」
「、、そうか、なら通って良いぞ。」
ガチョン。
あっさり歩行者用のゲートを開ける警備員。
「手荷物・身体検査をしないのか?」
「男に興味は無い、、次の美人はちょっと待て、怪しいな、、その【胸のところが特に】、、スパイ的な何かが感じられる、脱いで見せてみろ。」
警備員の舐める様な視線の先にはジェラートの大きな胸があった。ジェラートはその視線から守るように両腕で胸を隠す。
「嫌です。というか、これ以上セクハラ発言をすると蹴りますよ。」
「、、良いだろう、蹴ってみろ。その蔑んだスパイ的な目で見ながら俺の尻をスパイ的に蹴飛ばしてみろ!」
尻をつき出して腰を落としコイコイと両手で挑発する警備員。
ガッ!ガッ!ガッ!
革製のヒールを履いているジェラードのマジ蹴りが警備員の尻に炸裂するが、警備員は恍惚な表情を浮かべるだけだ。
「スパイ容疑が晴れたら追ってくるのだ。」
ウイィー!!
=======ホムンクルス3分創作編========
「本日の三分創作はホムンクルスです。」
「ホムンクルス、旬ですね。美味しそうです。」
「ん?ん?違うよ。人型の魔法生物です食べられません。これ料理番組ではないので気を付けてね。先ず用意するのは培養液です、育てる為にはコレが一番大事です。これを透明な容器に入れます。」
「やはり、スープが重要であると、、」
「うん、うん、うん、離れようねー、料理から離れようねー。重要だと言われるのは、この液が後に血・肉を作る一番大事な要素になるためです。次はー」
「お肉ですか?ミンチですか?」
「僕は君をミンチにしたいよ~。人の体液(血や精液)です、この量は好みですね。これが出来上がる際の容姿や能力に影響します。」
「私は薄味が好きなので。入れすぎないでね。」
「やっぱり素材を生かすには、ってバカ!!君の好みを聞いてないの。」
「段々言葉が辛辣になってきましたね~。」
「そして最後に一番重要なのは世界樹の新芽です。これが心臓になります。これを最後に容器に入れて完成です。どうですか?」
ズルズルズル。
「美味しかったです☆」
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「ーという訳で人工勇者を作って欲しいのだ。」
「何が〈ーという訳〉か分からないが、いきなり何言ってる、コイツ。誰じゃ?一般人か??ここ武装警備員やセキュリティの扉をどうやって通った?」
そこは研究室だった、広い試験管などが乱雑に置かれた研究所に二人だけの白衣を着た研究員。会話しているのは60代の初老の男性で長い白髪頭の片眼にモノクルを掛けた研究所所長のキチ博士である。
「警備員は〈勇者かどうか調べたら〉逃げ、扉なら押したら開いたのだ。横開きではなく縦開きだったのだな。」
セキュリティの扉が片方が床に倒れている。
「どちらかというと〈自動開き〉じゃがな。」
「とにかく人工勇者を作ってくれ、金ならいくらでもあるのだ。」
ラファエルはやりての営業マンさながらに《懐から巨大なアタッシュケースを取り出す》、だがキチ博士は見向きもしない。
「そんなものはいらん!ワシはホムンクルス研究が好きなだけじゃ、そしてボインの女型ホムンクルスを作るのが夢なんじゃ!!」
「ホムンクルスが好きなのかボインが好きなのか、分からないのだ。」
「ボインが好きじゃ!ホムンクルスなどどうでも良い!というかナンじゃホムンクルスって、面倒なだけで絶対その金と時間でキャバクラ通いした方が良かったと、今さらながら後悔しとるわ!」
あまりの即答ぶり・己の研究に対する客観的な評価に感心するラファエル。
「なら胸の大きな女の人工勇者を、沢山量産すれば良い。これなら狂科学者もニッコリなのだ。」
「そうしたいが、今は無理なのじゃ。原材料となるボイン女の体液は手に入れたが、一番重要なホムンクルスの核となる材料が足りないのじゃ。【世界樹の新芽】がな。」
「ほうほう。」
「世界樹の新芽は世界最強の守り手である聖獣と聖獣の世話をする多くのエルフが厳しく管理している。今年の研究分は去年使い、来年分と再来年分を前借りして、今年は倉庫に閉まっておいたのだが、研究が思いの外進まず完成にこぎ着けた時には倉庫の在庫は空になっておった。こうなれば明明後年の分を~。」
「借金が雪だるま式に増える駄目な国家みたいなのだ。将来破綻するのだ。」
「破綻しても技術は残るし、借りとるのは国じゃから借り逃げという手もあるがの。とにかくじゃ、今ホムンクルス研究は滞っておる。聖獣を説得するか、エルフの首を縦に振らせるしか方法はない。」
「なら私に任せるのだ、華麗な交渉で必ずヘヴィメタのヘッドバンギング並に、激しく首を上下に振らせて見せてみせるのだ。」
キチ博士の眼光が鋭くなり、ラファエルを見据える。
「お主、凄腕のネゴシエーターか?」
「うむ。そういっても過言ではないのだ。それでは世界樹の新芽を取って取って取りまくりに、エルフの住む所に行くのだ。」
「うほほほっ、ステラーカイギュウの様に乱獲するかのような発言!頼もしいのう。」
【エルフノカクレザト】
世界樹の下はジャングルの様な森に囲まれ人や魔物すら寄せ付けない高度な結界によって護られていた。
通ることが出来るのは結界を無効化する護符を持つエルフの住民と一部交流のある国の高官か限られた技術者だけだろう。
ジャングルの奥には神殿があり。世界の護り手たる〈神獣〉のホワイトドラゴンが数十メートルはあろうかという巨体を玉座というにはあまりにも大きな台座に蛇のように体をあずけていた。
バタバタバタ!
