金融悪魔を癒やす方法—投資銀行員カウンセリング日記——

霧人 イスラエル・ハイム

文字の大きさ
6 / 8

プライベート・バンクとアセクシャルへの片想い②

しおりを挟む
「でさ、富裕層のお客様の資産運用って…やっぱ罪悪感止まらないんです」

彼は肩を落としながら言う。ミニオン柄のネクタイがゆらゆら揺れている。

「うんうん、わかるよ。

だってさ、LPやファミリーオフィスのポートフォリオを回すたびに、社会の格差を広げてる気分になるもんね」

*LP=限られた投資家がファンドに資金を出すこと。ファミリーオフィス=超富裕層の資産管理専門組織

僕はラテを片手に、軽く微笑む。

「でも、恋心も消せないんでしょ?お客様に…しかも相手がアセクシャルっていう二重の禁断?」

彼は頷きながら、思わず椅子の背もたれに寄りかかる。

「はい…しかもこの前、会議中に思わずお客様の資料に『好きです』ってメモ書きそうになって…」

僕は吹き出した。
「ずっこけたね、それ!」

彼も苦笑い。
「ええ、もう完全に自分で恥ずかしくなって、コーヒーを鼻から吹きそうになりました」

「うんうん、でもそれも人間らしいリアクションだよ。ミスしたっていいんだ、ここでは」

僕は軽く問いかける。
「じゃあ、これからどうしたい?」

彼はペンをカタカタ回しながら考える。
「プライベートバンクの仕事は楽しみたい…でも、格差を少しでも減らしたい…恋心も消せない…」

僕は頷く。
「うん、じゃあ一緒に考えようか?例えば、資産運用で社会に良い影響を与える方法とかってできたり?」

彼は目を輝かせる。
「具体的には?」

「例えば、クライアントが投資する資金の一部を、エシカル投資やインパクトファンドに振り向けるとかね」

*インパクトファンド=社会課題の解決も狙う投資ファンド

彼はニヤリと笑った。
「そうですよね…それ考えてたんです…それなら…お客様も喜ぶし、僕も罪悪感減るかも。しかも少し恋心のことも考えられる」

僕は少し困った眉毛で微笑をうかべながら、
「うん、恋も仕事も一気に解決できなくても、少しずつ整理していいのかな?
椅子からずっこけても、立ち上がればいいだけなのかも?」

彼は思わず椅子を小さく蹴り飛ばし、コーヒーをちょっとこぼす。

「ぎゃー、またやっちゃった…」

僕は苦笑しながら、ティッシュを手渡す。
「ずっこけギャグ付きのカウンセリング、これも日常のスパイスだよ」

彼はティッシュでコーヒーを拭きながら、少し安心した顔になる。

「あははは」

僕もラテをすすりながら微笑む。
「あはは笑 なんかさ、恋も罪悪感も、話すだけで少し軽くなるんだ。ゆっくり整理して、次の一手を考えたらいいのかもだね~笑」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

冷たい王妃の生活

柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。 三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。 王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。 孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。 「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。 自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。 やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。 嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...