新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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秋葉原バックストリート

秋葉原バックストリート(7)

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「え、なになに?」

 ハルは、また何事かと左右を見回して、モモンガもどきが手許を見ているのにようやく気づいた。

「それって、これ?」
「なんと、そういうことでござったか! これは失礼つかまつった!」

 話がまったく見えない。

せっしゃがこの星に参るには、出口が必要だったのでござる。そのデバイスで特定してくれたのであろう? なかなかの衝撃で取り乱してしまったが、いやはや!」

 どうやら、アプリが示したのは、モモンガもどきが出てくる場所だったらしい。
 そして携帯おおぬさはその出口を開いた——と。

 この星にやってきたということは、いま目の前にいる小動物は、地球外生命体ということになる。

 謎の地球外生命体は、膝のあたりを払ってから、右手を胸に当て、深々と頭を下げた。

せっしゃは、星々を渡るけんぞくムナのまつえいジシェ・ガスパレーシュと申し上げる。貴殿はキサラギ・コーレイ殿のご家族とお見受けするで——お、おお?」

 モジャコは、そのジシェを両手でひょいっと持ち上げた。

「『申し上げる』ときたか! ははは。ジシェは宇宙人なのか!?」
「そ、そういうことになるでござるかな」

 宇宙なのかどうかは微妙。

 モジャコは「わーい、わーい」と高い高いしてから、そのままジシェを頭の上に乗せた。
 なんとなくニットキャップと一体化する。
 モフモフの髪にニットキャップはふかふかで、ジシェはまんざらでもない。

「あたし、モジャコだよ」
「えと、わたしは如月きさらぎこうれいの孫のはる

 ミコじゃないからねー。

 自己紹介してから、ハルはあらためてスマホの画面を確認した。
 画面は、6キロメートル四方ほどを表示する地図に切り替わっていて、3つの光点がその存在を主張していた。

 中心付近に1つ、その南南西に1つ、さらにほぼ点対称となる北北東の位置に1つ。

 おおまかに、それぞれ神田、銀座、浅草あたりだ。
 現在地の秋葉原は中心より少し北の位置。


(これはこの3か所に行けってことだよね……)

 それにしても、何も説明されていない。
 思い出して、ハルは地面をガスガスと踏みつけた。

 スマホを思い切り壁に叩きつける——というのは、どうにか想像だけに留めておいて。

(むきー!)

 じじいがお空に再び。

「怒りを抑え切れずにモノに当たるとは未熟なものよ、かっかっかっ!」

 かーっかっかっ、とじじいの高笑いがこだまする。

(正論だけどなんかむかつく!!)

 脳内イメージ版じじいの映像を振り払って、ハルはスマホの画面をモジャコに見せた。
 ジシェはその頭の上からのぞむ。

「それは〝追憶のカケラ〟の場所でござる」
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