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面影橋メモリーズ
面影橋メモリーズ(3)
しおりを挟むモジャコはひきつつも、はしゃぐ姉をハルに紹介した。
「車、出してもらった」
「よろしくね♡ ミコちゃんって呼んでいい?」
「はあ……」
どうしたらいいものだか。
ところで、ハルの視線が瑪瑙とモジャコの髪形を見比べていることに気づき、モジャコはツッコミを入れた。
「顔に出てる、顔に出てる」
「ハイ、すいません」
「血はつながっているらしいよ」
〝らしい〟というのはどうなんだろうか。
モジャコと瑪瑙が拝礼するのを待ち、ハルは拝殿の横にある建物に案内した。
吹き抜けになっているそこでは、白衣や緋袴が広げられ、風にそよいでいた。
「小物もあるから、たぶん困ることはないと思うよ」
「ねえねえ、ミコちゃん♡ この建物は、なにに使うものなの?」
両手をグーにぶんぶんぶん。
モジャコどん引き、ハル苦笑い。
「ここは神楽殿、神楽を舞うところです——」
「——お、来たか、来たか!」
声に振り返れば、白いハットにロックンロールな鋭角グラサン、そして派手派手の花柄アロハ——ハイパー神主如月高嶺が歩いてきた。
「おじいちゃんだよ」
瑪瑙は深々と頭を下げ、ごく自然に礼を述べた。
「このたびは妹のために貴重な衣装などをお貸しいただけるということで、本当にありがとうございます」
豹変。
(うわ~)
モジャコは口をヘの字に曲げた。
「けっこう、けっこう! 年に1度の出番だけで、あとは蔵で眠っているとはもったいない。大いに活用するがよい!」
「でも、初めての子供たちばかりですが、だいじょうぶでしょうか?」
猫かぶり持続中。
「やってみないことには、はじまるまい! よい経験になると思うぞ!」
風通しをしていた衣装を手分けして瑪瑙の車に運び、それからモジャコは神楽殿を見上げた。
拝殿と同じように、大きくはないけれども、いたるところに細工が施された屋根や柱は立派で、神楽を舞う床も手入れが行き届いている。
見渡せば森の中の小さな境内を風が渡り、木漏れ日が踊る。
「——ちょっと見せてもらったりとかできる、巫女舞?」
「よいではないか! かっかっかっ!」
「ん? 別にいいけど」
「え!? やん♡ お姉さん、ワクワク♥」
猫かぶり終了。
瑪瑙はグーをぶんぶん回した。
「どんなの見せてくれるの!?」
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