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浜町トゥインクルスパークル
浜町トゥインクルスパークル(1)
しおりを挟む3. 浜町トゥインクルスパークル
トンネルの向こうから紫色の帯の電車が入ってきた。
「——え?」
急に目の前へカードが現れ、ハルは驚いた。
気が済んだのか、リグナが差し出していた。
透明に碧いインディゴライトの瞳からは、彼女がいま、何を考えているのかわからない。
「あ、うん……」
ハルはカードを受け取った。
(追憶のカケラがあったのは浅草、銀座、神田の3か所。秋葉原には無い……)
だが、リグナは4か所のすべてにいた。
都合のいいタイミングで何かの信号を出すことなど簡単なことだろう。
(そういえば、リグナはどこから現れたんだろ……?)
東京の地下深くにある〈ロートの追憶〉を、ルジェが円環によって強奪しようとしたのは半世紀前。
リグナはそのときに持ち込まれ、いままでどこかで機能を停止していた。
そして、あのときとつぜん現れ、デッサに「味方機」と識別されながら、そのデッサを蹴り飛ばしてモジャコを救ってくれた。
それからはハルたちと行動をともにし、デッサとの通信チャンネルもクローズして、交信を拒絶しているようだ。
しかし——。
(もとはルジェのヒト型機械兵。味方であるという保証なんてどこにもない……)
水天宮前駅までは1駅で2分ほど。
エスカレーターを乗り継ぎ、5番出口から地上へ出る。
ハルは物思いに沈んだままだ。心配してモジャコは声をかけた。
「どうした?」
「うん……」
ハルの答えははっきりしない。
水天宮前駅は、東西の新大橋通りと南北の水天宮通りが交差するところにあった。
5番出口から地上に出ると、そこは南東の角で、安産と子授けで有名な水天宮の真裏。
見上げれば、1段高い位置に立派な社殿がそそり立っていた。
境内はその向こう。
一方、交差点の北側は人形町で、水天宮通りも人形町通りに名前を変える。
新大橋通りの広い歩道を東方向へ歩いていく。
2つ目の交差点が反応のあった地点。
周辺は、大通りに沿って、比較的規模の大きいオフィスビルとマンションが入り交じる地域で、交差点の南側も、タワーマンションと一体になった複合ビルがそびえ、似たような雰囲気だった。
一方で、北側は対照的に生活感が強く、緑も増え、道路中央の緑道が白いアーチで出迎えていた。
地図を拡大すると、光点は交差点の北西で点滅していた。
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