「聖獣様!!大変でございます!」
「どうした?」
一人のエルフが血相をかいて玉座に現れる。
「人間が世界樹の新芽を狙ってこの里を襲撃してきました!」
「何だと!!自らの力を過信した人間どもめ、今まで温情によって新芽を恵んでやっていたのに、それを仇で返すとは!何百何千の軍勢で来ようとも結界と我がいれば世界樹の護りに不足は無いわ!」
「それが、、その、、相手は二人でして!しかも若い人間の方は結界の効力が効いていない様子で、何がナンだか。」
「??」
ドゴン!!
神殿の強固な防御結界が張られた扉が外からの衝撃で吹き飛ぶ。現れたのは若い人間の男と老人だ。
「おおっ、なんかデッカイ竜がいるのだ!あれが一番偉い聖獣か?聖獣にも色々いるのだな。」
「物理交渉とは、、ホントにネゴシエーターか、お主?」
「何を言うのだ。拳を使った会話は古来からあるものなのだぞ、言葉による話し合いはこれから始まるのだ。」
ラファエルは聖獣に怯えること無く、王座に近付き、睨むホワイトドラコンに要求する。
「新芽を全部寄越すのだ。」
「ぬうん!」
ガゴン!
返答はホワイトドラゴンの強力な前足だった。その一撃をまともに受けたラファエル━━━━
「いたぁ!」
が反応する前にドラゴンの巨体が激痛のため跳び上がる。ラファエルを思い切り殴り付けた為に鉤爪と指の骨がボロボロ・バキバキに砕けたのだ。
「ナンだ、なんだ!ナンなのだ?!お前の体はオリハルコンで出来ているのか!!?ちょっと何コイツぅ!」
涙目になって振り返りエルフに意見を求める聖獣。
「に、、人間かと。」
「いや、無いから。魔王クラスだって結構ダメージあるはずだもん今の一撃。それが、、いたた、絶対折れてるよコレ。これ回復魔法じゃ治らない系だよ、もー。」
愚痴るドラゴンを見て、ラファエルは決断する。
「交渉が決裂なら仕方ないのだ。最後の手段でボコボコタコ殴り、世界樹の新芽を〈温情〉で恵んでもらうのだ。」
「ネゴシエー、、まぁエエか。なんかもらえそうだしのぅ。」
ラファエルの目を見て聖獣の全身がこおりつく。瞬間にして格の違いが判ったからだ。
「ちょっ、待って!新芽が欲しいんですよね?!」
「うむ。全部欲しいのだ。」
「いや、、全部はちょっと、、世界樹の新芽を全て取ったらエライ事になりますよ。木の生命力は落ち、世界樹は枯れて、新芽から精製される医療用の薬も流通しなくなりますし、、。」
「なら、、半分で手を打つのだ。これ以上は負からないのだ。出来れば値段はタダが良いのだ。」
「ヒェー。滅茶苦茶だよーコイツー。」
世界樹
世界樹はあまりにも高く成長し、雲より高いその頂を見た人間はいないという。世界樹の根もとには新芽を取りやすくした高台が設置され、世界樹の新芽を定期的に採取出来るように厳しく管理されていた。
「取って取って取りまくるのだ。」
「ちょっ、上の方に成っている葉は毒素が強くて研究用には向きません、こちらの日光に遮られていて、毒素が弱い幹部分の玉露的な新芽を取ってください。」
最早威厳もない、〈世界樹新芽狩りツアー〉の係員となった聖獣はラファエル一行を世界樹の新芽栽培場まで案内していた。
ブチブチ。ブヂヂヂーン!
