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銀座ステレーション
銀座ステレーション(14)
しおりを挟むコルヴェナは、ぱっと立ち上がってハルの手許を再び蹴り上げた。
「油断したわねっ!」
携帯大幣のわさわさの部分が空中を舞う。
「させるかっ!」
モジャコも飛びつき、わさわさの争奪戦がはじまった。
ハルはそろそろと後ずさって目標地点にたどり着いた。
喫茶店が入る雑居ビルと建設中の大きなビルの間で、車がぎりぎり通れそうな細い小路がずっと向こうまで続いていた。
携帯大幣(わさわさ無し)を頭上に掲げる。
(うーん、いまいち気分が乗らないかも……)
いやいや、と首を振る。哄笑するクソじじいを容易に想像できる。
「かっかっかっ! カムフラージュにも役立ったであろう!」
「くー」
脳内イメージ版クソじじいの高笑いに反論できない。
できたところで本体(?)には届かない。
「本質を見たければ思い込みを取り払うべし! かっかっかっ!」
(なんか問題をすり替えられてる気がする)
透明なきらめきを振りまく立体がゆっくりと昇ってくる。
(大十二面体……)
その内に星のきらめきを秘めた立体。
「ああっ!」
コルヴェナが気がついて叫んだ。
モジャコと格闘しながら左手の指を、びびーん、と突き立てる。
「いつの間に!」
が、誰かと闘っている最中に余所見はしないほうがよく、無防備に腕を伸ばすようなことは、避けたほうが好ましい。
モジャコはその腕を取って投げ飛ばし、すかさず、自分の脚を絡めて関節を固めた。
コルヴェナは悲鳴を上げた。
「ふんぎゃ~!!」
「降参しろっ!」
腕ひしぎ十字固め。
大十二面体は、弾けるように分散して大気に溶け込み、残ったカードが、回転しながらハルの手の中に降りてきた。
刻まれた記号は3/3。
カードの表面が輝き、描かれた銀杏の葉がきらめく。
リグナはデッサから強烈なキックを受けた。
なす術もなく、高速に一直線に飛ばされる——が、ビルの外壁に激突する寸前で重心を入れ替えると、空中で身を翻した。
ぶつかるはずだった壁を蹴り飛ばす。
(スピードがまた上がった……!?)
2/3のカードが素早さを、1/3のカードが防御力を解放した——と解釈していたが、それはかならずしもリグナから賛同を得られたものではない。
彼女は肯定も否定もしなかった。
(……)
ほわほわほわわ~ん、と思い出し映像。
無関心・我関せずなSDリグナの後ろには、わからんもーん、の文字が浮かんでいた。
(……)
賛同を得るとか、肯定・否定の問題ではなかったような気がするものの。
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