新宿アイル

一ノ宮ガユウ

文字の大きさ
56 / 116
広尾デリヴァランス

広尾デリヴァランス(12)

しおりを挟む

 広尾駅の真上、南北に走るがいえん西にし通りは、少し南で明治通りと交わっている。
 その交差点の名前はてんげん交差点。

 そしてそこから東へ、明治通りから麻布通りへと首都高速2号目黒線に沿ってたどっていけば、四の交差点、古川交差点、三の交差点、二の交差点と続く。


 神田の今川橋交差点も、左へスクロールしていけば、りゅうかん交差点、鎌倉交差点、神田交差点、一ツ交差点、竹交差点、まないた交差点と連続する。

 つまりそんな交差点はいくらでもあるということ。

 そもそも〈追憶のカケラ〉があった場所と交差点が一致しているのは、1つ目の菊屋橋交差点と5つ目の広尾橋交差点だけ。




 「名前が『橋』で終わる交差点またはその近く」と条件を広げれば、それぞれ三原橋交差点と今川橋交差点の近くだった2つ目と3つ目はクリアできるとしても、4つ目ははまちょう中ノ橋交差点の隣の、名前の無い交差点であって、論理が破綻する。






(……)

 電車はちょうど飯田橋駅を出発したところだった。
 ドアの上でスクロールする表示を見れば、次は江戸川橋駅と案内されていた。

(飯田駅、江戸川駅……)

 ハルはスマホの画面に地下鉄の路線図を表示した。

 水道駅、あけぼの駅、日本駅、京駅、竹駅、新駅、赤羽駅、浅草駅、ほんじょづま駅——。


(それもそうか。川が流れていれば橋もつくられるし、橋ができれば目印としてわかりやすいからその場所の名前になっていくだろうし……。あれ……?)

 何かひっかかるものを感じる。
 だけど、それが何なのか、ハルにはわからなかった。

 東池袋駅はゆうらくちょう線だけのシンプルな駅。
 階段を上ってぞう方面と表示された改札を抜け、3番出口から地上に出る。

 確かにそこは、ポジヲがいっていたように首都高速5号池袋線の高架下で、側道のような狭い道路をはさみ、都電の停留場は目と鼻の先だった。


 ほどなく電車がやってくる。

「都電に乗るの、初めてかも」
「町屋で乗り換えるとき毎日見てるけど、あたしもほとんど乗った記憶がないかな」

 ハルとモジャコが通う高校はかつしか区内にある。


 最寄り駅は京成線のおはなぢゃという駅で、しまからの場合、東京メトロの千代田線で町屋まで行って京成線に乗り換えることになる。
 ふなばしたか根町ねちょうからの場合、バスで船橋駅まで出て、京成船橋駅から京成線。

せっしゃも初めてでござる」

 それはそうだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

処理中です...