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広尾デリヴァランス
広尾デリヴァランス(12)
しおりを挟む広尾駅の真上、南北に走る外苑西通りは、少し南で明治通りと交わっている。
その交差点の名前は天現寺橋交差点。
そしてそこから東へ、明治通りから麻布通りへと首都高速2号目黒線に沿ってたどっていけば、四の橋交差点、古川橋交差点、三の橋交差点、二の橋交差点と続く。
神田の今川橋交差点も、左へスクロールしていけば、竜閑橋交差点、鎌倉橋交差点、神田橋交差点、一ツ橋交差点、竹橋交差点、俎橋交差点と連続する。
つまりそんな交差点はいくらでもあるということ。
そもそも〈追憶のカケラ〉があった場所と交差点が一致しているのは、1つ目の菊屋橋交差点と5つ目の広尾橋交差点だけ。
「名前が『橋』で終わる交差点またはその近く」と条件を広げれば、それぞれ三原橋交差点と今川橋交差点の近くだった2つ目と3つ目はクリアできるとしても、4つ目は浜町中ノ橋交差点の隣の、名前の無い交差点であって、論理が破綻する。
(……)
電車はちょうど飯田橋駅を出発したところだった。
ドアの上でスクロールする表示を見れば、次は江戸川橋駅と案内されていた。
(飯田橋駅、江戸川橋駅……)
ハルはスマホの画面に地下鉄の路線図を表示した。
水道橋駅、曙橋駅、日本橋駅、京橋駅、竹橋駅、新橋駅、赤羽橋駅、浅草橋駅、本所吾妻橋駅——。
(それもそうか。川が流れていれば橋もつくられるし、橋ができれば目印としてわかりやすいからその場所の名前になっていくだろうし……。あれ……?)
何かひっかかるものを感じる。
だけど、それが何なのか、ハルにはわからなかった。
東池袋駅は有楽町線だけのシンプルな駅。
階段を上って雑司が谷方面と表示された改札を抜け、3番出口から地上に出る。
確かにそこは、ポジヲがいっていたように首都高速5号池袋線の高架下で、側道のような狭い道路を挟み、都電の停留場は目と鼻の先だった。
ほどなく電車がやってくる。
「都電に乗るの、初めてかも」
「町屋で乗り換えるとき毎日見てるけど、あたしもほとんど乗った記憶がないかな」
ハルとモジャコが通う高校は葛飾区内にある。
最寄り駅は京成線のお花茶屋という駅で、湯島からの場合、東京メトロの千代田線で町屋まで行って京成線に乗り換えることになる。
船橋市高根町からの場合、バスで船橋駅まで出て、京成船橋駅から京成線。
「拙者も初めてでござる」
それはそうだろう。
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