新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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面影橋メモリーズ

面影橋メモリーズ(5)

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 なかにはこころよく思わない親もいれば、あからさまに嫌な顔をする親もいた。

 稽古や準備に時間を取られるし、場合によっては習い事や学習塾を休ませなければならなかったから。

 でも、巫女装束みこしょうぞくに身を包んで舞う娘の姿を披露してしまえばもうこっちのもの。

 まんざらでもなくなるし、基本的にはすべて愛情の裏返しなので、厳しい親に限って、撮った映像をSNSにじゃんじゃんアップロードしまくり、逆に熱心に応援するようになってくれたりもする。

 何年も巫女みこまいをまとめてるからね——と、ハルは謙遜した。

 けれども、学年や覚えの速さを見ながら、臨機応変に稽古の順番を変えてみたり、振り付けにアレンジを加えてみたりするのには、モジャコは感心するしかない。

 ——もっとも、それはハルがいて、モジャコがいたからできたわけで。

 女の子たちは隙を見てはモジャコにちょっかいを出す。
 くすぐったり、モフモフヘアーをいじったりする程度のこともあれば、急に抱きついてみたりパンチしてみたりなんてことも。

 モジャコは別に何もいわない。
 適当にあしらうし、攻撃に関してはぜんぶよける。

 でも、女の子どうしにいさかいがあるときは、すぐに優しくたしなめる。

 それでいて、何か言い分がありそうなら、どんなことでも最後まで聞いて、たとえば2人の間にもめ事があるのなら3人で思い悩む。

 モジャコはちょっとしたアドバイスはしても、どちらが正しいともどちらが間違っているともいわないから、気がつくと、その2人はそもそも何を言い争っていたのかわからなくなる。

 そんなモジャコだから、子供たちはどんな悩み事でも、ときに親きょうだいにはいえないことでも話す。

 つまり「子供会のご意見番」になるのは当然といえば当然のこと。
 どうやら当人に自覚はないようだけれども。

 そして大人たちの彼女に対する信頼は厚いから、どんなことでもバックアップしてくれるし、それでいて余計な口出しはしない。

 祭囃子まつりばやしのメンバー——通称・タチの悪いじじいの集団、正式名称・祭囃子保存会——も集まり、神社の境内に舞台をつくる準備をしていれば、周囲の人たちもいつの間にか自然と巻き込まれていた。

 もともとお祭りに熱心な町会メンバーはもちろんのこと、日和見を決め込んでいた人たちまで。


 最終的には男の子たちの神輿みこし担ぎまで気合いが入って、夏祭りは大いに盛り上がったのだ。

 盛り上がり過ぎて、地元の警察にやんわりと叱られるくらいに。
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