無理矢理新芽を掴むと根元から引きちぎるラファエルを見て絶句する聖獣。
「あーあーー!!ちょっとラファエルさん。そんなシングルのトイレットペーパーを引き千切る様に、無理矢理とったら世界樹がぁ。ちょっちょと待って!」
「ナンなのだ、うるさい聖獣なのだ。こっちは客なのだ。お客様は東照大権現の様に敬うのだ。」
「神様って意味ですか?せめてお金を払って言って欲しい台詞ですよ、、あの、、ラファエルさんはそこで見ているだけで良いですから。エルフ達は全員で収穫をして、運びやすいよう梱包してくれ。」
ラファエルを世界樹にあまり長居させたくないのか急ピッチで作業が進められ、日暮れ前には積込は終わったのだった。
〈スゴイマホウトシ〉
「そろそろ、ボインが誕生するぞ!」
「もうホムンクルスや勇者ではなく、ボインという言い方なのだな、潔いのだ。」
「スイッチオン!」
ポチ。
ブオォォォオン。プシィー。
大きな装置が光を発し蒸気の中から裸体のホムンクルスが現れる。
「ムッ!」
キチ博士は目をキラキラ輝かせるが、ホムンクルスが裸体を完全に晒す前にラファエルが照明の灯りを最大にする。
ピカー。
「眩しい!なんじゃ??謎の光で大事な部分が見えんぞ!!?」
「全年齢対象の健全な青少年の小説なので、裸体は不味いのだ。BANされるのだ。」
「お主は何を言っているんじゃ!あーあー!何も見えん、なーんにも見えん!画面が白い光で全く見えん。今までの研究成果が。」
「世話の掛かる博士なのだ、仕方がないのだ。」
ラファエルはキチ博士に奇抜なサングラスを渡すと肝心の部分が見えたのか、鼻の穴から鼻血を垂らしながら感涙している。
全身がライトによって光輝くホムンクルスにラファエルは近寄り、腰にさしている聖剣を引き抜くとホムンクルスの目の前に付き出した。
「これを持ってみるのだ、ちょっとビリっとするかも知れないが我慢するのだ。」
ズドン。
ホムンクルスが聖剣を持ちやすい様に、地面に突き刺す。
実際は対象者以外を黒焦げにする聖剣だが、それをホムンクルスは考えなしに無言で手に取る。
考えなしに聖剣を握ったのはホムンクルスが生まれたてで赤ん坊程の知能しか無いためだ。
にぎにぎ。
聖剣には何も反応はない、ホムンクルスは柄に手を確実に触れていた。ラファエルは不思議に思い、聖剣に触る、するとやはり聖剣はラファエルを拒絶するように通常対象者の数百倍の電流をラファエルに流した。
「??不思議なのだ、ホムンクルスは聖剣の拒絶反応であるビリビリが発生しない?まさか選ばれた【勇者】なのか!!やったのだ!!勇者なのだ!!これで世界は救われたのだ!!!」
ワーイワーイワーイ。
そして世界は平和になった。
≪間違って聖剣抜きました。≫
【完】
しかし、みるみるラファエルの顔が難しいものになる。
「むむむっ。」
ホムンクルスは命令に反して聖剣をいつまでも持ち上げることはなかったからである。段々イライラしてきているラファエルにキチ博士が訪ねる。
「なんじゃ、あの剣は?」
「あれは聖剣なのだ。いつもなら触れた時にビリっとするのでホムンクルスが認められたと思ったのだが。重すぎるのだろうか?」
ラファエルは聖剣を軽量化しようと考えているのか【聖剣にチョップをして丁度良い長さ】にしようとした時。
キチ博士は顎に手を当て結論を言う。
「ホムンクルスは完全な生物ではないぞ。アレの体の半分はどちらかといえば精霊に近いからの。ナンつーか、認められたというよりは【相手にされてない】ンじゃねーのかの?」
その可能性が大なのだが、ラファエルは諦めなかった。
「、、まだなのだ!沢山人工勇者を生産すれば!!邪教の館でも256分の1で事故が起きて、珍獣等が誕生するのだ!」
「頼むのだ、邪教の館の主よ!」
「フム良くわからんが、ボインの為だ。作るかの。」
部屋には埋め尽くされた、人工勇者が立ち並ぶ。
その数1035人。
休むこと無く勇者を量産したが聖剣を持ち上げたホムンクルスはいない。それどころか、、
「役立たずなのだ。」
実はホムンクルスの腕力は人間よりも弱く、聖剣処か普通の模造刀ですら持ち上げられない欠陥品だったのだ。そして戦闘能力に至ってはキチ博士にすら及ばなかった。
「まぁ、本来戦闘向きに作るような種族でもないし、ワシの愛玩用じゃからな。」
「パワーisジャスティスなのだ!!ボインなんて嫌いなのだ、もう計画は中止なのだ。」
ラファエルは渋々、聖剣を手にもつとキチ博士に柄を向けた。キチ博士の方がまだ聖剣に認められる可能性が高かった、決して八つ当たりを考えてのことではない。
「、、、ホホッ。まぁそうなるかの。」
zzzZZZZZT!!
こうしてキチ博士は夜空に彩られたのだった。
キラーン。
********************
エルフカクレザト被害額(世界樹の新芽含む)
24,851,700,000ピコ
守護獣治療費
450,000ピコ
スゴイマホウトシ被害額
警備員治療費(火傷22人、キチ博士〈アフロ+軽症〉、重傷者〈お尻〉1名)
47,300,250ピコ
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