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とある不良牧師の受難
第2話 とある暴走族の場合 3
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そして6年前、19歳の夏。一匹狼を貫きながら日々喧嘩にいそしんでいた辰巳は、一人の華奢な同級生に喧嘩を売って、負けた。
その相手が戌月だった。戌月は死ぬほど喧嘩が強かった。当時結成したてだった暴走族に入るように命令され、負けた辰巳に拒否するすべも無かった。辰巳は族のNo.2、そして信頼のおける右腕として戌月に絶対的な忠誠を誓っていた。
やがてこの暴走族は地元でトップをはるまでに成長した。
そして3年前の冬、二人が22歳の時、事件は起きた。
「大変だ!総長が男にバイクで轢かれた!!」
「何だって!無事なのか?」
「左腕が折れたらしいが大丈夫みたいだ。」
「そうか。それで、相手は取っ捕まえたのか?」
「一回捕まえたんだが、尋問してる間に取り逃がしちまった。」
「何やってんだよてめぇ!」
「それで、その男が言ったんだ。」
「なんて?」
「『辰巳に命じられて轢いた』って。」
男の話に尾ひれがついて、下剋上するつもりだったとか、戌月を殺すつもりだとか、様々な噂が飛び交った。すぐに無抵抗の辰巳が拘束された。族が本拠地としてたむろしている廃墟の一室で、縄で腕も脚も拘束されて、身動きがとれなくなった『裏切り』の容疑者、辰巳を族員と戌月が囲んだ。
まず始めに戌月が言葉を紡ぐ。
「辰巳、お前が男を雇って俺を轢かせたらしいな?」
「何の話ですか。」
「とぼけんじゃねぇよ!」
「黙ってろ!」
戌月の一喝で、族員たちは一瞬で黙る。
「何でこんなことしたんだ。」
「…………だからしてないから理由もねーって。」
「はぁ。別に俺は正直に言ってくれればそれでいいんだ。」
「………………。」
辰巳は幻滅した。信頼していたリーダーは自分がやっていないと信じる気も、自分の声さえも聴く気がないのだとわかった。声を出すのをやめた。
その相手が戌月だった。戌月は死ぬほど喧嘩が強かった。当時結成したてだった暴走族に入るように命令され、負けた辰巳に拒否するすべも無かった。辰巳は族のNo.2、そして信頼のおける右腕として戌月に絶対的な忠誠を誓っていた。
やがてこの暴走族は地元でトップをはるまでに成長した。
そして3年前の冬、二人が22歳の時、事件は起きた。
「大変だ!総長が男にバイクで轢かれた!!」
「何だって!無事なのか?」
「左腕が折れたらしいが大丈夫みたいだ。」
「そうか。それで、相手は取っ捕まえたのか?」
「一回捕まえたんだが、尋問してる間に取り逃がしちまった。」
「何やってんだよてめぇ!」
「それで、その男が言ったんだ。」
「なんて?」
「『辰巳に命じられて轢いた』って。」
男の話に尾ひれがついて、下剋上するつもりだったとか、戌月を殺すつもりだとか、様々な噂が飛び交った。すぐに無抵抗の辰巳が拘束された。族が本拠地としてたむろしている廃墟の一室で、縄で腕も脚も拘束されて、身動きがとれなくなった『裏切り』の容疑者、辰巳を族員と戌月が囲んだ。
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「とぼけんじゃねぇよ!」
「黙ってろ!」
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「何でこんなことしたんだ。」
「…………だからしてないから理由もねーって。」
「はぁ。別に俺は正直に言ってくれればそれでいいんだ。」
「………………。」
辰巳は幻滅した。信頼していたリーダーは自分がやっていないと信じる気も、自分の声さえも聴く気がないのだとわかった。声を出すのをやめた。
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